大学の授業にかかわる話題

授業日誌・キャリア・学びのスキルについて

新幹線を支える日本の部品技術

2015年05月31日 22時57分14秒 | 学習支援・研究
新幹線を支える日本の部品技術 
極限の安全追求が生んだ“絶対に緩まないナット”

SankeiBiz
5月11日(月)8時15分配信


死亡事故ゼロを誇る東海道新幹線。
100万キロ走行で「絶対に緩まないナット」が
全て交換される(写真:フジサンケイビジネスアイ)


世界に誇る日本の高速鉄道「新幹線」。
日本の大動脈、東海道新幹線の開業から半世紀が過ぎたが、
車内の乗客が犠牲になった死亡事故はこれまでに一件も起きていない。
ピーク時でほぼ3分間隔の過密ダイヤ、
最高時速285キロの高速運転を支えているのは、
日本の得意技ともいえる緻密なものづくりの世界。
海外での高速鉄道受注を競う鉄道会社や
鉄道車両メーカーを陰で支える部品会社の存在に
スポットライトを当てる。

1編成当たり2万本
東海道新幹線の看板列車「のぞみ」に投入される最新型車両「N700A」。
連日、多くの乗客が利用するこの車両には、
ある特殊なねじが使われている。
車体下部にある車輪を覆うカバーをはじめ、
車体の至るところに使われ、
その数は1編成(16両)当たり約2万本に上る。

そのねじとは“絶対に緩まないナット”と呼ばれる
「ハードロックナット」。
特殊ねじメーカーのハードロック工業(大阪府東大阪市)が開発した。

絶対に緩まないナットとは、どのようなものか。
若林克彦社長は「簡単に言えば、ナットとボルトとの間に
楔(くさび)を打ち込んだもの」と説明する。
ナットを凸形の下ナットと凹形の上ナットの2層に分解。
下ナットの凸部分を少しずらして偏芯を施す。
そこに凹形状の上ナットを締め込む。
するとハンマーで下ナットに楔を打ち込むのと同じ効果が表れる。
しかも一度ナットを締めると、絶対に緩まない。
そして着脱は何十回でもできる。

この絶対に緩まないナットには前身となる製品「Uナット」があった。
大阪工業大学を卒業後、技術者として
バルブの設計に携わっていた1960年、
大阪で開かれた国際見本市で展示されていたねじをヒントとして考案。
61年に脱サラで「富士産業社」という会社を設立し、
ねじ問屋などへ営業活動を始めるが、
「そんなん売れるか」と言われ、門前払いの日々。
そこで大阪中の町工場に大小100個ほど入ったUナットの箱を置いて回った。
最初は人件費や開発費は持ち出しという厳しい状況が続いたが、
徐々に引き合いが入り3、4年後には経営が軌道に乗る。
73年には年商15億円、従業員30人の会社になった。

「高度成長期に入り、大量生産や合理化のための省力化、
省人化へのニーズが産業界全体に高まったことが追い風になった」と、
ハードロック工業の若林社長は当時を振り返る。

「緩まないナット」とのキャッチフレーズで売っていたUナットだが、
ある顧客から「緩むぞ」とのクレームが入った。
掘削機などで激しい振動を与えたら、
わずかに緩んでしまった。
「人を喜ばせようと思って開発したナットで、
顧客を怒らせてしまった。
だったら本当に絶対に緩まないナットをこの手で作って見せようじゃないか」。
幼少の頃からの発明好きだった若林社長の闘志に火がついた。

大鳥居がヒント
ところが絶対に緩まないナットのアイデアが浮かばない。
若林社長は毎朝、自宅近くの住吉大社(大阪市住吉区)へ散歩に出かける。
大鳥居をくぐるとき、鳥居の両側にある柱と、
柱を横につなぐ貫(ぬき)とが
交差するところに楔が打ち込まれていることに気付いた。

帰宅後、早速ボルトとナットの間に楔を打ち込むと、
緩まないことが分かった。
ただ1本ずつ楔を打ち込むことは大量生産できず非現実的。
そこで上下2層構造のナットにすることを思いついた。

絶対に緩まないナットを開発した若林社長は、
Uナットの販売会社を協力者に無償で譲渡。
74年にハードロック工業を設立した。
その当時、阪神電気鉄道がUナットを
カーブレール内側の脱線防止ガードをレールに留めるために使っていた。

