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『さよなら、アドルフ』

2014年01月24日 | 映画(さ行)
『さよなら、アドルフ』(原題:Lore)
監督:ケイト・ショートランド
出演:ザスキア・ローゼンダール,カイ・マリーナ,ネーレ・トゥレプス,
   ウルシーナ・ラルディ,ハンス=ヨヘン・ヴァークナー他

さばのゆ大学へ行く前にハシゴした映画の1本目。
来月いっぱいで閉館となる梅田ガーデンシネマにて、退会手続きをしがてら。
おそらく梅田で最も満員率の高い劇場ではないかと思うのですが、
劇場の経営にはそれだけではやっていけない事情がいろいろあるのでしょうね。

オーストラリア/ドイツ/イギリス作品で、
オーストラリアの女流監督によるブッカー賞最終候補作『暗闇のなかで』の映画化。
原題は“Lore”、主人公の名前です。
あいかわらず年齢層高めのガーデンシネマ、本作も満員でした。

1945年の春。ナチス親衛隊の高官を父に持つ14歳の少女ローレ。
ナチスドイツの勝利を信じて疑わなかった彼女は、
総統ヒトラーが亡くなったと母から聞かされ、ショックを受ける。
父は戻って来ず、母も出頭を余儀なくされ、ローレと幼い弟妹は取り残されてしまう。

もしものときには祖母を訪ねるようにと言われていたローレは、
妹のリーゼル、双子の弟ギュンターとユルゲン、
まだ授乳を必要としている赤ん坊のペーターを連れて、
はるか900km離れた祖母の家を目指して歩き始めるのだが……。

終戦直前、父親は田舎の一軒家へ家族を移しますが、
敗戦と同時に世間のナチスへの風向きは一変。
一軒家を提供してくれた家族も手のひらを返したように冷たくなり、
ひもじさに耐えられないギュンターが牛乳を盗んでとうとう追い出されます。

わずか14歳の少女が幼い弟妹を連れて歩こうとも、
出会う人びとは自分のことで手いっぱい。
優しく応対してもらえることはまずありません。
唯一気にかけてくれたのがユダヤ人だという青年トーマスでしたが、
誇り高いローレにとっては、ユダヤ人に助けられるなんてあり得ないこと。

いくら拒絶されようともトーマスはローレたちについて来ます。
これは別に彼女たちのことが心配だからではなく、
一緒にいれば、困った状況を切り抜けられるかもしれないから。
たとえば赤ん坊がいれば食糧を多めにもらえるし、
逆にトーマスの身分証明書によってローレたちが救われることも。
利害の一致を見出すと、険悪な雰囲気を漂わせながらも同行を認めるように。
だからと言って、お互いに感謝の意などは示しません。

ようやくたどり着いた祖母宅。
張りつめていた糸が切れるかのようなローレの振る舞いにはなんとなく納得。
おそらく彼女が精神的に解放されることはないのではないかと。
ずっと心に暗闇を抱えたまま生きて行ったでしょう。

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