10日で辞めた新入社員、
人事が諭した「下積み10年」論は今も正しいか
産経新聞
2014年5月2日(金)20:07
多くの企業で入社式が行われ、期待と不安を抱いた新入社員が
それぞれの職場に配置されるこの季節。
だが、中には早くも会社を辞めてしまう新人もいる。
そうした早期離職者に対して、
大手企業の採用担当者が仕事についての心構えを諭した内容が、
ネットで大きな反響を呼んでいる。
賛否混在した意見からは、現代日本の就職風景が見えてくる。
話題になったのは、家電量販店のヨドバシカメラの採用担当者が
4月中旬、就職情報サイト「リクナビ」の人事ブログに
投稿した「新入社員が退職した。」と題する記事だ。
それによると、入社10日にして
「販売はアルバイトの延長のような仕事。
ずっと続けていく気にならないし、自分に向かない」と退職を決め、
公務員を目指すという新入社員に対し、
採用担当者はこの若者が大好きだというゲームを引き合いに、
働くことの意義を説いた。
「(ゲームでも)楽しさを理解するには
練習と経験が必要だよな。ちょっとやってみただけで
『つまらない』とか『自分には向いていない』っていうのは、
早すぎるよな」
その上で、「社会人の時間は長い。
22歳で入社して、定年は60歳。
約40年もの年月だ。
つまり社会人にとって入社後の10年は、
大学で言えば1年生に相当する」と、
大学野球部の下積み期間にたとえ、
「楽しさにたどり着く前に職を変えてしまうから、
幸せになれない」として短期間での離職を繰り返さないよう戒めた。
面談を終え、新入社員の退職意思こそ変わらなかったものの、
その表情は「それまでと違って後ろ向きな逃避ではない、
前を向いて一歩踏み出そうとする者の顔をしていた」と、
この採用担当者は結ぶ。
◆大きな反響
自社の明るい面をPRして入社希望者を募る就職情報サイトで、
企業側が早期離職者に言及すること自体が異例であり、
この記事は大きな反響を呼んだ。
リツイートによる拡散は3,000以上に達し、
多くは「良いこと書いてある。
俺も頑張ろう」「これはすばらしい!
新人に仕事の意味を考えさせるこの手法は
ぜひ共有したいものだ」と採用担当者の
メッセージに共感する内容だった。
一方で、「面白くないと思っている人に
無理やりやらせても辛(つら)いだけ」などの
批判的な反応も、少なからず見られた。
「この変化の早い時代に、
下積みに10年を費やすのは危険すぎる」と題し、
就職しても早めに見切りをつけるのは
必ずしも悪いことではないとする反論記事
(「ヘンテナブログ」)も現れ、
さまざまな意見が交わされている。
◆昭和の価値観?
その中には、「『昔の昭和の人』には
相当好感を持って受け入れられる文章だろうが、
今の若者にはどうかな?」(はてなブックマーク)と
世代差を指摘する声もあった。たしかに、
「最初の10年は大学でいえば1年生」という議論の有効性は、
同じ会社に定年まで勤め続けられることを当然の前提としている。
10日で退職は早すぎにしても、
10年下積みを続けたとしてどれだけのキャリアパスが得られるのか。
一昔前ならおそらく、圧倒的多数が「いい話」と受け止めて
終わっていただろうエピソードについて、
意外にも賛否が分かれたのは、終身雇用と
年功序列という「日本型雇用」が自明ではなくなり、
就職への認識が世代間で変わりつつある現状を
映し出しているのかもしれない。(磨)
【用語解説】若者の早期離職率
厚生労働省の調査によると、平成22年3月大卒者の3年目離職率
(25年3月末時点)は31・0%に達し、
前年度より2・2ポイント増加した。
理由として、規模が小さな企業や
離職率の高い業種への就職者割合が上昇したことを指摘。
同省は「若者の職場への定着は職業経験の蓄積のために重要」として、
就業後の職場定着支援に取り組んでいくとしている。
上記「ヨドバシの人事担当者」のブログは、ここ。