数分間隔で列車が通るため、どうしても緩みが生じ、
深夜の保線作業で締め直していた。
そこで「1回でいいから」とお願いして、
絶対に緩まないナットを付けてもらったところ、
3カ月たっても全く緩まなかった。
この実績を基に、関西の大手私鉄に拡販、受注を得た。
人件費の削減と安全性の向上につながったことが評価された。

勢いに乗り、76年、旧日本国有鉄道に売り込んだものの、
「そんなに緩まないのなら保線区員の仕事がなくなる」と断られた。
87年の国鉄民営化とJR発足。早速、
若林社長はJR東海の本社を訪れ、
絶対に緩まないナットの採用を呼びかけた。

JR東海は当初、防音壁を留めるためのナットとして採用した。
振動が大きく、市販のナットではすぐに緩んでしまい、
防音壁が外れる可能性があったためだ。
その後、車体にも使われるようになった。

JR東海では100万キロを走行したら、
全てのナットを交換することにしている。
東京-新大阪が約500キロあり、
3~5年ほどで100万キロに達する。完全な消耗品だ。
金属疲労による事故を防ぐためだが、
JR東海からは「ハードロック工業以外のナットは使えない」との評価を得る。
その信頼度の高さは新幹線に限らず、
明石海峡大橋や東京スカイツリーにも採用されたことからもうかがえる。
極限までに安全、安心を求める鉄道の世界。
その世界が日本の中小企業の
ものづくり力を高めてきたことは間違いない。
(松村信仁)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150510-00000000-fsi-bus_all

授業では、ことあるごとに「イノベーション」
について言及していますが「新幹線」自体がイノベーションと考えていました。
「新幹線」を支える技術や運行・運用のシステム(信号技術など)、
一連の技術をもってイノベーションと見るべきでしょう。



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「グローカル」時代に求められるUターン転職

2015年05月30日 10時39分56秒 | キャリア支援
故郷回帰願望?「グローカル」時代に求められるUターン転職
JIJICO
2015年5月9日(土)14:00
働き方が多様化する中、「若年層のUターン転職」が話題


写真:イメージ

兵庫県は地域へのUターン就職を支援するため、
面接の際に企業が支給する旅費の半額負担を始めるそうです。
神戸新聞の報道によれば、
「東京一極集中の是正や人口の社会増を促すための対策の一環」で、
「同様の措置を取る企業が増えれば、
学生らにも就職先の選択の幅が広がるメリットがある」としています。

終身雇用・年功序列が過去のものとなりつつある現在、
働き方は多様化し、「若年層のUターン転職」が
兵庫県のみならず日本全国で話題を集めています。
一般的にUターン転職とは、
「地方で生まれ、大学入学などで都会に出てきて、
都会で就職。その後、再び出身地へ戻り、
地方の企業に転職する」ことです。
そこで、Uターン転職におけるメリットとデメリットについて考えてみます。

正社員になりやすく生活環境が充実するが、年収が下がる傾向に
メリット
・正社員になりやすい
(都会で非正規のまま過ごすよりも、その後のキャリアデザインを構築しやすいでしょう)
・地方の方が生活環境の充実を図ることができる
(実家に戻った場合、住み慣れた気候風土は、生活する上で癒やしにもなります)
・都心と比べて自然が豊富
・地域との密着度が高い
(近隣住民と触れ合う機会が多く、コミュニケーション度も自然と高くなります)
・都心部に比較すると物価が総じて安い


デメリット
・転職する先の職種が限られている
・年収が下がる傾向にある
・新たに地域での人間関係を構築しなくてはならない
・地域特有の慣習に慣れていく必要がある


グローカルが叫ばれる時代だからこそ、Uターン転職は求められる
Uターン転職を考えるきっかけには、故郷への回帰願望が挙げられます。
「同じ働くなら、愛着ある地元へ貢献したい」
という思いがあれば、Uターン転職は良い選択肢となるでしょう。
高齢化が進む中、迎える地元側からも、
若年層が増えることは歓迎されるはずです。
グローカル(「地球規模の視野で考え、地域視点で行動する」という考え方)
が叫ばれる時代だからこそ、
Uターン転職は求められているのです。

ただし、上記のデメリットもきちんと捉え、
実行に移すことが肝要です。
Uターンしてから「こんなはずではなかった」ということのないように、
情報収集は必須です。現在は、
Uターン転職情報サイトや支援機関も増えています。
自身のキャリアデザインのためにも活用し、
より望ましい働き方、人生設計を考えてみましょう。

