moiのブログ~日々のカフェ

北欧&フィンランドを愛するカフェ店主が綴る日々のあれやこれや

ハシモトくん

2004-08-28 23:38:17 | コラム、というか
シモトくんとぼくとは、小学校のクラスメートだった。その時分の「男子」らしく、ハシモトくんとぼくとはクルマ好き同士すぐ仲良くなった。ぼくらのすまいはマンモス団地だったので、都合のいいことに通学路には巨大な駐車場がいくつもあり、こうした駐車場をまわってはクルマ一台一台を丹念にみるのがぼくらの「日課」だった。とりわけ、ぼくは「いすゞ 117クーペ」、ハシモトくんは「スバル360」がお気に入りで、「おとなになったらぜったいに乗ろう」とよくふたりで話し合った。

数年後、ぼくらはそれぞれ転校することになり、いつしか自然と手紙のやりとりも途絶えた。ハシモトくんから唐突に連絡があったのは、ぼくらがともに大学生になったある日のことだ。電話口でハシモトくんは「これから遊びにいきたいのだけど」といった。数時間後、玄関の外にやってきたのはピカピカに磨かれたワインレッドのスバル360、もちろん運転席にはハシモトくんの姿があった。あいさつもそこそこに助手席にのせてもらい、ぼくらは1時間ほどのドライブをたのしんだ。入念にメンテナンスをほどこされたスバル360の乗り心地は、予想外の快適さといえた。ハシモトくんは運転中、このクルマを入手するまでの一部始終や上手に走らせるコツについて熱心に話した。でも、すっかりクルマに対する関心がうすれ、いまだに免許すらとっていなかったぼくはあいまいにあいづちを打つのがやっとで、ハシモトくんが失望したのはまちがいなかった。ふたたび音信は途絶え、いまに至っている。

時は過ぎて、ぼくとおなじように、ハシモトくんもきっと忙しい日々をおくっていることだろう。家族や仕事仲間にも恵まれ、充実した毎日をすごしているにちがいない。そして願わくば、彼が以前と変わらぬ情熱をもって「スバル360」を愛していてくれればよいとおもう。