眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『ローサは密告された』

2019-05-02 18:17:52 | 映画・本

漠然としか書けなかった「ひとこと感想」その3。(「物語」について具体的に書き出したら、モノスゴク長くなりそうな気がして)

2018年、最初にスクリーンで観た映画。

その後、家の録画で観た『立ち去った女』でも感じたことだけれど・・・最近のこういうリアルな?フィリピン映画(ちょっとドキュメンタリーを思わせるような)を観ると、社会のシステムの違いというか、格差の大きさの違いというか、今の日本で(目下のところは)暮らしに困っていない私のような者には、常識?が違いすぎて何も言えなくなってしまう。

以前『ムーンライト』を観たときにも、主人公の少年の育つ環境について、同じようなことを思った記憶があるけれど、同じアジアということと関係があるのだろうか、この映画の方がより肌身に迫る?感じがする。

この映画の中では、小さな雑貨屋でもドラッグを扱うのは当たり前。突然の逮捕も珍しくない。警官への賄賂は当たり前(そもそもそのために逮捕?している)。誰しも(警官も、もっとお偉いさんも含めて)コネと金で動いている、その法則性が「常識」なので、要求された金額を工面できないと「元の生活(の状態)」には当然戻れない。

所謂「法の下の平等」なんて、誰も信じていない・・・けれどそういう状況の中でも、捕らえられた者と捕らえた側とは一緒にチキンを食べていたりする。険悪な雰囲気や暴力沙汰の次の瞬間、「世間話」をしてる分には、単なる顔なじみにしか見えなくなる。

すべては「日常風景」なのだと思う。だからこそ・・・私は「何も言えなくなる」のだ。

キャストは皆、本当にマニラの裏通りに生きる人々に見える。カンヌで主演女優賞を得た女優さんも印象的だったけれど、IT機器を手にビジネスの話をしている若い人たちに憧れの目を向けていた、彼女の息子(役)が忘れられない。最も多額の金を持ち帰った彼を、私は正面からは見られない気がした。あまりに辛い境遇にいる若い人を見ると、私は(「可哀想」というのではなく)心のどこかで?自分が恥ずかしくなる。なぜかは・・・上手く言えない。

 

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