(角野 裕美/キャリアカウンセラー)

http://news.goo.ne.jp/article/jijico/bizskills/jijico-17590.html

このニュースの関連情報
若者のUターン転職、メリット・デメリット
http://jijico.mbp-japan.com/2014/12/14/articles14027.html
派遣労働の見直しによる労働環境の変化
「就業中に隠れて転職活動」は違反?
http://jijico.mbp-japan.com/2014/03/25/articles8511.html



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「女性はマルチタスクが得意」は誤解

2015年05月29日 11時36分39秒 | キャリア支援
「女性はマルチタスクが得意」は誤解だった
たまった仕事をテキパキ片付けるには?

東洋経済オンライン
2015年5月11日(月)06:00
(東洋経済オンライン)
第2回=「女性のほうが優秀」と言われるのはナゼ?


写真:イメージ

こんにちは。はたらく女性のかていきょうし、
タブタカヒロです。ゴールデンウィークを楽しく過ごし、
リフレッシュして職場に戻ると……、
仕事が山積み(涙)ということ、よくありませんか。

「はたらく女性のかていきょうし」として
数多くの女性のコンサルティングを行っていると、
たまった仕事をなんとかしたいというご相談が少なからずあります。
お話を伺っていると、仕事がたまる原因はだいたい共通しています。
それは同時に2つ以上の仕事(=マルチタスク)
をして仕事をこなそうとしていることです。

人は誰でもマルチタスクが苦手
「仕事がデキる人は、マルチタスクができる人」
「女性はマルチタスクが得意」
なんてよく言われませんか。

「私もマルチタスクで仕事を上手にさばかなくちゃ!」
と意気込んで、複数の仕事に同時に取り掛かってしまうと
余計に仕事がたまってしまいます。実は、
よく使われる「マルチタスク」という言葉には
大きな誤解が含まれているようです。

そもそもマルチタスクとは、
コンピュータが同時に2つ以上の処理をすること。
これを人に当てはめて
「デキる人はマルチタスク」説
が広まりました。でも人とコンピュータは違います。
人はタスクをこなすのに意識の集中が必要ですが、
マルチタスクでは集中力が分散してしまいます。
デキてもデキなくても、
人はマルチタスクが苦手なのです。

よく女性が得意と言われている「マルチタスク」とは、
料理中に子どもが泣きだすとか、
同時に複数のことが起きても上手に対応できる能力のこと。
状況に応じた対応や判断はマネジメントの能力で、
決められた仕事を集中して実行するタスクとは直接関係ありません。
実は女性はマネジメントは得意ですが、
マルチタスクは苦手なのです。
きちんとマルチタスクがこなせなくてもいいんです。

仕事がデキる女性は○○上手
では、たまった仕事はどう片付けたらいいのでしょうか。
たまった仕事を片付けるのが得意な女性には共通点があります。
それはお掃除も得意であること。
お掃除と同じ方法で仕事をテキパキ片付けているのです。
「デキる女はマルチタスク」ではなくて、
「デキる女はお掃除上手」です。
仕事を片付ける「お掃除上手のお作法」は次の3つです。

一つひとつこなす:お掃除はシングルタスクが基本。
一つひとつこなすことが効率化につながります。
小分けにする:収納の基本は小分けにすること。
まぜこぜ収納はNGです。
同じテーマに分けてすっきり整理します。
整理ルールを決める:自分なりの”整理ルール”を決めて、
たまらないように仕組み化します。

具体的にどうお掃除するのか、
日常のシーンに当てはめて考えてみましょう。
まず手始めに、机の上の片付けから始めましょう。
仕事がたまっているときの机は、
資料やらメモやらスマホやらがとっちらかっていませんか。
机の上をすっきり片付けて、
仕事を効率よく進めるための
「お掃除上手のお作法」をご紹介します。

机の上を片付けるお作法
一つひとつこなす
今、取り掛かっているタスクの資料だけを机の上に出します。
それ以外の資料は、引き出しやキャビネットにしまいます。
目の前のタスクに集中し、済んだらその資料はしまう。
一つひとつこなすほうが生産性が上がります。

小分けにする
資料は取り出しやすいように、時期や顧客、
業務やイベントなどテーマ別にクリアファイルに小分けして整理する。
色つきクリアファイルを使うと、
見分けやすいし整理が楽しくなります。

