ねこやま

徒然備忘録

Op.ローズダスト / 福井晴敏

2012-11-24 23:37:07 | は行作家
抜粋

二〇〇六年秋、“ネット財閥”アクトグループの役員を狙った連続テロが起こる。
実行犯は入江一功をリーダーとする「ローズダスト」を名乗る五人グループ。
警視庁の並河警部補は防衛庁情報本部の丹原朋希と捜査にあたるうちに、
朋希と一功の間の深い因縁を知る。
かつて二人は防衛庁の非公開組織「ダイス」に所属し、
従事していた対北朝鮮工作が失敗、二人が思いを寄せていた少女が死んだ。
朋希を除く生き残った工作員たちはテロリストとなり、
アクトグループ役員となった元上官に復讐しようとしているのだと……。
互いを理解しながら憎しみあう二人の若者と
彼らを取り巻く人間たちの群像劇を通して、壮大なスケールで描くサスペンス・アクション。





































ひさびさの福井晴敏。

いや、福井さん・・・。

読み終わってからどのぐらい時間が経ったんだっけ。
読後の一言感想なんだったかな。
そう。
ちょっと読み返してみようと下巻を手にとって気づいた。
ありゃ、クライマックスシーンが終るところに栞がはさまってら。
うひょ。
読み終わってなかった~~~~~ 苦笑

ということで、異例の感想文を途中までかいてからの読了。
読後の一言感想はというと―

アレ?

これで終わりですか。
いや、クライマックスはよかったけれど、その後のアフターケアが
いつもこれでもかっていうぐらいまとめてキレイに終るのに
なんかアニメ的なしめ方じゃないような気がする。
事件後を付け加えるならばちゃんと再会するとこまで書くのが
福井さんだと思ったんだけどな~。
と、そこが少し意外に感じた。
福井ファンはどう思ったのかしら。
なんか途中で息切れしてたように思うんだけど。

ローズダストを先に読了した友人から、けっこう面白かった
というお墨付きだったので文庫で上・中・下巻を借りたのはいつのことだったか。
もうけっこう前なんだよね。
早速読み始めたのはいいんだけど、いつものようにロースターターなんだよね。
最初はいつもとっつきにくい。
ハマるまで時間がかかる。
状況説明に時間がかかりすぎるきらいがある。
それは登場人物たちの内面まで掘り下げて描いて、のちのち響いてくる
という福井さんならではの持ち味でもあるんだけど・・・。
今回はどうだろうな~。
主要人物である一功の人物像が周りからの描写ばかりだったように思う。
主人公は朋希だからまぁ悪くはないんだけど・・・。
堀部美佳もなんかよくわかんない存在だった。
とにかく周りの男性陣から人気が高い女子だという印象。
真が通っていて、多分薄暗い過去がある人間から見たら眩しい存在で
彼女だからキレイ事いっても、その通りだなと思えるというか。
同じ事を留美がいったらぼやけてしまう、みたいな。
罪作りな女の子だった。

結局さ、彼女の死がキッカケになってテロが起こるわけなんだよね。
一番の理由は他にあっても、キッカケは好きな女の死、なわけ。
そこらへんがもう漫画的。
悪い意味でいっているのではなくて、確固たる目的があってわかりやすい。
そういうキッカケではあるけれども、今回も筆者の胸のうちは熱く語られている。
日本に置ける自衛隊の在り方や、日米安保の行方。
過去から現在にかけて培われてきた政治の腐敗。
なんかもう、まっくらなのであります。
我々の未来、お先真っ暗なのであります。
でもそこに希望の光をさすのが堀部美佳クンなのだった。
という具合かなぁ。

今日本でこの規模のテロが起きたとして・・・
まぁ、まずありえないテロだけども^^;
なんの為に自分が頑張れるかといったら誰かの為、なのである。
テロが起きたとしてもその被災者になるのは他の誰かであって自分ではない。
と他人事のように捕らえていた東京副都心にいた人々の脳裏に
どす黒いきのこ雲は残り続けるんだろう。
株は暴落して、日本経済はどん底まで落ちて
この先どうやって進めばいい?
そんな言葉が聞こえてきそうなラストだったけど
それでも明日は来るし、今日は終るんだってこと。
とどまり続けてはいられないし、どうにか動き出さなきゃいけない。

