moiのブログ~日々のカフェ

北欧&フィンランドを愛するカフェ店主が綴る日々のあれやこれや

世界陸上マラソン・ウラ観戦マニュアル その2

2005-08-12 23:32:46 | SUOMI
「世界陸上ヘルシンキ大会」の、いろいろな意味で最重要競技である「マラソン」を、ただひたすらと「はとバス」にのったような気分だけで観てしまおうという「ウラ観戦マニュアル」の第二回目をおおくりします。

《ヒエタラハティ》から、走者たちはいよいよ周回コースに突入です。「西港」の殺風景な眺めを左手にみながら北上をつづけると、やがて《ルオホラハティ》地区にさしかかります。「ルオホラハティ」はメトロの西の終着駅、ヘルシンキ中央駅からはふたつめにあたります。この先にあったノキアの工場跡地は、現在「ケーブルファクトリー」というアートの一大拠点として活用されています。さらに北上をつづける走者たちは、《ヒエタニエミ墓地》へとはいっていきます。墓地の真ん中を走るマラソンコースなんて、そうあるものではありません・・・。

フィンランドの独立の礎を築いた思想家スネルマン、ソ連軍を撃退し祖国を守ったマンネルヘイム将軍、フィンランド共和国第8代大統領として26年間にわたり指導的立場にあった政治家ケッコネン、そしておなじみ建築家/デザイナーのアールトなど、数多くの偉人たちがここに眠っています。フィンランド政府観光局の雑誌「TORI」によれば、このあたりからはアンティ・ヌルメスニエミがデザインした青い高圧線鉄塔がのぞめるとのことなのですが、はたしてテレビで確認することはできるでしょうか?ちなみに左手には、フィンランドにはめずらしい砂のビーチがあります。

さらに走者たちは北上をつづけます。彫刻家エイラ・ヒルトゥネンによる鉄のモニュメントが有名な《シベリウス公園》を通過すると、やがて正面に《メイラハティのこども病院》があらわれます。ウノ・ウルベリとエルッキ・リンナサルミの設計で1946年に完成した建物です。ここで走者は右折、東へと進みます。しばらくゆくと、右手はゴール地点となる《オリンピックスタジアム》のほか、サッカー競技場、ホッケーなどができるアイスホールなどスポーツ施設が集中するエリアになります。このエリアの外周にそって右折し、ふたたび走者たちは南下をはじめます。

トーロ湾のほとりにたたずむ《国立オペラ劇場》のところで左折した走者たちは、いよいよヘルシンキ一の目抜き通り《マンネルヘイム通り》へ。やがて左側にアルヴァー・アールト設計の《フィンランディア・タロ》の白亜の建物がみえてきます。ついで《国立博物館》、シレンの設計による《国会議事堂》など、モニュメンタルな建造物が多いのがこのあたりの特徴でしょうか。

左手にスティーヴン・ホール設計の現代美術館《キアスマ》がみえてきたところで、走者は右折します。このルート、市の中心部のアピール度の高いエリアをあえてはずしているようでどうも意味不明です・・・。ただいま大工事中(もう何年やってるんだろう?ふつう、こういうのってイベントにあわせて竣工するものではないのでしょうか・・・わからん)のバスターミナル《カンッピ》、そして映画館やファーストフード、市立美術館などがはいるアミューズメント施設《テニスパラッツィ》を通過して《フレデリキンカトゥ》へ。道幅もそんなにないし、たしか「石畳」だったような・・・。でも、落ち着いた町並みは雰囲気満点です。

さて、《フレデリキンカトゥ》から、叙事詩『カレワラ』を編纂したリョンロットの名がつけられた《リョンロッティンカトゥ》へと曲がれば、周回コースの起点となる《ヒエタラハティ》ももうすぐ目と鼻の先。このルートを3周したあと、最後は《オリンピックスタジアム》でゴールインします。

それはそうと、気がかりなのは「観衆」のこと。一周目はともかく、二周、三周とするうちに人数が減って、しまいには観衆ゼロなんてことにならなければよいのですが・・・まさに「長距離走者の孤独」?!心配です。なお、お天気は13日、14日ともにくもり、ところにより一時雨との予報。まだまだ8月も前半、ぜひ澄みきった夏空の下でのレースを期待したいところです。

というわけで、あす、あさってはビール・枝マメ・マラソン中継で、ヘルシンキのヴァーチャルツアーをぜひ楽しんでみてはいかがでしょう。

世界陸上マラソン・ウラ観戦マニュアル その1

2005-08-11 23:28:06 | SUOMI
よいよ今週末には、「世界陸上ヘルシンキ大会」のフィナーレを飾るマラソン競技[男子/13日・女子/14日]が開催されます。そこでこのブログでは、じっさいにランナーが走る「コース」をたどりながら、プチ観光気分を味わえる「みどころ」を2回にわたりご紹介していきたいと思います。題して、マラソンにまーったく興味がないアナタのための世界陸上マラソン《ウラ観戦マニュアル》。では、出発!