しまう時間を決める
目の前で作業しているそれぞれの資料は、
机の中にしまう時間を決めましょう。
一つひとつの作業は終わりの時間を決めることです。
ひとつの作業にこだわりすぎると、
どんどん仕事がたまって今度は引き出しがあふれてしまいます。

次はeメール。
仕事がすぐにたまってしまう人は、
たいていメールボックスの中もぐちゃっとしています。
「お掃除上手のお作法」をeメールの処理に当てはめるとき、
ポイントはフォルダの使い方にあります。

ポイントはフォルダ管理
一つひとつこなす
eメールを1件ずつ処理するのではなく、
タスク単位にまとめます。
依頼や質問といったひとつの問い合わせからタスクがスタートし、
何回かメールをやりとりして対処したら終了です。
最初のメールでスタートするタスクをひとつの単位として管理すると、
片付けやすくなります。
ただしそのためには、メール1件に複数のことを書いたり、
返信メールに別件を書き足したりするのはNG。
どこまで対処したのかわからなくなり、
仕事がぐちゃっと山積みになる元凶となります。

小分けにする
最初の問い合わせメールとその返信などの関連メールを、
まとめて同じフォルダに移動すると便利です。
メールボックスがタスク単位に整理されるので、
自然とタスク管理ができます。
フォルダ名は「日付_案件名」にするのがオススメです。
メールソフトが案件フォルダを
日付順に並べてくれるのでタスクが見つけやすくなります。

整理ルールを決める
メールボックスに「済」フォルダを作ってください。
対応が終わった案件のフォルダは「済」へ移動します。
こうすると、メールソフトによって時間が経っても
「済」に移動していない古い案件を上に並べることができます。
処理漏れを防止できるので便利です。
では最後に、山積みのタスクをすっきり片付けるお作法です。

ToDoリストは仕事をためるだけ!
一つひとつこなす
ToDoリストや付箋を使ってタスク管理している人を多く見掛けますが、
私はお勧めしません。いつかやろうと思っていることを
箇条書きしただけで、いつやるかわからない。
結局、仕事がたまります。

タスクは何月何日の何時から何時でやるか、
自分のスケジュール帳にすべて落とし込むのが、
一つひとつこなすコツです。

それから、きっちり完成するまで続けるというやり方は、
お掃除上手のお作法には合いません。
完成度にこだわると、必要以上に時間がかかってしまい、
さらに仕事がたまってしまいます。
タスクは終了時間を決めて、
時間内にできるレベルで仕上げるというルールを決めれば、
集中が高まり品質もUPします。

小分けにする
タスクをAグループ(重要で急ぐ)、
Bグループ(重要じゃないけど急ぐ)、
Cグループ(重要だけど急がない)、
Dグループ(重要じゃないし急がない)の
4グループに分けるクセをつける。
いま何をやるべきか、やらなくていいのかわかりやすくなります。

整理ルールを決める
今日のタスクはAグループとBグループだけに絞って
スケジュール帳に書くルールにしましょう。
「CもDも気になるけど……今は気にしない」
という「割りきりルール」が必要です。

AグループとBグループに絞っても当日中に終わらないときは、
上司に掛け合い、社内の協力をあおぎましょう。
タスクを落とし込んだスケジュール帳を見せて相談すれば、
納得してタスクを調整してくれますよ。

今回は仕事を片付ける、
お掃除上手のお作法をご紹介しました。
お掃除のほかにも、お料理のお作法やお化粧のお作法も
仕事に活かすことができるんですよ。
女性が普段使うお作法って、
とても洗練されたメソッドだと思います。

マルチタスクなんかできなくていい。
もっと身近なお作法でお仕事上手になる道も
あるということが伝わったらうれしいです。

http://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/bizskills/toyokeizai-69018.html

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リーダーシップとは

2015年05月28日 14時02分49秒 | キャリア支援
リーダーに必要なのは「認識のズレ」を乗り越える力
JBpress
2015年5月8日(金)07:00



ここに2枚の絵がある
(米国の心理学誌 "Journal of Personality and Social Psychology"より )。
どちらの絵にも、5人のメンバーから成る
チームの様子が描かれているのだが、
2つの絵には微妙な違いがある。

