眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『恐怖の報酬』(1977 オリジナル完全版・録画)

2020-12-29 17:33:27 | 映画・本

確か去年の夏頃、自主上映されたときには観にいけなくて… それでも、昔どこかで「面白い映画だったよ~」と言われた覚えがあるので、TVで放映予定を見かけて録画した。

観た後になって、私に「面白かった」と言ったのは映画好きだった父親(多分)で、但しその映画はこのフリードキン監督の作品(1977)ではなく、元になったフランス映画(1953)の方だったのでは…と気づいた。

今回私が観たのは、「面白い」というよりは「恐ろしい」「凄まじい」という方が似つかわしい映画だったからだ。

70年代の後半というと、私はまだ学生だった。世の中も映画も今とは違った雰囲気で、「泥まみれの汚らしさ」が「リアル」な表現だと思われていたような気もする。「生き残るためには手段を択ばない」という言葉の意味が、今とは異なる重さ、汚さ、生々しさを持っていた…とでもいうように。


それにしても、この映画の山場となっている「大吊り橋」のシーンは恐ろしい。

いかにも重そうな大型トラックが、大雨の中、濁流にかかるボロボロの吊り橋を渡ろうとする。今のような3D技術が無かった時代、本当にトラックを渡らせようとしたのだろうと推測はするものの… 自分の目で見ているものが、自分でも信じられない。

「渡れるはずがないじゃない!」 

しかし渡らなければ命はないのだ。画面に漲る圧倒的な恐怖は、トラックを運転・手引きする男たちの運命の恐ろしさでもある。

このトラック(の積み荷であるニトログリセリン)は彼らにとっては最後の頼みの綱。なのに、いかにも落ちそうに危なっかしい大型トラックが、嵐の中を轟音を立てて観客に向かってくるのを見ているうちに、彼らの運命を握るそのトラックが、逆に襲い掛かってくる悪魔のように見えてくる…


私は正直、この映画をスクリーンで観られなくて、良かったのかもしれないと思った。この音響、この画面を上映会場で観ていたら、しばらく立ち上がれなかったかも。「どう考えても渡れるはずがない」と思ったのは当然で、撮影中にトラックは5回、川に転落したと後から知った。

なんのことはない、感想どころか「吊り橋シーンが凄まじい」としか書けなかった。でも、そんな私でも、この映画は傑作だと思う。ラストも含めてバランスはあんまり良くないかも…と感じても、そんなことはどうでもよくなる。

ずっと前に自主上映で観た「蒸気船を(文字通り)山越えさせる」映画を思い出した。あのときとはまた別の種類の、でも「作り手の情熱」という意味では共通のモノを、この映画から感じたのだと思う。(長らく不評だった?と知って、そのことに一番驚いたかも)

 


https://blog.goo.ne.jp/muma_may/e/ded5ffa7d7a1426919845b83ccb9d784『フィッツカラルド』

(11月30日タイトル)

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (つばら)
2020-12-30 00:42:27
初めまして

小学生の時最年長の従姉と叔母にくっついて
この映画観ましたよ
勿論フランスの方ですけど<笑

とにかく怖かったのを覚えています
当時は音響も今のような大ではなかったので
余計映像で恐怖を感じていたのではと思います

イヴ・モンタンをこの映画で知りました<笑

来年も思い出を辿らせて下さい
 
   どうぞ 良いお年を!!

返信する
Unknown (ムーマ)
2020-12-30 12:39:05
初めまして、つばらさん(^^)

『恐怖の報酬』というと、ご覧になったフランス映画の方を
指すと聞いたことがあります。
(センスのあるサスペンス、面白さ、完成度の高い脚本だと)
イブ・モンタンも適役だそうで、私もいつか観たいな~(^^)

新型コロナ禍で落ち着かないのもありますが
お正月の準備とか、全然する気にならなくて(ま、いつものことではありますが)

2021年が少しでもいい年になりますように。
皆さん、無事に年越しできますように。
…そんなことばかり考えています(^^;

いらして下さって、書き込んで下さって
本当にありがとうございました。
返信する
恐怖の報酬 (mcnj)
2021-01-02 17:02:55
こんばんは。

学生の頃、この映画を、劇場で観ました。

恐怖というもの、その結果の報酬というもの、当たり前の結果ですが、あの頃は、当たり前として、理解できました。
最後に、運転手が、口笛を吹きながら、恐怖を乗り越えて、運転している姿が、印象的でした。
返信する
Unknown (ムーマ)
2021-01-03 18:13:46
こんばんは、mcnjさん(^^)

mcnjさんが学生時代に劇場でご覧になった…というと
やはりフランス映画の方でしょうか。

>恐怖というもの、その結果の報酬というもの、
>当たり前の結果ですが、あの頃は、当たり前として、理解できました。

そう聞くと、時代を感じさせるタイトルでもあったんだな…と。

今回観た1977年作品の方は、最後まで
「死」がつきまとう映画で
運転手たちは「恐怖に対する報酬」を受け取ることになったのかどうか…

私もいつか「口笛を吹きながら運転する姿」の方を
観たいな…と改めて思いました。
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