内向的性格を生きる

不安と共に生きる
  by mo-ri-tan
(対人緊張・抑うつ感・劣等感を持ちつつ)

「なげださない」 鎌田實著

2008-11-17 20:15:32 | 読書感想
 鎌田さんの本を読む。これで3冊目。
 『ぼくがこれまでに感銘を受けた患者さんや知人たちのエピソードを交えながら、一生懸命話したけれど、子どもたちの表情はかたい。結局、手ごたえを感じられないまま授業が終わってしまった。中学生にとって死はむずかしすぎたかな、失敗だったなと後悔した。でも、それは、ぼくの早とちりだったらしい。』(p.48)
 
 鎌田さんの思いとは裏腹に生徒達の感想は<ためになった><もう死にたいなんて思わない>などと肯定的だった。

 私も人前で色々話をする機会がある。準備を色々して話しても、手ごたえを感じられずに、ああ失敗だったと後悔することも多い。けれど実際のところ、案外聞いてくださっている方は肯定的に受け止めてくださっているのかもしれない。
 鎌田さんでもそんなふうに受け止めることがあるのか~、とちょっと意外と思うと同時に、みんな同じような思いを持っているんだと安心した。

 この本には色んな人が登場する。アルコール依存症で、40代後半に、家も家庭も失ってしまったヒロさん。ガンを告知された男性(睾丸の摘出手術を受けたばかり)に「結婚しよう」と申し出たミサコさん。被爆して上半身にひどいヤケドを負ったシゲコさん・・・。

 色々な苦しみの中で生きている人がいる。こういう人の存在に気づくというのも、またとらわれからの解放になるのだろう。自覚を深めることにもなる。

 いろんな人の生き方を、鎌田さんの本は伝えてくれている。

 『心がつらいときほど、日常的なことをていねいにやっていくことが大切だと、ぼくは思っている。日常の持つ力は大きい。病院の中では、いくら「闘うんだ」と自分に言い聞かせてもわいてこなかったエネルギーが、日々の営みを通して生まれてくる。炊きたてのご飯やみそ汁のにおい、掃除機や洗濯機の音、気のおけない相手とのおしゃべり・・・毎日の当たり前の光や音やにおいが脳にはたらきかけ、生きる力を引き出してくれる。』(p.53)