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『ある少年の告白』

2019年05月07日 | 映画(あ行)
『ある少年の告白』(原題:Boy Erased)
監督:ジョエル・エドガートン
出演:ルーカス・ヘッジズ,ニコール・キッドマン,ジョエル・エドガートン,
   ジョー・アルウィン,グザヴィエ・ドラン,ラッセル・クロウ他
 
TOHOシネマズ西宮にて。
182分の『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観た直後だったから、
集中力が持つかどうか心配でしたが、これも面白かった。
と言っても明るい気持ちには全然なれませんけれど。
 
原作はガラルド・コンリーの回顧録。
同性愛者であることは「病気」であると言われ、
その「治療」を目的とする矯正プログラムを受けた実体験を綴っています。
 
アメリカの田舎町に暮らす少年ジャレッド・イーモンズ。
父親は牧師で住民の人望厚く、母親は美しく優しい。
何不自由なく育つが、ガールフレンドとの交際になんとなく違和感がある。
 
大学生に入り、寮生活を始めたのをきっかけに彼女とは別れ、
同じ寮暮らしのヘンリーと親しくなる。
自分が同性愛者であることに気づきつつ認めることを恐れるジャレッドは、
ある日ヘンリーに強姦されそうに。
なんとか逃げたジャレッドに、ヘンリーは涙ながらに謝罪し、
過去に別の少年を強姦したことがあると打ち明ける。
 
自分もまちがいなくゲイ。しかしヘンリーとはもうつきあえない。
ヘンリーを避けていると、通報されることを恐れたのか、
大学のカウンセラーを名乗ってヘンリーが実家に電話を入れ、
「お宅の息子さんの性的指向に問題がある」と話す。
 
慌てた父親は町の長老に相談。その結果、矯正プログラムへの参加を提案される。
母親の涙を見るうち、これは病気だ、治さなければと感じたジャレッドは、
その提案を受け入れて施設に入るのだが……。

俳優ジョエル・エドガートンがメガホンを取り、
施設の指導員サイクス役で出演もしています。
 
終盤こそ、この施設が明らかにおかしいことがわかりますが、
最初はただの熱血指導員で、それなりに真面目に見えるのです。
ラッセル・クロウ演じる父親も、ニコール・キッドマン演じる母親も、
息子ジャレッドのことを深く愛していて、本当に心配している。
本人も自分が病気だと疑わず、両親のためにも治療したいと願う。
 
病気だ、そうではない、これは変えられないことだ。
心の動きを表情にするジャレッド役のルーカス・ヘッジズがめちゃめちゃよかった。
 
「私は神を愛している。神も私を愛している。それは間違いない。
 そして私は、息子を愛している。とても単純なこと。それが母親。
 でも、父親はちょっと複雑なの」。
矯正するなんてとんでもないことだと悟った母親の言葉。
父親だってそんなことはわかっているはずなのに、まず体面を気にしてしまう。
 
こんな施設が今なお存在し、何十万人という少年少女が入所している事実に呆然とします。

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