吉野家「値下げ」及ばず3四半期連続赤字
営業利益6割増計画に黄信号も
松浦 大 :東洋経済 記者
2013年07月05日
牛丼並盛り380円から280円への値下げ戦略は、
まだ効果が不十分――
牛丼業界大手、吉野家ホールディングスの今第1四半期(2013年3~5月期)は、
前期の第3四半期(12年9~11月期)以来、
3四半期連続の最終赤字に陥った。
「最悪だよ」――。
第1四半期決算説明会の場で、
吉野家ホールディングスのある幹部はそうつぶやいた。
嘆きたくなるのも無理はない。
同社が7月5日に発表した第1四半期決算は、
売上高が425億円(前年同期比6.6%増)、
営業利益が7.5億円の赤字(前年同期は3億円の黒字)、
純利益も4.9億円の赤字(同1.2億円の赤字)と、
惨澹たる内容だったからだ。
うどんやステーキは堅調だが、牛丼広告費などかさむ
吉野家ホールディングス傘下には
比較的堅調な子会社も含まれる。
第1四半期の3カ月分をみるかぎり、
讃岐うどんを直営とFCで展開する「はなまる」は、
商品改良やテレビ番組への露出により、
セグメント利益(営業利益に相当)が
2.6億円(前年同期比70%増)と大幅な増益。
ステーキのファミリーレストランを運営する「どん」も、
店舗改装や販促の実施が効き、
セグメント利益が
0.9億円の黒字(前年同期は100万円の赤字)と黒字転換を果たした。
一方で、売上高の半分を占める
肝心の牛丼「吉野家」(国内吉野家)が苦戦している。
吉野家は、4月18日に牛丼並盛りの価格を380円から280円に価格を改定。
その後も6月1日に「鰻丼」(並盛り680円)、
7月4日に「ねぎ塩ロース豚丼」、
「牛カルビ丼」(各480円)と次々に新商品を投入。
同日からはさらにビールフェアと称して中瓶(400円)と
缶ビール(320円)の価格を280円に期間限定で値下げを実施するなどして、
集客力の強化を図ってきた。
この結果、既存店売上高の前年同月比は、
3月の95%に対して、4月は111%、
5月は115%と2ケタの大幅増に転じた。
値下げ効果が期待したほど出ていない
ただ、「失ってきた顧客を取り戻すための施策」
(吉野家ホールディングスの松尾俊幸・グループ企画室長)が、
収益を圧迫した。
前年同期比では2倍となる10億円近い広告費を投入したことに加え、
急激な客数増に備えてアルバイトを重点的に配置したことによって、
販売管理費がかさんだ。
食材原価についても、
米国産の牛バラ肉価格は6月で1キログラム当たり620円程度と、
前年同月比で3割前後も下落したが、
この間進んだ急速な円安が重しとなった。
「食材の仕入れ価格の上昇は続いている」と松尾室長は説明する。
食材原価も販売管理費も膨らんで収益が圧迫されたことから、
第1四半期の国内吉野家事業のセグメント利益は6.6億円の赤字に終わり、
前年同期比では12億円近くも悪化した。
会社は営業利益6割増の期初計画を据え置いたが…
今回の第1四半期決算発表に当たって、
会社側は足元の食材価格高騰はあっても、
人件費や諸経費の見直しで通期の挽回は
十分可能だと判断。
今2014年2月期の売上高1,730億円(前期比5.1%増)、
営業利益30億円(同60%増)という、
期初計画を据え置いた。
この会社計画の前提となる国内吉野家の既存店売上高は、
通年ベースで113%となっている。
ただ、吉野家ホールディングスが同時に発表した
6月の既存店売上高は、前年同月比で111%。
3カ月連続での2ケタ成長は維持したものの、
通年の会社計画113%には届かず、
値下げ効果は期待したほどには出ていない。
米国産の牛バラ肉価格も1キログラム当たり600円前後の水準が続きそうで、
大きく下がる見通しにない。
大幅増益を目指す会社側の期初計画には、
現時点では下振れリスクもあるといえそうだ。
(撮影:大塚 一仁)
http://toyokeizai.net/articles/-/14650
