夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『マダム・マロリーと魔法のスパイス』

2014年11月09日 | 映画(ま行)
『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(原題:The Hundred-Foot Journey)
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ヘレン・ミレン,オム・プリ,マニシュ・ダヤル,シャルロット・ルボン,ミシェル・ブラン,
   アミット・シャー,ディロン・ミトラ,アリア・パンディア,クレマン・シボニー他

日本シリーズにあぶれた後だったので、まずはスカッとする系を2本、
この日の締めくくりには、いちばん気になっていた本作で和みます。

いかにもディズニー配給作品らしい邦題がついていますが、
原題は“The Hundred-Foot Journey”で、「100フィートの旅」の意。
舞台となるフランス料理店とインド料理店の距離が100フィート(30メートル)。
鑑賞後にこの原題を思い出すと、なおさら幸せな気持ちになりました。

ムンバイでインド料理店を経営するカダム一家。
ハッサンは料理人としての多大な資質を持つ息子。
パパとママ、兄と姉妹に囲まれて、楽しい毎日を送っていた。
ところが火事に見舞われて、店とママを失ってしまう。

幸いそこそこの蓄えがあったパパは、子どもたちを連れてヨーロッパへ。
天国のママに相談しながら、自分たちが腰を落ち着けるのにふさわしい場所を探しているが、
そんな場所はなかなか見つからない。
おんぼろ車で寝泊まりしながら続ける旅に子どもたちが辟易していると、
南フランスに入ったところで、ついに車がエンコしてしまう。

困り果てた一家を助けてくれたのが通りすがりの女性マルグリット。
彼女は車を牽引して自らの家に一家を招待。
お腹がすいただろうと彼女が提供してくれた食事に一家は驚く。
採れたてのトマト、オリーブ、彼女が焼いたというパン。
何から何までとてつもなく美味しい。

その夜は近所の民宿に泊まることに。
パパはこっそり宿を抜け出すと、牽引中に気になっていた売り家へ向かう。
ハッサンがあとをつけ、たまらず声をかけると、
こここそが自分たちが暮らす場所、レストランを開く場所だとパパは言う。
家族の反対に聞く耳を持たず、とっとと契約を交わしてしまう。

しかし、その正面には、長年ミシュラン一つ星を保持するのフランス料理の名店が。
夫の亡きあと、店を守りつづける女性オーナー、マダム・マロリーは、
派手な電飾と騒々しいインド音楽に眉をひそめる。
長続きするわけがないと思いつつ、目の前でやられては無視することができない。
パパとマダム・マロリーの間に漂う険悪な雰囲気に一家はハラハラ。

マダム・マロリーの店の副シェフであるマルグリットは、
商売敵となったハッサンに何かと助言してくれる。
マルグリットからもらった本でフランス料理の基本ソースを勉強するハッサン。
ハッサンがつくったソースを一匙なめたマルグリットは、
彼が天才的な料理人であることを見抜くのだが……。

とてもとても素敵なお話です。
登場人物の誰もが魅力に溢れていて、しかしそこはディズニー。
小物ながらヒール役もちゃんといて、まぁこいつが本当に嫌な奴なのですが、
そういう奴にはきっちり天罰が下ります(笑)。

レストランが舞台なのに料理があまり美味しくなさそうな作品も多いなか、
本作のお料理はフランスもインドもどれもこれも美味しそう。
さまざまなスパイスの入った瓶にも惹かれます。

目をつけられた料理人にはすぐに引き抜きの声がかかり、
ハッサンも終盤パリのレストランからお呼びがかかります。
ここのイノベーティブ料理なるものは、工事現場かと思うような格好で料理。
もはやこうでなければ星は取れそうにないミシュランの格付けに物言いをつけたいのかも。

脚本は、『堕天使のパスポート』(2002)、『アメイジング・グレイス』(2006)、
『イースタン・プロミス』(2007)を書いたスティーヴン・ナイトで、
この人は『ハミングバード』(2012)の監督でもあります。
ジャンルは違えども、どの作品も移民や異国で生きる人の姿を描いていて、
本作も一見軽そうな物語ながら、移民問題について考えさせられます。

ラッセ・ハルストレム監督の作品はたま~に外れますが(笑)、たいていは○。
優しく温かく、本作は南フランスの景色もめちゃめちゃ綺麗でした。

“classicalな料理”って、古典的というか、「古くさい料理」というような、
今日では否定的な意味合いも含むのかなと思っていましたが、
語源は“class”、「品格のある」ということなんですねぇ。
言われてみればそうだけど、目からウロコでした。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『エクスペンダブルズ3 ワー... | トップ | 『聖者たちの食卓』 »

映画(ま行)」カテゴリの最新記事