人事が諭した「下積み10年」論は今も正しいか
産経新聞
2014年5月2日(金)20:07
多くの企業で入社式が行われ、期待と不安を抱いた新入社員が
それぞれの職場に配置されるこの季節。
だが、中には早くも会社を辞めてしまう新人もいる。
そうした早期離職者に対して、
大手企業の採用担当者が仕事についての心構えを諭した内容が、
ネットで大きな反響を呼んでいる。
賛否混在した意見からは、現代日本の就職風景が見えてくる。
話題になったのは、家電量販店のヨドバシカメラの採用担当者が
4月中旬、就職情報サイト「リクナビ」の人事ブログに
投稿した「新入社員が退職した。」と題する記事だ。
それによると、入社10日にして
「販売はアルバイトの延長のような仕事。
ずっと続けていく気にならないし、自分に向かない」と退職を決め、
公務員を目指すという新入社員に対し、
採用担当者はこの若者が大好きだというゲームを引き合いに、
働くことの意義を説いた。
「(ゲームでも)楽しさを理解するには
練習と経験が必要だよな。ちょっとやってみただけで
『つまらない』とか『自分には向いていない』っていうのは、
早すぎるよな」
その上で、「社会人の時間は長い。
22歳で入社して、定年は60歳。
約40年もの年月だ。
つまり社会人にとって入社後の10年は、
大学で言えば1年生に相当する」と、
大学野球部の下積み期間にたとえ、
「楽しさにたどり着く前に職を変えてしまうから、
幸せになれない」として短期間での離職を繰り返さないよう戒めた。
面談を終え、新入社員の退職意思こそ変わらなかったものの、
その表情は「それまでと違って後ろ向きな逃避ではない、
前を向いて一歩踏み出そうとする者の顔をしていた」と、
この採用担当者は結ぶ。
◆大きな反響
自社の明るい面をPRして入社希望者を募る就職情報サイトで、
企業側が早期離職者に言及すること自体が異例であり、
この記事は大きな反響を呼んだ。
リツイートによる拡散は3,000以上に達し、
多くは「良いこと書いてある。
俺も頑張ろう」「これはすばらしい!
新人に仕事の意味を考えさせるこの手法は
ぜひ共有したいものだ」と採用担当者の
メッセージに共感する内容だった。
一方で、「面白くないと思っている人に
無理やりやらせても辛(つら)いだけ」などの
批判的な反応も、少なからず見られた。
「この変化の早い時代に、
下積みに10年を費やすのは危険すぎる」と題し、
就職しても早めに見切りをつけるのは
必ずしも悪いことではないとする反論記事
(「ヘンテナブログ」)も現れ、
さまざまな意見が交わされている。
◆昭和の価値観?
その中には、「『昔の昭和の人』には
相当好感を持って受け入れられる文章だろうが、
今の若者にはどうかな?」(はてなブックマーク)と
世代差を指摘する声もあった。たしかに、
「最初の10年は大学でいえば1年生」という議論の有効性は、
同じ会社に定年まで勤め続けられることを当然の前提としている。
10日で退職は早すぎにしても、
10年下積みを続けたとしてどれだけのキャリアパスが得られるのか。
一昔前ならおそらく、圧倒的多数が「いい話」と受け止めて
終わっていただろうエピソードについて、
意外にも賛否が分かれたのは、終身雇用と
年功序列という「日本型雇用」が自明ではなくなり、
就職への認識が世代間で変わりつつある現状を
映し出しているのかもしれない。(磨)
【用語解説】若者の早期離職率
厚生労働省の調査によると、平成22年3月大卒者の3年目離職率
(25年3月末時点)は31・0%に達し、
前年度より2・2ポイント増加した。
理由として、規模が小さな企業や
離職率の高い業種への就職者割合が上昇したことを指摘。
同省は「若者の職場への定着は職業経験の蓄積のために重要」として、
就業後の職場定着支援に取り組んでいくとしている。
上記「ヨドバシの人事担当者」のブログは、ここ。