日豪EPA合意 「EPA」「FTA」「TPP」の違いって何?
THE PAGE
2014年4月17日(木)18時37分配信
オーストラリアとのEPA(経済連携協定)が
2007年から7年越しの交渉を経て、4月7日に決着しました。
日本はオーストラリア産の牛肉にかける関税を現行の38.5%から
段階的に引き下げることで合意。
冷凍牛肉は18年かけて19.5%、冷蔵牛肉は15年かけて23.5%とするほか、
ナチュラルチーズの一定枠や飼料用の小麦を無税にし、
ブルーチーズの関税も10年かけて20%引き下げます。
【図表】牛肉輸入量の4割を占めるオーストラリア
[図表]日本のFTA・EPAの現状(2013年7月現在、出所:外務省)
オーストラリアは中型・小型の日本車と機械類・家電製品の関税を即時撤廃し、
大型車の関税も3年かけてなくすことに決定しました。
鉄鋼の関税も5年以内に撤廃します。
日豪EPAの効果は?
日豪EPAは日本とオーストラリアの連携をより緊密なものにするだけでなく、
オージービーフの日本への輸出が増えれば、
相対的にアメリカビーフのシェアは減るため、
長引くTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉で
アメリカに譲歩を促すひとつの材料になることも期待されています。
さて、海外との貿易協定ではEPAやTPPのほかにFTA(自由貿易協定)という言い方もよく目にします。
どれも貿易に関係する3文字の英語略称で混乱しやすいため、
どんな関係があるのか、整理してみましょう。
GATTが発展的解消してWTOに
第二次大戦後、西側諸国は貿易を自由化して経済を活発にするため、
1948年にGATT(関税貿易一般協定)を発足させました。
GATTは東西冷戦の終結後、発展的に解消されて、
1995年にWTO(世界貿易機関)が設立され、
自由貿易振興の中心的機関となりました。
しかし、加盟国の増加とともに先進国と新興国や開発途上国の利害対立が目立ち、
2001年に始まったドーハ・ラウンド(新多角的貿易交渉)は
暗礁に乗り上げて、現在に至っています。現在の加盟国・地域は計159。
すべての加盟国の了解を得て意思決定を行う方式なので、
もはや合意は不可能に近く、サミットでG8がWTO尊重の言明を出すことなどはあっても、
儀礼的なものに過ぎなくなっています。
機能不全のWTOを補完するFTAとEPA
WTOに替わって、重視されるようになったのがFTAです。
FTA は2か国以上の国や地域が、
お互いに関税などの貿易を制限する障壁を撤廃または削減することで、
モノやサービスの流通性を高める協定です。
通商によって資源、エネルギー、食料などの供給も安定し、
政治的な関係も強化されるメリットがあります。
FTAの発展型がEPAです。貿易を行うようになると、
相手国内への工場の建設や店舗の設置、
観光や留学などでの人の行き来も増えていきます。
そこで、EPAはFTAを柱に知的財産権の保護、投資、
人的交流など幅広い分野で連携して関係の強化を目指します。
ただし、過去に成立したFTAの多くが今では
貿易以外の経済協定を取り入れており、
また海外では内容的にはEPAであっても習慣的にFTAという呼び名が用いられることが多いため、
FTAとEPAの違いは明瞭なものではなくなっています。
TPPとFTA、EPAとの違いは?
FTAを多国間に拡大したものがTPPで、
環太平洋という広い地域での経済連携を目指す協定です。
対象も幅広く、環境、労働、電子商取引など新しい分野を含む
21分野で交渉が進められています。
「例外なき関税撤廃」が前提で、
原則としてすべての品目での関税撤廃を掲げています。
TPPもFTAのひとつであり、EPAでもあります。
ちなみに、EU(ヨーロッパ連合)もFTAでありEPAですが、
加盟国以外の国々に対して、
加盟国すべてが共通の関税をかけるところに特色があり、
このような地域経済統合を「関税同盟」といいます。
実はWTOでは「最恵国待遇の原則」といって、
加盟国の間で貿易を行う際、差別することを禁止しています。
世界の国々の多くはWTO加盟国ですから、
どの国にも同じ関税をかけないと「最恵国待遇の原則」に反するはずですが、
自由貿易地域は例外として認められています。
ある程度、国や地域の「数」を絞らないと、
現実には貿易協定を設置するのは難しいということなのでしょう。
(広沢大之助・社会科編集者)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140417-00000019-wordleaf-bus_all&p=1より
THE PAGE
2014年4月17日(木)18時37分配信
オーストラリアとのEPA(経済連携協定)が
2007年から7年越しの交渉を経て、4月7日に決着しました。
日本はオーストラリア産の牛肉にかける関税を現行の38.5%から
段階的に引き下げることで合意。
冷凍牛肉は18年かけて19.5%、冷蔵牛肉は15年かけて23.5%とするほか、
ナチュラルチーズの一定枠や飼料用の小麦を無税にし、
ブルーチーズの関税も10年かけて20%引き下げます。
【図表】牛肉輸入量の4割を占めるオーストラリア
[図表]日本のFTA・EPAの現状(2013年7月現在、出所:外務省)
オーストラリアは中型・小型の日本車と機械類・家電製品の関税を即時撤廃し、
大型車の関税も3年かけてなくすことに決定しました。
鉄鋼の関税も5年以内に撤廃します。
日豪EPAの効果は?
