夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『嘆きのピエタ』

2013年07月19日 | 映画(な行)
『嘆きのピエタ』(英題:Pieta)
監督:キム・ギドク
出演:チョ・ミンス,イ・ジョンジン,ウ・ギホン,カン・ウンジン,クォン・セイン他

久々の梅田ガーデンシネマで3本ハシゴ。1本目がこれです。

キム・ギドク監督の作品は、体力のあるときにしか観られません。
たいていが凄惨でバッドエンド、やるせなさでいっぱい。
残酷な場面が直接描写されることはほぼないのに、
直前のシーンや周囲を映し出したシーン、そこに響く声だけで非情が伝わるのも凄い。

生まれてすぐに親に捨てられ、天涯孤独の身で30年を生きてきたイ・ガンド。
消費者金融の冷酷な取り立て屋として日々を送り、
法外な利息を払えなくなった債務者のもとを訪れると、
生涯残るほどの重傷を負わせてその保険金で借金を返済させる。

そんなガンドの前に、ある日、チャン・ミソンと名乗る女が現れる。
彼女はガンドの母親であると言い、見捨てたことを必死に詫びる。
最初は彼女の話を信じられず、邪険に扱っていたガンドだが、
彼の部屋に居着いて子守歌を歌い、食事をつくり、微笑む彼女を見るうち、
母親としての無償の愛を受け入れるように。

やがてガンドはミソンが突然消えてしまうのではないかと不安に思いはじめる。
すると本当にミソンがいなくなり、ガンドに救いを求める電話が。
債務者のうちの誰かに拉致されたと疑い、ガンドはミソンを探すのだが……。

見せないことで、より悲惨に見せるのが上手い。勘弁してと言いたくなるほど。
指やら手やらを切断されるところは映らないのに目を覆いたくなるし、
母親の証しに食べてみろとガンドが差し出したものも映らないのに、
その前後のシーンと滴る血で、観る者は想像してしまいます。

ここからネタバレ。

これはミソンの復讐劇で、彼女はガンドのせいで息子を失った人物でした。
母親の愛を知らないガンドに、ありったけの母親の愛を知らしめたあと、
彼女はガンドからそれを奪い去るのです。

母親の愛を失ったガンドは打ちひしがれ、
最期はガンドのことを車で引きずって殺してやりたいと語っていた元債務者のもとへ。
夜明け前、自ら車の下に繋がれたガンドと、それを知らずに車を出発させる元債務者の妻。
このシーンもそのまま見せることはなく、
ただ車が血の筋をつけながら走ってゆくところを遠方から見せています。

ガンドのことを悪魔と呼ぶ債務者たち。
「借りた金を使い込んでおいてよく言うよ」と嘲笑うガンド。
殺されてもいい覚悟でガンドのもとにやってきたように見えたミソン。
ミソンが編んでいたセーターが実は自分のものではなかったと知るが、
寸足らずのそのセーターを着てミソンの遺体に添い寝するガンド。

一部、演技が大げさすぎると感じられたり、
このシチュエーションで起きひんわけないやろ~と思う場面があったりで、
これまでのギドク作品と比べて冷めて観てしまうところもありましたが、
それでもいろんなことを考えさせられ、心が折れます。(T_T)

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『コン・ティキ』 | トップ | 『スタンリーのお弁当箱』 »

映画(な行)」カテゴリの最新記事