まずスタート地点ですが、「ヘルシンキの銀座通り」(?!)エスプラナーディが南港の「マーケット広場」につきあたる、ちょうど《ハヴィス・アマンダ》像が立つあたりになります。スタートの合図とともに、走者たちは白亜の《ヘルシンキ大聖堂》を背に、左手に海を見ながら「エテラランタ(通り)」を南下していきます。すぐに、左側に赤煉瓦づくりの《オールドマーケットホール》が、そして右側には《パレスホテル》の建物が見えてきます。有名なアンティ・ヌルメスニエミのサウナスツールは、このホテルのためにデザインされたものです。しばらくゆくと、左手にストックホルムとヘルシンキをむすぶ大型客船「シリヤライン」の発着場があらわれます。ちょうど時間的に、出発を待つ巨大な白い船体を目にすることができるかもしれません。

やがて走者たちは、ヘルシンキの南端に位置する海に面した公園《カイヴォプイスト》へとはいっていきます。このあたりは昔ながらの高級住宅エリアで、堅固な石造りのアパートメントや瀟洒な邸宅の立ち並ぶ通りを、昼下がりには品のよい老人がステッキ片手に散歩していたりします。そういえば、アキ・カウリスマキの映画にはかかせない看板女優カティ・オウティネンは、あるインタヴューで少女時代にはよくこのあたりで遊んだと語っていましたが、じつはけっこうな「お嬢さま育ち」なのかもしれませんね・・・。カイヴォプイストの一角にたたずむ人気のカフェ「ウルスラ(cafe ursula)」を過ぎると、こじんまりとしたヨットハーバーが姿をあらわします。天気さえよければ、世界遺産にも登録されている《スオメンリンナ島》の姿を沖にのぞむことができるかもしれません。海沿いの、もうひとつの人気カフェ「カルーセル(CARUSEL)」を通り過ぎ、徐々に右にカーヴしながらこんどは北上ルートへとさしかかっていきます。

風景は、このあたりから一変します。左手にのぞむことができるのは、ヘルシンキ随一の産業港である「西港」です。観光港の「南港」とは異なり、造船所のドッグや工場のエントツなど、アキ・カウリスマキの映画に登場しそうな殺風景な景色がひろがります。そしてやってくるのは、夏にはフリーマーケットでにぎわう《ヒエタラハティ》。走者たちは、そのマーケット広場のまわりをぐるりとほぼ一周走ります。右手には、アルヴァー・アールトをはじめ数々の建築家を輩出した「ヘルシンキ工科大学」の旧校舎の建物をみることができるでしょう。

と、ここまでが前半のポイントです。おなじルートを3週半する今回のコースですが、じつはスタート地点からこの「ヒエタラハティ」までのルートを走るのは一回だけ。お天気次第ですが、なかなか風光明媚なルートだけに、ぜひお見逃しなく!

次回はいよいよ、ぐるぐるぐるぐ・・・と3週半する「周回ルート」のあまのじゃく的ガイドです。どうぞお楽しみに。

フィンランドデザイン・イヤー2005 その2

2005-08-10 16:37:00 | SUOMI
ょうは正午から「打ち水大作戦」「全国いっせい打ち水」の日だったのですが、それを知ってか荻窪では昼前から「天然『打ち水』」(つまりは「雨」ね)がザァーッとあったため、とりあえず今回は見送りました。とはいえ、まだまだ暑い日がつづくようなので、引き続き「打ち水」に励みたいとおもいます・・・。

さて、きょうも「フィンランドデザイン・イヤー2005」から、ヘルシンキ以外の都市でおこなわれるイベントを。

はじめは、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのフィンランド発のファッションブランド「イヴァナ・ヘルシンキ」の7年のあゆみをふりかえる展示です。今回は、デザイナーのパオラ・スホネンとテキスタイル・アーティストのシルッカ・コノネンとの二人展となるようなので、あるいはコラボ作品も登場するかもしれません。リンドフォルスもそうですが、パオラ・スホネンもまた「フィンランド人らしからぬ(?)したたかさ」を持ちあわせていますね。これくらいじゃないと、フィンランドのアーティストが世界を舞台に活躍するのはむずかしいということなのかもしれません。展示は10/1から10/18まで、ポリ市の「ポリジナル・ガレリア」にて開催されます。

