moiのブログ~日々のカフェ

北欧&フィンランドを愛するカフェ店主が綴る日々のあれやこれや

「雪に願うこと」

2005-10-16 14:09:21 | シネマ
としもまた「東京国際映画祭」の季節になりました。サラリーマン時代このイベントには苦労させられたなぁ・・・って、べつにそんなことが言いたいワケではなく、伊藤ゴローさんが音楽監督をつとめた映画「雪に願うこと」(監督/根岸吉太郎 出演/伊勢谷友介、佐藤浩市、小泉今日子ほか)が、ことしの「東京国際映画祭」のコンペティション作品で上映されるのです。

ゴローさんは、ボサノヴァ・デュオ「naomi and goro」やソロユニット「MOOSEHILL」で活躍中のギタリスト。たぶんこのブログを読んでくださっている方ならご存知ですよね?コンポーザーとしても、最近ではイラストレーターエドツワキによる「資生堂パリ・エキスポ」のための音楽を担当していますし、もともとMOOSE HILLの音楽にはどこか「映像」を喚起するようなところがあると思っていたので、まさに今回のサウンドトラック制作の仕事は「まってました!」という感じです。ゴローさんにとっても映画の仕事はとても刺激的だったようで、以前moiに顔を出してくれたときにも「もっと映画の仕事がしたい」と語っていました。

映画は、真冬の北海道、「ばんえい競馬場」を舞台に兄と弟との《再会》と《再生》のストーリーを描いた作品。監督は「遠雷」や「透光の樹」、ぼくの世代にとっては「探偵物語」や「ウホッホ探検隊」でおなじみの根岸吉太郎です。ちなみに、今回「審査委員長」をつとめるのはチャン・イーモウ監督。ゴローさんにはぜひ、これを機にレッドカーペット・デビューを飾っていただきたいものです(笑)。

この「雪に願うこと」は、六本木ヒルズのヴァージンTOHOシネマズにて映画祭の期間中3回ほど上映される予定です。お時間のあるかた、ぜひ足をはこんでみてください。

おすすめ

MOOSE HILL/Wolf Song (333DISCS)
たとえるなら、おだやかな「日常」のための淡彩色のサウンドトラック(moiでもしょっちゅうかけてます)。

※上映スケジュール、チケットの購入方法等は、「東京国際映画祭」公式サイトをごらんください。

クラーネの洋菓子店

2005-10-04 18:50:18 | シネマ
屋で立ち読みをしていたのだった。立ち読みしていたのは、植草甚一の『いい映画を見に行こう』。パラパラとページを繰っているうち、ある映画について語られている文章に目がとまった。デンマークの女流監督アストリッド・ヘニング・イェンセンが手がけた『クラーネの洋菓子店[Kranes Konditori]』(1951)である。

ノルウェーの港町にひっそりとたたずむ小さなカフェ(コンディトリ)を舞台に、恋に揺れるひとりの中年女性の思いを細やかに描いた珠玉の作品ということらしいのだが、なにせじっさいに観たわけではないのでなんとも言えない。ただ、配給会社の知り合いから「感想を聞かせてほしい」と頼まれ、まだ台本すら届いていなかったこの作品の試写を観たJ・J氏は、冒頭のワンシーンをみた瞬間「これはいける」とニンマリしたそうである。

その後、この映画は『女ごころ』という邦題で晴れて日本でも公開されることになる。1954年のことだ(配給は松竹洋画部=新世紀映画社)。残念ながら、この映画の話をあまり耳にしないところからすると大ヒットというわけにはいかなかったらしい。ただJ・J氏の解説をよめばよむほど、北欧のひとびとのつつましい生活ぶりが静かに心を打つこのような作品をいまこそぜひ観てみたいとかんがえてしまう。

どうでしょう?キノ・イグルーのおふたり、いつかどこかでこの映画を上映してみるっていうのは。

ヘイフラワーとキルトシュ-

2005-09-22 23:10:53 | シネマ
ィンランド映画「ヘイフラワーとキルトシュー」の東京での劇場公開が決まりましたね。10/15(土)よりシネ・リーブル池袋です。



アキ・カウリスマキ以外のフィンランド映画が劇場公開されるのはなかなかないこと。フィンランド語とフィンランドの景色をスクリーンで堪能してみてはいかがでしょう?ちなみにフライヤーはmoiでも配布中です。

オジサンはさすがに映画館では浮きまくりそうなので(笑)DVD化を待つことにします・・・

サミュエル・フラー

2005-09-10 23:22:39 | シネマ
の映画は文句なしにカッコイイ。

サミュエル・フラーの名前はしっていた。学生のころ読んでいたマイナーな音楽雑誌に、ときどきその名前がでていたのだ。一部のひとびとの間でカルト的な人気を誇る映画監督、そんな扱いだったようにおもう。近所のレンタルビデオで物色しているとき、棚の片隅にラベルの色あせた一本のビデオテープが目にとまった。フラーが1964年に製作した『裸のキッス』だった。

冒頭から、いきなり度肝を抜かれる。せっかくの「つかみ」をバラしてしまうのも気がひけるのでここでは書かないが、とにかくそのスピード感だけでも圧倒されるに十分な迫力である。静と動、光と闇、善と悪、表と裏、現実と虚構、幸福と不幸・・・相反する要素がこの作品ではオセロのように絶え間なくひっくり返され、観るものを当惑させる。小物や映像、音楽を巧みに使った演出効果も刺激的で飽きさせない。ゴダールやジャームッシュ、タランティーノなどにも影響を与えたというのもなるほど、頷ける。

ただし、願わくば、こういう映画こそどこかさびれた街の古い映画館のスクリーンで観たかった。

『キッチン・ストーリー』

2005-08-23 23:29:16 | シネマ
なさん、『キッチン・ストーリー』という映画ごらんになりましたか?たしか一年くらいまえに劇場公開された作品ですが、ようやく遅ればせながらDVDで観ることができました。

「台所における独居老人の行動を研究するため、スウェーデンからノルウェーの寒村へと派遣された調査員と老人との心の交流」というヘンテコなシチュエーションもさることながら、とにもかくにもジャッキー・チェンの映画と対極をなすような(?)《静の世界》こそがこの作品の特徴といえるかもしれません。主人公は老人と中年の調査員の男ふたり。しかも、ほとんどのシーンが「こじんまりとした台所」のなかで展開されるというミニマムな作りで、まるで溶けてゆく氷をじっと見ているかのような気分になってきます。

それでも、しずかに、ひたすら感情を押し殺したかのようにやりとりされるふたりの会話の中にも、スウェーデン人ゆえの、またノルウェー人ゆえの性癖や考え方のちがいが表現されていて、目をこらして、耳をすましてみるといろいろな興味深い《発見》があります。もし、以前この映画をみてピンとこなかったというひとがいたら、ぜひW・ブラインホルスト『われら北欧人』という本を読まれてからあらためてご覧になられることをおすすめします。