1枚目の絵には、5人のメンバー全てが
にっこり笑っている様子が描かれているのに対して、
2枚目の絵では、5人のうちリーダーだけが
笑みを浮かべており、残りの4人の表情は
どちらかといえば不満げだ。

さてあなたは、どちらの方がより「良いチーム」だと思うだろうか。
あなたの周りの仲間たちは、
どちらをより「良いチーム」だと思うだろうか。

・・・・・・あなたの予想通り(そしておそらく、あなた自身の答えと同じように)、
多くの日本人が「1枚目」と答える。
メンバーみんなが満足してこそ
「良いチーム」ということなのだろう。

ところが興味深いことに、アメリカ人にこの質問をすると、
しばしば「2枚目」という答えが返ってくる。
チームの良し悪しは、チームメンバー全員や満足すること、
あるいはチーム全員の満足の総量ではなく、
リーダーの満足によって計られるべきだ、というのだ。

このエピソードを聞いた多くの日本人が困惑した様子をみせる。
1つは、「2枚目」の方が「良いチーム」だなんて
「全く理解できない!」という意味で。
そしてもう1つは、「良いチームとはどのようなものか」
といった素朴な問題においてすら、
私たちはアメリカ人と分かり合うことが
できないのか・・・という意味で。

こうした認識のズレは、ビジネスがグローバル化すればするほど
深刻な問題となってくる。
「他者を通じて物事を成し遂げる
(getting things done through others)」というのが、
経営学のテキストに書かれた「マネジメント」の定義なのだが、
そもそも「良いチーム」や「良い仕事」に関する認識が異なる人たちを、
私たちはどのようにマネジメントすることができるのだろう。
グローバルな文脈にあって、
リーダーに求められる役割とは一体どのようなものになるのだろう。

世界トップクラスの研究者たちとリーダーシップについて議論
こうした問題をめぐって、
世界のトップクラスの研究者と
日本のビジネスリーダーが議論する
「第1回YNUビジネス国際会議」(横浜国立大学経営学部主催)が、
4月26日、同大学教育文化ホール(神奈川県横浜市)にて開催された。

リーダーシップ研究の世界的権威である
英エクセター大学のジョナサン・ゴスリン氏、
チームやネットワークの分野で
現在注目されている米ルーズベルト大学の村瀬俊朗氏を迎え、
また横浜国立大学からは組織論や
組織間関係論の第一人者である山倉健嗣氏が登壇し、
百数十名のビジネスリーダー/ビジネスパーソンへの話題提供が行われたのち、
登壇者と参加者との間で英語と日本語が飛び交う活発な議論が繰り広げられた。

日本のビジネスリーダーがグローバルな文脈で活躍するためには、
(1)リーダーが抱えるさまざまな機会や制約に注目すること、とりわけ
(2)自分が獲得し行使できる「パワー」に対して敏感になること、そして
(3)メンバー間の認識の共有を迅速かつ効果的に行うことが重要だ、
というのが、国際会議の場でトップクラスの研究者たちが提示した回答だ。

以下では国際会議での具体的な議論の一部を紹介したい。
まず3人の登壇者の主張の概要である。

「リーダーは文化や社会、制約に埋め込まれている」(山倉氏)
最初に登壇した山倉健嗣氏(横浜国立大学)からは、
これまでのリーダーシップ研究の俯瞰と課題の整理が行われた。
リーダーシップは、第2次世界大戦以前から長きにわたって研究が蓄積されてきた、
経営学の古典的なトピックだ。
すでに数え切れないくらい多くの研究者たちが
「優れたリーダー」の姿を追い求め、
数え切れないほどの研究を蓄積してきた。

ただ「優れたリーダー」に共通するエッセンスを抽出するこれまでの研究では、
現実のリーダーたちが直面するさまざまな問題が切り捨てられてきた。
たとえば日本国内で優れたリーダーであった人が欧米に行くと突然うまくいかなくなったり、
反対に日本では鳴かず飛ばずだったリーダーが、
海外に出た瞬間に輝き出すといったことがよくあるが、
既存のリーダーシップ論ではこうした問題をうまく説明できないのだ。

この問題は、そのリーダーがどのような文化、
どのような社会、どのような機会や制約に「埋め込まれている」のか、
ということを考えて初めて理解することができる。
この「埋め込まれたリーダーシップ」への注目こそが、
今後ますます必要になると山倉氏は主張する。