そしてもうひとつ、おもしろそうな企画がラップランドの町イヴァロで開催されます。名づけて「フィンランドデザインのアイドルたち、荒野へゆく」。イナリ湖の湖畔にたたずむこの町をハッリ・コスキネンやリトヴァ・プオティラをはじめとする10人のデザイナーたちがおとずれ、かれらがこの極北の地からインスピレーションをえて制作した作品の数々を展示するというもの。イナリ湖のほとりといえば、フィンランドデザイン界の巨匠にして野生児、タピオ・ヴィルッカラが好んで滞在し数多くの傑作を生んだことでもしられる土地だけに、十人のデザイナーたちが十人十色、北の空気のなかではたしてどんな作品を生み出すのか、じっさいにその土地の景観にふれながら確かめてみたいものです。なおこの企画は、9/8ににオープンする「Design House Idoli」の常設展示となるそうなので、イヴァロに行かれる方はぜひいかがでしょう。

ほかにもたくさんあるのですが、興味のある方はぜひ「フィンランドデザイン・イヤー2005」のウェブサイトをチェックしてみてください。

フィンランドデザイン・イヤー2005 その1

2005-08-09 23:30:15 | SUOMI
の夏から年末にかけて、フィンランドでは「フィンランドデザイン・イヤー2005」としてさまざまなデザイン関連イベントが開催されています。そこで、ぼく自身でかけてみたい&これから行かれる方にはぜひ足を運んでみていただきたいイベントをいくつかピックアップして、ご紹介させていただこうかとおもいます。

まずはステファン・リンドフォルスの個展から。
リンドフォルスといって思い出されるのは、なんといっても1998年にアラビア社から発表されたカップ&ソーサーセット《Ego》ではないでしょうか。一見、奇をてらったようなフォルムでありながら、そのじつデザイン性と機能性の交差点において発想されたこの《Ego》は、有無を言わせることなく、あっという間にフィンランドデザイン史のマスターピースとなってしまったのでした。じっさい、今回、弱冠43歳にしてデザインムセオで個展が開催されるという事実が、なによりフィンランドにおけるかれの人気と実力とを裏づけているといえそうです。
その後も、NYのホテルのインテリアデザインを手がけたり、イーッタラ、マリメッコ、ハックマン、P.O.コルホネン社など、フィンランドを代表するメーカーから相次いで作品を発表するなど精力的な活動をつづけていましたが、数年前、突然のデザイナー休業宣言をして映像の分野に活動を移しました。ほかにも彫刻家、グラフィックデザイナー、DJといったさまざまな「顔」をもつリンドフォルスですが、ひとつの「肩書き」に縛られることなくそのときどきの自身の関心にしたがって行動してゆく、そんなフットワークの軽さこそが彼の身上かもしれません。
また、「アーティスト」としての自己プロデュースという部分でも、リンドフォルスはなかなかにしたたかな人物です。このへんは、いわゆるフィンランド人のパブリックイメージと異なるのですが、それは彼がスウェーデン語圏の自治領であるオーランド出身ということとも、あるいは関係があるかもしれません。いずれにせよ、進化をつづけるアーティスト、ステファン・リンドフォルスの現時点での《集大成》であるこの個展が、じゅうぶん興味ぶかいものであることにちがいはありません。個展は、9/16から10/2までヘルシンキの「デザインムセオ」にておこなわれます。

さて、もうひとり、プロダクトデザイナーとしてフィンランドを代表する人物といえばこのひと、ハンヌ・カホネンでしょう。彼は「CREADESIGN」の主宰者として、携帯電話からスキー板、いす、ヘルシンキ市のゴミ箱からトラムの車両のデザインまで幅広く手がけています。今回開催される展示「テーマ」では、探究者あるいは実験者としての彼の「顔」にスポットをあて、そのデザインの源泉へと遡ってゆくものとなるようで、これもなかなか見逃せない内容といえそうです。展示は、11/11から11/30までヘルシンキの「デザインフォーラム・フィンランド」で開催されます。

まだまだおもしろそうな企画が目白押しなので、あしたも引き続き注目のイベントをご紹介したいと思います。