ねこやま

徒然備忘録

赤朽葉家の伝説 / 桜庭一樹

2012-03-08 10:53:10 | さ行作家
抜粋

“辺境の人”に置き忘れられた幼子。
この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した
旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の“千里眼奥様”と呼ばれることになる。
これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。
―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。
高度経済成長、バブル景気を経て平成の世に至る現代史を背景に、
鳥取の旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の姿を、
比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。






























伝説・・・

伝説かぁと思って手にとる。
桜庭さん久しぶり。
アニメでは見ていたのだけれど。
ゴシック、おもしろかったです。

図書館へいくと伊坂さんが1冊もありませんでした。
たまに読みたいなと思うのにない。
まだ未読本が沢山あるから助かるんだよな。
けどないのね。
そういう時何をかりようかって思うんだけど。
奥田さんも荻原さんもだいたい読んだことある本が並んでいる。
新規開拓というのはやはり体力がいるもので。
何冊か読んだことがある作家さんに目がいくもの。

そこで今回選ばれたのが桜庭さん。

時代背景が気に入った。
1953年~2000年代以降までの赤朽葉家女三代記。
そんな長い時間かけてこの物語は何を伝えたかったのか
というのはわたし的にはあんまり伝わってこなかったのだが。

現代の娘・瞳子の語りで始まる祖母万葉の物語。
万葉の時代が一番謎めいていて伝説っぽく
甘酸っぱくもあり切なさも大いにあり、読み応えがあったと思う。
彼女が“辺境の子”で捨て子という設定なのだけど
彼女の養い親はとてもいい人たちであったことが読んでてほっとした。
これで悲惨な家で育つとかだったら乙一みたいだもんね。
そこまで残酷じゃないのでよかった。

村一番の製鉄所にもらわれていく万葉。
ある日製鉄所の大奥様であるタツに見初められ嫁にこいといわれる。
果たしてそれは現実となった。
そしていつも思うのが桜庭さんの描く女の子ってなかなか感情移入しずらい。
個性的な女の子が多いと思う。
新婚初夜、床の中での万葉の台詞に笑ってしまった。

『あぁ。これは、なんの騒ぎです・・・?』

その数行後には物悲しくなった。
日々の営みであり、ずっと続くといわれ、仕方ない、と思う万葉。
親の決めた相手と一緒になるということはそういうことなんだと思う。
この時代はそうだったわけで。
嫁にいく前に1度顔を合わせているとはいえ、ホラーだなほんと。
このままこの夫婦は冷え切った関係なのかしら
と思いきやなんとかなるものでそれなりに夫婦としてやっていけていたので
ひとまずほっとした。
そんな日々の中でいつも万葉の千里眼で見た一つ目の男が
彼女の心の中にすんでいたことは読者の目には明らかだった。
お互い惹かれあっているけれど結ばれない二人。
二人は親友のようであった。

第二部は万葉の長女毛毬について娘・瞳子が語りだす。
丙午年生まれの女はきかんぼうという風習があり
この長女毛毬はとんでもなく凶暴で喧嘩っ早くて熱い女だった。
レディース製鉄天使(アイアンエンジェル)を立ち上げ中学時に広島と岡山を制圧した。
彼女の親友蝶子がこの第二部のヒロイン役である。
主人公はもちろん毛毬。
彼女たちの友情物語だったように思う。

そして第三部にようやくご本人の登場。
今までたんたんと赤朽葉家の歴史を眺めてきたわけだが
ここで物語は一変してミステリーとなる。
第一部や第二部が巨大な伏線であったのだと気づく。
今わの際に万葉が残した言葉をきっかけに謎解きを始める孫娘。

この子は現代っ子でますます感情移入しにくかった。
母・毛毬のデビュー作を読んで百夜の存在をあえて見えないフリをしていた
と書いてあったのを読んで、そうだったか、と納得した。
やっぱり愛人の子は認めたくなかったのかな~。
次々と男を寝取られれば完璧無視を決め込んだ方が楽だったのかも・・・。

そして祖母・万葉が残した謎を紐解いてみれば―
なんともはや。
そういう種明かしもありだよね。
誰なんだろうといろいろ疑っていたけど、わかってみればあっけないものだった。
そして、実はちゃんと伏線もはってあったことを瞳子が語るのでわかった。
言われなきゃ気づかなかった。
そういえば万葉の子供時代にそういう表記は何度もあった。
なかなか上手く書いてあるなーと感心する。
といってもわたしそんなに謎解こうと思って読んでないんだけどね。



最終的にはそこまで思い入れはないまま終ってしまったのだけれど
そこそこ面白かったな、という印象。
無駄に長いようで、そうでもなかった。















印象に残っているのは万葉とみどりがトコネン草を燃やすシーン。
自殺者を弔ってくれる“辺境の人”
かつて万葉を置き去りにした故郷の人。
もうトコネン草を燃やす人はいなくなった時代に
みどりは固い信念で辺境人は必ずくるといった。
その言葉が信じられないけど信じたい万葉。
彼らはやはりいたのだ・・・
と残された鉄砲薔薇を持ち帰る万葉。

この自殺者を弔ってくれる辺境人、という発想がおもしろい。
みどりの兄はおそらく性同一性障害か、
戦争から帰ってきて心を病んでしまったかで
ある日突然自殺してしまう。
そんな兄を慕っていたみどりが兄を弔ってやりたくて
辺境人の子供である万葉を頼った。
このくだりがなんとも深いなぁと思う。
友情っていつの間にか育つんだな。
いじめられっ子といじめっ子だった二人。
晩年はなぜか赤朽葉家の居候となるみどり。
おもしろおかしく暮らしている様は読んでておもしろかった。
彼女が実は万葉の一番の理解者だったのではないか、と思う。


2012.03.05


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