雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

芳しき香り ・ 心の花園 ( 50 )

2013-11-07 08:00:52 | 心の花園
          心の花園 ( 50 )
               芳しき香り

長かった夏もようやく終わり、急ぎ足の秋の気配が漂っています。
夏の疲れもようやく癒えて、秋の冷涼な季節感を楽しみたいものです。

心の花園には、菊の花がほころび始め様々な花色が目立ち始めています。
そして何よりも、その芳しい香りは、古くから人々に愛されてきた魅力の一つではないでしょうか。

「菊」の原産地はアジア東部といわれ、わが国へは中国から入ってきたようですが、わが国にも自生している野菊の仲間は三百五十種ほどもあるとされていますから、中国からの物はいわゆる園芸種にあたるものではないのでしょうか。

わが国では、「菊」は古い時代から人々に愛されていて、古今集には幾つもの歌に詠まれています。
『 心あてに折らばやおらむ初霜の をきまどわせる白菊の花 』
これは、古今集にある凡河内躬恒の和歌で、百人一首にもあるのでよく知られています。
わが国最古の歌集とされる万葉集には「菊」は登場していないとされていますが、「百代草(モモヨクサ)」という植物が歌われていて、これはどうやら「菊」らしいのです。

「菊」は花色も種類も多く、また愛好家も多く様々な形で栽培され各地で盛んに品評会なども催されています。
また、私たちの生活の中では仏花や献花として定着しており、一方で、皇室の象徴として敬愛されています。
わが国の国花は、桜と「菊」とされるのが一般的ですが、実は法的に定められているものではなく、桜は国民一般に親しまれていること、「菊」は皇室の象徴であることから定着してきているようです。

「菊」には様々な花言葉が作られています。色や種類によっても違う花言葉も紹介されていますが、ここでは、「高潔」と「思慮深い」を紹介させていただきます。
深まる秋を、紅葉と共に、芳しい菊の香りに、穏やかな時間を求めたいものです。
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