この物語の日本はこのあとどうやって一歩を踏み出すのか
まったく想像がつかない。
戦後ではない現代の日本は、どうでるんだろう。

折しも衆議院が解散し、選挙カーが街を騒がせている。
震災で原発が見直されているけど、
今の日本から原発をなくすことなんてできるのか誰もが怪しんでいる。
今の生活レベルを下げれば可能だと誰もが知っているから
“どうやって”それを実現するのか知りたがる。
電源の確保は日本経済にも影響するわけで
それがなければいろんなものが動かなくなって物が作れなくなる。
日本経済も計りにかけながら廃炉に向かって日本は進んでいる・・・
のだろうか。
とにかく選挙が終ってみなければこれらの問題にどう対処すべきか
ってことも全部棚上げなわけだ。

ローズダストから随分話がそれてしまった。
話を元に戻すと、おもしろくなってきたのは下巻からだった。
タイトル通りOp.ローズダストが始動してから。
まぁ、最初から始動はしていたのだけどあちこちの布石を
生かす状態に入ってからがやっぱり読みごたえがあったということ。

戦闘が始まったらもう、画が見えてこない。
コブラの戦闘能力とか、SOFの攻防とか、一功のアクロバティックな動き
なんとなく想像はできても画が見えない。
これは映画にしたら予算がとんでもないことになるので
(CG使うにしてもほぼCGになっちゃいそうだしね)
アニメなら表現できるんじゃないかと思う。
上・中巻もけっこう派手なことやらかしてたけど
下巻にいっちゃうともう完全に非現実的なのでアニメ化を希望する。
しっかりしたアニメーション制作会社にお願いして脚本頼んだら
いいもんができあがるんじゃないだろうか。
ノイタミナ枠とかで美しい画で見たいなぁ・・・

途中雑念が入ってしまったのでわけがわからなくなってしまったけど
今までの福井さんとは少し違うかな、と感じた。
つまらないわけじゃないけど、長くも感じたなぁー。
けっこう分厚いので読むなら気合を入れて手に取るのをすすめます。































余談

ローズダストとは登場人物が波の花を例えて表現した新しい言葉。
数年前、わたしもこれを見たことがある。
主人公たちがみた同じ浜ではないけれど、同じ日本海で。
わたしもまだ若者と呼ばれてもおかしくない年代で
海まですぐのところにいたので夜中に車を走らせた。
若い頃ってどうしてこう、海にいきたがるのかね~。
そこで初めて波の花というものを見た。
真っ暗な夜の海に着くと、車のヘッドライトに浮かび上がる無数の泡。
何が舞っているのかわからずに車を飛びだしてそばにかけよる。
異常現象かと一瞬怖くなったのを覚えている。
夕方とかに見ればたしかにそう、キレイかもしれない。
けど、これが初見で、真夜中に車のヘッドライトに照らされて浮かび上がる謎の泡
ととるなら異常現象だと思ってもおかしくないと思う。
今でこそ、幻想的といわれればそうかなーと思うが。
これを薔薇の花びらなんて可憐な表現するなんてなかなかオシャレ。
日本海には夕日が落ちる。
夕日に照らされるローズダストはさぞやキレイだったことだろう。

























余談2
物語の中に架空の大量破壊兵器TPex(ティーペックス)なるものが登場する。
正式名称はテルミット・プラス・エクストラ。
簡単に説明すると放射能ぬきの核兵器。
おもしろいのがその設定。
TPexは3種類の液体で、混合し始めて15分で爆発するが、
その間、液体が空気に触れると爆発はしない。
この15分の猶予を使ってクライマックスは大盛り上がりを見せるのだが・・・
実際にこんな兵器がこの世に存在したらどうなるだろう。
核兵器は今や抑止力としての効果でそれぞれの国が保有している。
核の冬とはいったもので、それをどこかのトップが押したらハイさようなら。
そんな蛇に睨まれたカエル状態が今も尚続いているといっていい。
そこで、TPexなのである。
戦争とは侵略目的や宗教的な聖戦という意味で行われるものだと思っている。
占領しようとした土地が放射能まみれじゃそれはもう死の世界なわけで。
とんでもない破壊力はあっても抑止力としてしか意味をなさない核。
TPexならどうだろうか。
放射能抜きの大量破壊兵器。
同じだけその土地は焼き尽くされるけど、そこにはまたヒトが住むことができる。
そんなものをどこかの国が開発したとしたら・・・
そりゃーとりあいになるだろうなーと思う。
使える、兵器として。
どっちにしろ一瞬でその場にあるすべてを焼き尽くすのには違いがないから
やっぱりTPexも抑止力として保有されることになるんだろうか。
科学はとどまることを知らない。
人間の欲に終わりがないように。
原発も核もこの世界からなくなる時代はくるんだろうか。
科学者には核廃棄物をどうにかすることの方に力を入れてもらいたい。
新しい兵器ではなく、失くすための発見を。


2012.11.24


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