
ジンベエは、改まってルフィに話しを切り出した。
「東の海(イーストブルー)」にて、アーロン一味の暴走を食い止めてくれた者達に対して、わしは深く感謝しておった!!お前さんらなんじゃろ?ありがとう・・・!!!
同時に謝罪もさせて欲しい、11年前、アーロンの奴を「東の海」に解き放った張本人は、わしなんじゃ!!!」

その話に辛い過去を思い出したナミを庇うように、サンジが口を挟んだ。
「昔、おれとルフィがはじめてジンベエの名前を聞いた時も、ジンベエは七武海加盟と引き換えに、とんでもない奴を「東の海」に解き放った、と聞いていた。だから2年前の新聞で、ルフィとジンベエが一緒にいるのを聞いて驚いたよ。ジンベエって奴はアーロンの黒幕のような存在だと思ってたからな。話次第じゃお前を・・・おれは許さねェ!!!」

ハチも「本当だジンベエさん・・、おれ達はその娘に謝っても許されねぇ傷を与えている・・・・」と肯定した。
ナミの脳裏をよぎるのは、謝られても取り返しのつかない悲劇だった。
幼い自分とノジコを拾い、精一杯の愛情で育ててくれたベルメールさんが、アーロンによって目の前で射殺され・・・・、そのアーロンの部下として狭い部屋に閉じ込められて海図を描かされ続けた子供時代・・・・、村を買い戻すためにたった一人で海賊相手に泥棒を働かざるを得なかった日々・・・・・、それでも村の人達の命の為、アーロンの元へと帰らねばならなかった・・・。



過去を振り返り、そして現在を考えたナミは、顔を上げてまっすぐにジンベエを見て言った。
「何があっても、今更アーロンを不憫に思うつもりはない。だけど、私はシャボンディ諸島に着くまで、あんなに強い魚人達が人間から迫害を受けてたなんて、知らなかった。
私は目を疑った・・・、目の前に広がる「シャボンディパーク」が、アーロンの経てた「アーロンパーク」にそっくりだったから!!」

しばしの沈黙を破ったのはハチだった。
「許して欲しくて言うんじゃねぇぞ、ナミ。アーロンさんは人間が大嫌いで、人間を恨み、やりすぎた・・・・。でもガキの頃から人間達の住む世界に憧れを持っていたのは事実だ。200年前までは、魚人と人魚は”魚類”に分類されていたそうだ・・・。200年前に「リュウグウ王国」は世界政府の加盟国となり、人間達との友好を結び、王は「世界会議」への参加も許された。
でも人間達は魚人族を嫌い続けた。おれの生きている中で一番酷かった時代は、大海賊時代の始まり・・・!!人間の海賊がこの島で暴れまわる恐怖は今でもはっきり覚えてる・・・。」
その後をジンベエが続けた。
「そこを救ってくれたのが、今は亡き”白ひげ”のオヤジさんじゃ。白ひげのナワバリとなる事で島に平和が戻ったが、人間達の魚人嫌いが止むわけじゃない。
一度権力を手に入れた者程、変化を恐れるもの・・・、魚人と人間の交友を決めた”政府の中枢”に近付くほど、差別体質は深く根付いて変わることはなかった・・・!
そんな折、魚人島ではこの腐った歴史を変えようと二人の人物が立ち上がったんじゃ・・・。
一人は『オトヒメ王妃』、人間と共に暮らす事を、島民に説き続けた、しらほし姫の母上じゃ。
そしてもう一人は『フィッシャー・タイガー』、人間との決別を叫び、世界のタブーを犯し、たった一人で聖地マリージョアを襲撃して奴隷達を救った。その後、元奴隷の魚人達を連れて”タイヨウの海賊団”を結成する男じゃ!!
わしもアーロンも、ハチも、その”タイヨウの海賊団”に属する事になる・・・!!

しかし、政府に盾つく”魚人海賊団”が海にいる事は、人間との友好を望むオトヒメ王妃の首を絞める結果となった・・・。今を耐え忍び、未来を変えようとするオトヒメ王妃に対し、未来を捨てて、今を苦しむ同属の奴隷達を救い出したフィッシャー・タイガー・・・・どちらが正しいかなど、とても決められん。じゃが、ワシは・・・・・」
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