眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

凍河を渡る ・・・・・ 『フローズン・リバー』

2011-02-13 15:00:22 | 映画・本
長すぎる「ひとこと感想」その6。

上映当日、珍しくも歩いて出かけたのが悪かったのか、途中から文字通りの土砂降り!になり、ズブ濡れで、冷房に震えながら観るハメに。それでも、噂を聞いてからずっと観たいと思っていた作品だったので、観られるのがただ嬉しくて、もう一生懸命に?シングルマザー2人の物語を見つめていたのを思い出す。

そして・・・観た後には、凍てついた河の氷点下の風景やそこでの2人の生活の厳しさとは対照的な「温かい何か」が残った。ハッピーエンドとは言い難い物語なのに、ラストに「温かさ」を感じるのは、その他の登場人物たちが2人の境遇を察していたり、立場の違いはあっても「苦しい生活の中で生きている者同士」とでもいうような「辛辣じゃない」態度を見せるせいもあったのかもしれない。

ヒロインたちの軽率さ、思慮の浅さも含めて、私は自分が批判する側になれないのを感じた。安穏に暮らしてきたはずの自分でさえ、子どもを連れて行き所が無くて途方に暮れたこともあれば、ストレスに耐えかねてその場しのぎの行動を繰り返したりもしてきた。(そもそも子どもとの日々は、経済的な心配がなくてさえ、孤独な母親を追い詰めるものなのだ。たとえどれほど子どもを「可愛い」と日々感じていたとしても。)

2人のシングルマザーはそれぞれの事情を抱えていて、ほとんど「崖っぷち」に追い詰められるところまで来ている。だからこそ、不法行為と判っている危険な仕事に手を出したのだ。

当然のようにアクシデントに見舞われ、警察に追われるようになった時、2人はそれぞれ、その場での決断を迫られる。熟慮している時間はない。即、決めなければならないのだ。私なら一体・・・どうするだろう。

手作りのメリーゴーランドの傍に新しくできた「家族」が集まっているラストは、私には「崖っぷちを前に引き返すことのできた」2人の最良の決断だったと思った。そこに片方の姿は無かったとしても。

どこにも頭をぶつけたりせずに生きてこれたら、それが一番いいに決まってる。彼女たちの場合、「頭をぶつける」ことが「いい経験になる」などというような、そんな気楽な生活じゃあない。そんな中での「最良の決断」を下すことが出来たヒロインに、私は無条件に感動したのだと思う。たとえその先に、まだまだ、どれほどの苦労が待ち受けるとしても。


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2 コメント

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オフシアター・ベストテン選考会 (お茶屋)
2011-02-14 22:00:06
懇親会へ行く途中、KKさんが、この映画は「女性の支持が強かったですね」とおっしゃっていたのが印象に残っています。
言われてみれば、そうでしたね。>選考会
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1位になると思ってました~(笑) (ムーマ)
2011-02-15 09:34:45
そういえばそうでしたね~。気がついてませんでした。
KKさんも褒めてらっしゃいましたね。自主上映の後、映画館でも上映されたからオフシアターのベストテンに残すべきかどうか・・・って話が出た時の、お茶屋さんの擁護の言葉もカッコ良かった!(拍手) で、ちゃんとベストテンに残りましたね(わーい)。
上映して下さったあたご劇場さんにも感謝です。(選考会でも言ったかもしれませんが)私、そちらへも、もう一度観に行きました(笑)。
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