ねこやま

徒然備忘録

芙蓉千里 / 須賀しのぶ

2010-10-23 22:42:43 | さ行作家
抜粋

明治40年、売れっ子女郎目指して自ら人買いに「買われた」少女フミ。
満州はハルビンの地で、新しい人生が始まる。
コバルト文庫の看板作家が満を持してオトナ女子におくる、
ハイパーガールズエンタメ!!















うーーーーん。
この内容紹介で手に取る人って少ないんじゃなかろうか。
“売れっ子女郎目指して”っていう直接的な言葉がすでに軽い。
内容紹介までなんかライトになってるぞーといいたくなる。

コバルトからおっかけてたわたしならすぐとびつくだろうけど、
一般向けのモノの中に混じってて“ハイパーガールズエンタメ!”
なんて書いてあったらカタイ人は手にとらないだろうな、と思う。
そんでもって、ケータイ小説を一冊にまとめたなんてかいてあったら
なおさら、その手の本に興味がない人は内容さえ読まないだろう。
下手に“ガールズ”とかつけないで、大河小説だけでいいと思う。

そもそもケータイ小説というものをペラ読みした程度なので
失礼千万なんだが、どうも文章という感じがしないんだよな。
すげー長いメールを読んでるような感じなんだよね。
現代人て、本で文字を追っかけるのは苦手だけど、
ケータイの文字なら読めるようになってるの?
不思議だな。
あんな小さい画面の文字読むより、本の方が読みやすそうなのに。
ページが厚いとそれだけでもう無理って思うのかしらん。

そんなことをいいつつも。
こないだのキングも恩田さんの中庭の出来事もケータイ小説だったよな。
電子本。
うーん、耳慣れないし、見たことがない、いや、読んだことがないな。
本になったのは読んだけど。
そういや、中庭の出来事って本当に意味わかんなかったな。
アレをケータイで毎週だか毎月だか配信待ちながら読んでいたとしたら、
もっとわけわかんなかっただろうな。
一気読みしたわたしでもこんがらがったから。

長い冒頭になった。
まだ物語には一切触れていない。

表紙はすばらしいですね。
わたしなら須賀さんじゃなくても、手にとって眺めてるね。
きっと帯がついてて、それを読んでるね。
そんで舞台が満州で、主人公は女郎を目指すなんて書いてあったら
まず読むね。
それにつけてもこの美しい表紙に惹かれて買っちゃう人もいると思う。
この手のイラストは大好物。

内容紹介にもあるように、主人公フミは自発的に女郎を目指し、
女衒に自分を売り込んで海を渡る。目指すは満州ハルビン。
ハルビンかぁ・・・
うちのじいさんが昔いたところだなあーなんて思いながら。
じいさんの話はうちの親父殿から少ししかきいたことがないけれど、
ハルビンはとっても寒いところで、鼻水が凍るんだとか、
おしっこしてる間に下から凍ってくんだとか
そういうエピソードならきいたことがあった。
忌まわしい記憶はじいさんもきっと思い出したくなかったんだろう。
てっぽう玉かすったっていう武勇伝ぐらいしかきいたことがない。

内地(新潟港)から大陸へ。
そこもまずひっかかった。
新潟の方言を使っていた。
それは、新潟というか、東北がごちゃまぜになったような言葉だけど。
そこでもう親近感わく。

主人公フミは角兵衛獅子が舞える。
その角兵衛獅子の説明が、いまいち。
獅子舞というのを、みたことがあるようなないような・・・
子供の頃の記憶だし、今じゃ獅子といえばたむけんぐらいしか浮かばず。
しかも、この“角兵衛獅子”というのはアクロバティックな動きが
あるようで、その説明も文中にあったけど、どうもイメージがわかない。
読了後自分で調べてみた。
たしかに12~15歳ぐらいまでが限界だろう。
文中にあった説明だと越後の農村が収穫期が終わり、
畑も田んぼもできない冬に小遣い稼ぎでやりだしたのが始めとか云々。
昔は子供はいっぱいいたからその子供を使ったんだろう。

ここでまた越後。
新潟の伝統芸能だったとは。
知らなかった。
月潟村ではいまでもそういう行事があるそうだ。
しかも美空ひばりの歌で有名になったのか、角兵衛獅子って・・・
ジェネレーションギャップ!

月のものもない二人はまず下働きからはじめる。
フミにいたってはまだ12歳。
一緒にきたタエはひとつかふたつ上かな。
タエは女郎になるのが怖くて仕方がなくて、
フミは早く女郎になりたかった。
自分の母親は吉原のおいらんでお職(遊女の中でもトップの座)だったと
息巻いていた。
しかし、誰もが大ボラだと思うようなお世辞にも器量のいい娘ではなかった。

この二人の少女の約6年間が1冊に詰まっている。
途中でこの二人がドロドロになっちゃったりするんじゃないの~
なんて不安だったけど、あくまでも二人の関係は友情で結ばれていた。

フミの最後の決断には思わず涙が。
そんだけ感情移入してたんだなぁ~。
あっぱれ。
強い女になった。














ところで。
この設定で、わたしが昔読んだ本「花園の迷宮」
を思い出さずにいられなかった。

あちらの時代は昭和だけど、主人公の名前まで同じ。
自分からただで女衒にもらわれたわけじゃないけど
一緒にもらわれたオンナノコの方が美人だったっていうとこまで一緒。
ただ、応募した場所が江戸川乱歩賞だったので
どうしても殺人事件が起きてしまう。
でも、時代の波に揉まれながら、最後にとった行動の強さまでが同じ。
どっちも強い女。

似たような話っていうけど、まったく違うお話なんだよね。
なんというか、流れとかこっちに伝わってくるモノが似てたのかも。
強い子を書きたかったのかなーっていう。











とまぁ、似たような設定で読んだことがあったので
なんとなくもうひとこえ、何か欲しかったなぁ、ということで★4つ。
でも、ラストは感動した。

そんで、アマゾンに本人の紹介動画が載ってることにも驚き。
そこまでこの本推してるんだーって思った。
別にそういうわけじゃないのか?
ほとんど初めて作者を見た。
キレイな人なんだーってまた驚く。
この人からあのキルゾーンシリーズとかが生まれたのかーなんて。
それにしても、女神伝の続編か短編で番外編でも書いてくれないかな。
最後分厚い一冊で読み応えはあったけど・・・


2010.01.09


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