牛込日乘

日々の雜記と備忘録

芥川賞・直木賞…

2011-01-17 23:55:39 | Book Review
 …の受賞作が決まったとの報道。最近の受賞作は(候補作も)ほとんど読んでいないことについては以前にも書いたとおりだが、たまたま正月に候補作の一つであった小谷野敦母子寮前』を読んでいたので、本作が受賞しなかったのは個人的に少しく残念。いわゆる私小説というジャンルにくくられる作品ではあるが、車谷長吉のような良くも悪くも手練れた感じがなく、自分と同じ六十年代生まれの作者ということもあってか、より強いシンパシーを感じたのである。

 本作の梗概をあえて乱暴に言ってしまうと、肺ガンで余命旦夕に迫った最愛の母親との最後の日々と、母親の苦しみをまったく理解しない父親への憎しみを描いたものである。このレベルの家族の問題というのはまあ、実はどこにでもある話で、それほど特殊なケースだとは思わない。しかし、それを読むに耐えるだけの作品としてまとめ上げるというのは、素人が考えを遙かに超えた力量(と覚悟)が必要とされるのだろう。『母子寮前』というタイトルも、この作品のモチーフを象徴するものとして、非常にいいものだと思う。

※本書の詳細については、また別途まとめてみたい。