「パワーはリーダーシップの必須条件」(ゴスリン氏)
これを受けて、リーダーシップとパワーの関係にフォーカスしたのが、
ジョナサン・ゴスリン氏(英エクセター大学)だ。
ゴスリン氏は、リーダーは誰もが等しくパワーを持っているわけではなく、
リーダーシップの発揮においては
「パワーのモード」(さまざまなモードがありえるパワーのなかで、
リーダーはどのようなパワーを、
どのように獲得し、行使するか)への注目が重要であると指摘する。

氏によれば、健全なリーダーシップはパワーを必要とするのであり、
リーダーには、いかなるパワーのモードにもとづいて、
いかなるリーダーシップを発揮するのかという視点が必要になる。

具体的に、組織の中でリーダーが獲得し、
行使できるパワーのモードは以下の8つに分類される。
(1)継承(親族から経営権を継承する場合のように、継承されることでパワーを得ること)
(2)能力(優れた能力をもっているがためにパワーを得ること)
(3)パトロネージ(支持者を得ることでパワーを得ること)
(4)掌握(暴力など断固とした力によってパワーを得ること)
(5)ポピュリズム(大衆を味方につけることでパワーを得ること)
(6)戦術・細工(駆け引きや種々の工作によってパワーを得ること)
(7)カリスマ(天賦の才やカリスマ性によってパワーを得ること)
(8)恐怖・脅し(他者を恐怖や不安に陥れることでパワーを得ること)

「グローバルな文脈で求められるのは認識の共有」(村瀬氏)
最後に、心理学の観点から、リーダーシップの根源的な問題に焦点化したのが
村瀬俊朗氏(米ルーズベルト大学助教授)だ。

村瀬氏によれば、集団の構成員が、同じ教育を受け、
同じ社会で育った日本人のみであるような時代にあっては、
リーダーに求められる役割は極めて限定的であった。
リーダーが多くを語らずとも、
メンバーは組織全体の方針や自らの役割を理解しているだろうから、
いわば「なんとなく分かり合えている」
ということに寄りかかることができたわけだ。

しかし集団内に多様なメンバーが参加し、
多様な価値観、多様な文化的背景が持ち込まれるようになると、
この「なんとなく分かり合えている」ということを期待することができなくなる。
冒頭で紹介したように、
「良いチームとはどのようなものか」といった極めて素朴な問題においてすら、
メンバー間の共通認識を生み出すのは難しい。

こうした状況下でリーダーに求められるのが、
集団の中での各個人の役割、戦略、
仕事のやり方などに関する認識の共有を図ることだ、
と村瀬氏は主張する。

リーダーシップ研究の最先端では、
優れたリーダーはチーム内における認識の共有を促しており、
その具体的な手段としては、
(1)リーダー自身が確固たるアイデンティティを確立すること、
(2)自分自身の考えを適切に表現する表現者になること、そして
(3)集団内の中核的メンバーとの間に、まず相互理解を高めること、
などが有効であることが示されているという。

議論は、まさに今始まったばかり
最後に、会場にいたビジネスリーダーから投げかけられた
「日本と欧米のリーダーシップスタイルは大分違うように見えるが、どう思うか?」
という質問に対するゴスリン氏と村瀬氏の返答を引用して終わりたい。

ゴスリン氏 「分からない。ただ、物事を処理するやり方に関して、
日本とアメリカ、そしてイギリスの間には大きな違いがあるように思う。
リーダーシップのあり方を考える際には、
物事を処理するやり方の違いに関する、
深くて丁寧な洞察が必要になるだろう」

村瀬氏 「『日本人は集団で物事をするのが上手い』とよく言われるが、
より正確に言えば、『日本人は日本人同士の集団で物事をするのが上手い』なのだろう。
『なんとなく分かり合えている』人たちとしか
働いてこなかったこれまでの日本においては、
そもそもリーダーシップなど存在したのだろうか。
日本のリーダーたちがリーダーシップの問題に直面するのは、
グローバル化が進行するまさにこれからなのではないだろうか」

「リーダーシップをめぐる研究者とビジネスリーダーとの対話は、
今まさに始まったところである」という
森田洋・経営学部長のメッセージとともに、
2時間30分にわたる白熱した国際会議は終了した。 

そう、対話は今まさに始まったところである。

http://news.goo.ne.jp/article/jbpress/bizskills/jbpress-43714.html

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トヨタの危機感

2015年05月28日 10時25分13秒 | 学習支援・研究
日本初の純利益2兆円突破! それでもトヨタの危機感
05月25日 15:21
プレジデントオンライン