日豪EPAは日本とオーストラリアの連携をより緊密なものにするだけでなく、
オージービーフの日本への輸出が増えれば、
相対的にアメリカビーフのシェアは減るため、
長引くTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉で
アメリカに譲歩を促すひとつの材料になることも期待されています。
さて、海外との貿易協定ではEPAやTPPのほかにFTA(自由貿易協定)という言い方もよく目にします。
どれも貿易に関係する3文字の英語略称で混乱しやすいため、
どんな関係があるのか、整理してみましょう。
GATTが発展的解消してWTOに
第二次大戦後、西側諸国は貿易を自由化して経済を活発にするため、
1948年にGATT(関税貿易一般協定)を発足させました。
GATTは東西冷戦の終結後、発展的に解消されて、
1995年にWTO(世界貿易機関)が設立され、
自由貿易振興の中心的機関となりました。
しかし、加盟国の増加とともに先進国と新興国や開発途上国の利害対立が目立ち、
2001年に始まったドーハ・ラウンド(新多角的貿易交渉)は
暗礁に乗り上げて、現在に至っています。現在の加盟国・地域は計159。
すべての加盟国の了解を得て意思決定を行う方式なので、
もはや合意は不可能に近く、サミットでG8がWTO尊重の言明を出すことなどはあっても、
儀礼的なものに過ぎなくなっています。
機能不全のWTOを補完するFTAとEPA
WTOに替わって、重視されるようになったのがFTAです。
FTA は2か国以上の国や地域が、
お互いに関税などの貿易を制限する障壁を撤廃または削減することで、
モノやサービスの流通性を高める協定です。
通商によって資源、エネルギー、食料などの供給も安定し、
政治的な関係も強化されるメリットがあります。
FTAの発展型がEPAです。貿易を行うようになると、
相手国内への工場の建設や店舗の設置、
観光や留学などでの人の行き来も増えていきます。
そこで、EPAはFTAを柱に知的財産権の保護、投資、
人的交流など幅広い分野で連携して関係の強化を目指します。
ただし、過去に成立したFTAの多くが今では
貿易以外の経済協定を取り入れており、
また海外では内容的にはEPAであっても習慣的にFTAという呼び名が用いられることが多いため、
FTAとEPAの違いは明瞭なものではなくなっています。
TPPとFTA、EPAとの違いは?
FTAを多国間に拡大したものがTPPで、
環太平洋という広い地域での経済連携を目指す協定です。
対象も幅広く、環境、労働、電子商取引など新しい分野を含む
21分野で交渉が進められています。
「例外なき関税撤廃」が前提で、
原則としてすべての品目での関税撤廃を掲げています。
TPPもFTAのひとつであり、EPAでもあります。
ちなみに、EU(ヨーロッパ連合)もFTAでありEPAですが、
加盟国以外の国々に対して、
加盟国すべてが共通の関税をかけるところに特色があり、
このような地域経済統合を「関税同盟」といいます。
実はWTOでは「最恵国待遇の原則」といって、
加盟国の間で貿易を行う際、差別することを禁止しています。
世界の国々の多くはWTO加盟国ですから、
どの国にも同じ関税をかけないと「最恵国待遇の原則」に反するはずですが、
自由貿易地域は例外として認められています。
ある程度、国や地域の「数」を絞らないと、
現実には貿易協定を設置するのは難しいということなのでしょう。
(広沢大之助・社会科編集者)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140417-00000019-wordleaf-bus_all&p=1より