営業利益6割増計画に黄信号も
松浦 大 :東洋経済 記者
2013年07月05日
牛丼並盛り380円から280円への値下げ戦略は、
まだ効果が不十分――
牛丼業界大手、吉野家ホールディングスの今第1四半期(2013年3~5月期)は、
前期の第3四半期(12年9~11月期)以来、
3四半期連続の最終赤字に陥った。
「最悪だよ」――。
第1四半期決算説明会の場で、
吉野家ホールディングスのある幹部はそうつぶやいた。
嘆きたくなるのも無理はない。
同社が7月5日に発表した第1四半期決算は、
売上高が425億円(前年同期比6.6%増)、
営業利益が7.5億円の赤字(前年同期は3億円の黒字)、
純利益も4.9億円の赤字(同1.2億円の赤字)と、
惨澹たる内容だったからだ。
うどんやステーキは堅調だが、牛丼広告費などかさむ
吉野家ホールディングス傘下には
比較的堅調な子会社も含まれる。
第1四半期の3カ月分をみるかぎり、
讃岐うどんを直営とFCで展開する「はなまる」は、
商品改良やテレビ番組への露出により、
セグメント利益(営業利益に相当)が
2.6億円(前年同期比70%増)と大幅な増益。
ステーキのファミリーレストランを運営する「どん」も、
店舗改装や販促の実施が効き、
セグメント利益が
0.9億円の黒字(前年同期は100万円の赤字)と黒字転換を果たした。
一方で、売上高の半分を占める
肝心の牛丼「吉野家」(国内吉野家)が苦戦している。
吉野家は、4月18日に牛丼並盛りの価格を380円から280円に価格を改定。
その後も6月1日に「鰻丼」(並盛り680円)、
7月4日に「ねぎ塩ロース豚丼」、
「牛カルビ丼」(各480円)と次々に新商品を投入。
同日からはさらにビールフェアと称して中瓶(400円)と
缶ビール(320円)の価格を280円に期間限定で値下げを実施するなどして、
集客力の強化を図ってきた。
この結果、既存店売上高の前年同月比は、
3月の95%に対して、4月は111%、
5月は115%と2ケタの大幅増に転じた。
値下げ効果が期待したほど出ていない
ただ、「失ってきた顧客を取り戻すための施策」
(吉野家ホールディングスの松尾俊幸・グループ企画室長)が、
収益を圧迫した。
前年同期比では2倍となる10億円近い広告費を投入したことに加え、
急激な客数増に備えてアルバイトを重点的に配置したことによって、
販売管理費がかさんだ。
食材原価についても、
米国産の牛バラ肉価格は6月で1キログラム当たり620円程度と、
前年同月比で3割前後も下落したが、
この間進んだ急速な円安が重しとなった。
「食材の仕入れ価格の上昇は続いている」と松尾室長は説明する。
食材原価も販売管理費も膨らんで収益が圧迫されたことから、
第1四半期の国内吉野家事業のセグメント利益は6.6億円の赤字に終わり、
前年同期比では12億円近くも悪化した。
会社は営業利益6割増の期初計画を据え置いたが…
今回の第1四半期決算発表に当たって、
会社側は足元の食材価格高騰はあっても、
人件費や諸経費の見直しで通期の挽回は
十分可能だと判断。
今2014年2月期の売上高1,730億円(前期比5.1%増)、
営業利益30億円(同60%増)という、
期初計画を据え置いた。
この会社計画の前提となる国内吉野家の既存店売上高は、
通年ベースで113%となっている。
ただ、吉野家ホールディングスが同時に発表した
6月の既存店売上高は、前年同月比で111%。
3カ月連続での2ケタ成長は維持したものの、
通年の会社計画113%には届かず、
値下げ効果は期待したほどには出ていない。
米国産の牛バラ肉価格も1キログラム当たり600円前後の水準が続きそうで、
大きく下がる見通しにない。
大幅増益を目指す会社側の期初計画には、
現時点では下振れリスクもあるといえそうだ。
(撮影:大塚 一仁)
http://toyokeizai.net/articles/-/14650