豊田章男・トヨタ自動車社長
(プレジデントオンライン)
PRESIDENT Online スペシャル 掲載


チャレンジしなければ成長が止まる
「これからの経営テーマは、チャレンジし続けるということ。
効果が出ないときもあるかもしれないが、
チャレンジしなくなれば必ず成長は止まる。
結果が出る出ないではなく、
チャレンジし続ける、その実行段階が始まった」

トヨタ自動車の豊田章男社長は、
5月8日に開いた決算発表会見の席上でこう強調し、
「意思ある踊り場から実践する段階に移ってきた」と宣言した。

ちょうど1年前、豊田社長は2014年度を
「意思ある踊り場」と位置づけ、量を追わずに質を高め、
将来の成長に向けた足場固めを優先する方針を打ち出した。
しかし、2014年度の業績は“踊り場”どころか、
本業の儲けを示す営業利益が前年度比20.0%増の2兆7,505億円、
純利益は同19.2%増の2兆1,733億円とともに過去最高。
円安の追い風があったものの、純利益については
日本企業として初めて2兆円を突破した。

それだけに、豊田社長がどんな発言をするのか注目されていた。
その口から出てきたのは“最高益”という言葉ではなく、
むしろ危機感だった。そして、
何度も「チャレンジ」という言葉を口にした。

「トヨタでは、打席に立って1割しか打てないなら、
ゼロ打数ゼロ安打が評価された。
仮にヒットが打てなくても
バッターボックスに立った人が評価される会社にしたい。
チャレンジし続ける人材を育成することが
自分の一番大切な仕事だと考えている」

今年は大きな分岐点という理由
かつてトヨタにも「チャレンジ」という言葉をよく口にした経営者がいた。
それは奥田碩元社長だ。1995年8月に社長に就任するや否や、
閉塞感に陥っていた社内に向かって
「何もしないことが一番悪いことだ」と
新しいことにチャレンジすることを訴え、
社内改革を進めた。その結果、
社内の雰囲気は徐々に変わり、会社も大きく発展した。

今回はその時以上に会社が発展する可能性があると言っていいかもしれない。
なにしろ、創業家社長ということで、求心力があり、
社員の間で豊田社長を盛り立てようという意識も強いからだ。

その一つとも言えるのが
「もっといいクルマをつくろうよ」ということだ。
これは豊田社長が社長就任以来言っていることで、
今や社内の隅々にまで浸透している。
その結果、開発部門だけでなく、
さまざまな部署でいいクルマづくりについて考えるようになり、
いろいろな提案が出るようになったという。

そして、今年後半にはその思いを基本にしたTNGA
(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)
という新しい開発手法を用いた第一弾のクルマが投入される。
「20年頃には世界の半分がTNGA車に切り替わる」と豊田社長。

一方、製造現場である工場では、
「もっといい工場づくり」が着々と進められてきた。
各工程でさまざまな改革が行われ、
その数は数え切れないほどだそうだが、端的に言うと、
工場新設に必要な初期投資を4割減らすことができるという。
今後建設されるメキシコ新工場や中国新ラインでは、
「もっといい工場づくり」で培った改革がふんだんに活かされる予定だ。

トヨタは2015年度の営業利益を2兆8,000億円(前年度比1.8%増)
と見込んでいるが、TNGAを活かした生産・販売の拡大が想定を上回れば、
3兆円台も夢ではないだろう。しかし、
豊田社長は「今年は持続的成長に向けて踏み出すのか、
これまで積み重ねた努力にもかかわらず元に戻るのか、大きな分岐点」と
一切浮かれた様子を見せない。
その辺りがトヨタの強さの秘密と言えるかもしれない。

(ジャーナリスト 山田清志=文)

http://news.goo.ne.jp/article/president/bizskills/president_15302.html

授業では再三、トヨタ史上初の最高営業利益につて取り上げています。
次のページも参照ください。

5月11日の授業ページ
http://blog.goo.ne.jp/mirukikukaku/e/8d562564e0883aeda5cf91c66ccdbb26
12日授業
http://blog.goo.ne.jp/mirukikukaku/e/000e703858f7e29dc5becbfe23de6241
5月18日の授業ページ
http://blog.goo.ne.jp/mirukikukaku/e/130add574bf588ce80548740e0db74c1



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