眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『陽光桜 - YOKO THE CHERRY BLOSSOM - 』

2017-01-05 14:39:21 | 映画・本

長~くなった「ひとこと感想」その4。(ネタバレそのものになってしまいました。スミマセン(^^;)

”世界平和をめざす「宇宙人」”というタイトルで、感想を書こうとした痕跡?が、下書きファイルに残っていた。

昭和の雰囲気そのもののような古くからの映画館で上映され、いかにも「反戦」とか「知られざる偉人」とかいった言葉が浮かぶようなチラシを見ていたので、そういう「実話」ベースの真面目な日本映画を勝手に想像していたのが・・・全然違った。

主人公は実在する人物だし、その人の評伝が原作なのだけれど、その原作者自身(高橋玄)が脚本を書いて監督も務めたこの映画は、とてもとても明るくて、人々は楽しそうで、ほとんどコメディそのものなのだ。

「教え子たちを戦争に行かせて、自分は生き残ってしまった」主人公は、「世界中にきれいな桜を咲かせるのが、自分に出来るたった一つの供養」と思い、ただただ「世界平和」を訴えたいがために、「どこの国でも咲かせることが出来て、その国の人たちに気に入ってもらえる」ような桜の新種を作り出そうと、私財を投じて奮闘する。 

家業の造園業や農業はもちろん、会計その他のお金の算段も、すべて息子夫婦まかせ。「奮闘」といっても、そもそも飄々として「浮世離れ」して見える人で、自分の思うところをきちんと周囲に説明することもなく、「一体何を考えているのか」息子にはさっぱりわからない。 

それなのに、息子の母親も嫁も、なぜか「うちのオトーサンは”宇宙人”やわねえ」 などと笑いながら、結局共感・支援する側に回る。息子は孤立してイライラが募るばかり。

たまりかねた息子はある日、「このままいくと、うちは破産や!親父は一体何を考えとるんや!!」
(私はこの息子さんが、気の毒でならなかった(あはは)。家族は”宇宙人 ”のサポーターばかりで、たった一人”地球防衛軍”を真面目にやってるのはキツイと思う)

ところが、そこで父親の過去(戦争体験)を初めて聞いて、息子も当然の如くサポーターに回る・・・と、そこまでは予想していたのだけれど、その後の「桜」をめぐる物語の展開が凄い。主人公の作り出した「陽光桜」は、日本全国から海外にまで広がって・・・

う~ん、でもこの映画の魅力は、こんなダラダラ文章では伝わらないなあ(^^;;;。

とにかく、いかにも教育映画風?の作りに見えるのに、いわゆる「常識」なんてぶっ飛んでしまうくらい、主人公の「本気度」とエネルギーは凄まじく、協力する家族たちがまた、とても温かくて大らかなのだ。

映画の後半、主人公が実はあの「伯方の塩」の開発者(当時はまだ、「塩」は国の専売だったんじゃないかなあ)と判ったり、世界平和を願った彼の亡くなった直後に「9・11」が起きたり・・・といった場面もあって、しかもそのときの登場人物たちのセリフが、なんというか・・・味わい深かったりする。

エンディングでブルーハーツの「終わらない歌」が流れるのを聞いたとき、しみじみ「この歌のとおりやな~」と思った。ピッタリの選曲だった。


実はささやかな後日談がある。

この映画を観たのは2月の終わり頃だったけれど、1ヶ月ほど経ったある日、散歩の途中で小さな公園を通りかかると、「陽光桜」「寄贈」といった文字の説明書きのある桜の木が見つかった。

周囲の桜よりずっと濃いピンクの花が咲いていて、映画の中で見た、あの陽光桜の色だった。あ・・・ここにも来てたんだ。ああいう人が本当にいたんだ・・・そう思うと、何をするわけでもない自分でも、何か勇気づけられるような気持ちになったのを、今も覚えている、




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2 コメント

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(^_^) (お茶屋)
2017-01-08 15:18:16
素敵な後日談ですね。
宇宙人の行動力、すごいですー。
ひょうひょうとした笹野さんの演技も(^_^)。
うえの年代の人たちの行動力を見習わないととか、こんな世の中になったのは、私の年代50歳代にも責任があると思う今日この頃です。
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一瞬、目を疑いました(^^; (ムーマ)
2017-01-08 16:25:11
実話と知ってたのに、「桜」を実際見たときは驚きました。
笹野さん、良かったですよね~(^^)。
ああいうオトーサン、応援したくなる気持ちわかる気がしました。
(実際は大変だったと思いますが)

上の年代の人たちの、あの元気さ、強さ、行動力って
どこから来るんだろう・・・ってときどき思います。
(私なんかにとっては、それだけでも十分「宇宙人」に見えちゃうくらい)

>こんな世の中になった責任

先日『帰ってきたヒトラー』を観て
本当に、他人事じゃないと思いました
大変な時代になりつつありますね。
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