『怒り』
監督:李相日
出演:渡辺謙,森山未來,松山ケンイチ,綾野剛,広瀬すず,佐久本宝,ピエール瀧,
三浦貴大,高畑充希,原日出子,池脇千鶴,宮崎あおい,妻夫木聡他
秋分の日。前日はタイ人夫妻と天満橋で晩ごはん。
この日はおそらくダンナだけがご夫妻のお相手をすることになるだろうと、
私はかねてから映画ハシゴ4本の計画を立てていました。
ところが話の流れで私もおつきあいすることに。
秋分の日の深夜便で帰国予定のご夫妻は、ラーメンを食べてみたいとおっしゃる。
ラーメン、どこが美味しいか私ら知らんねんなぁ。
天満橋のシェフに尋ねたら、何軒か教えてくださいました。
そのうちの1軒、外国人ウケもよさそうな“一蘭”に決定。
で、4本ハシゴの夢は破れたけれど、せめて1本は観たいやん。
というわけで、谷町四丁目のホテルロビーで待ち合わせ前に、
TOHOシネマズ梅田にて、何が何でも観たかった本作を鑑賞。
吉田修一、かなり好きです。
ヘヴィーだけれど、やるせなさと共に一筋の光も感じる。そんな小説が多いから。
原作読了後に“ブクログ”にUPしたレビューはこちら。
監督は同じく吉田修一原作の『悪人』(2010)の李相日。
世間の評判はもっぱら妻夫木聡と綾野剛の絡みのシーンだそうですが、
それも込みで(笑)、私はこの映画がめちゃめちゃ好きです。
八王子で起きた夫婦惨殺事件。風呂場には被害者の血による「怒」という文字。
直後に犯人は山神一也という男であることが判明するが、まんまと逃げられてしまう。
行方は杳として知れず、整形して逃亡生活を送っていると思われる。
捜査班の刑事・南條邦久(ピエール瀧)と北見壮介(三浦貴大)もやきもき。
1年後、千葉、東京、沖縄に素性の知れない3人の男が現れる。
いずれも身元不詳で山神と同年代、頬にほくろがあり、左利き。
千葉の港町に現れたのは田代哲也(松山ケンイチ)。
漁師の槇洋平(渡辺謙)は、家出して歌舞伎町にいた娘の愛子(宮崎あおい)を連れ戻す。
愛子が不在の間に町に住み着いたのが田代だった。
陰のある田代に愛子がしきりとかまう形で親しくなり、同棲したいと言い出す。
東京に現れたのは大西直人(綾野剛)。
ゲイの藤田優馬(妻夫木聡)はハッテン場となっているサウナで直人に出会う。
目的はただ一つのはずの場所に来ておいてシラケている直人を優馬は押し倒す。
激しく抵抗する直人だったが、事が終わると優馬についてくる。
沖縄の離島に現れたのは田中信吾(森山未來)。
ここへ引っ越してきたばかりの小宮山泉(広瀬すず)は、
同級生の知念辰哉(佐久本宝)に頼んで離れ小島へ舟を出してもらう。
ひとりで小島をうろついていると、廃墟の中から出てきたのが田中。
上下巻のボリュームの原作をどのように2時間余りにまとめたのかと思ったら、
李監督、巧い、あっぱれです。
原作で不要だったとは言えないけれど、たとえば優馬の兄夫婦とか、
男にだらしないせいでひとつ所に居られない泉の母親のことだとか、
映画化に際して無くても話を進められる人物や件(くだり)はバッサリあるいは簡単に。
配役を知ったときにビジュアルがちがいすぎると感じた愛子役の宮崎あおい。
原作では白痴美ではなくて白痴に思われた、ぽっちゃりを超えてデブの愛子。
それがなぜに宮﨑あおいかとビジュアル重視の映画に苦笑いしていましたが、
久々にステレオタイプでない彼女を見た気がします。絶妙。
そして冒頭でも書いたように、心が打ち震えたのは妻夫木聡。
この人の涙をこらえる姿、たまらん。
本作のためにしばらく一緒に暮らしてみたという妻夫木くんと綾野剛。
ほんまにカップルに見えます。
ほかのキャストもみんな上手い。それぞれビタッとハマっていました。
優馬の病床の母親役に原日出子、面倒見のいい愛子の従妹に池脇千鶴、
優馬にあらぬ疑いを抱かせるきっかけとなる直人の密会相手役・高畑充希も、
出番は少ないながらも凜とした印象を残します。
いったい誰が山神なのか。犯人当てのミステリーを求める人にはおそらく物足りない。
だっていちばん怪しく見える人が犯人だし、
犯人がわかったところで動機は釈然とせず、ただのサイコパスと言ってもいい。
それよりも、彼ら3人と共に過ごす人々の心の動きを感じたい。
信じるべき人を信じられず、信じてはいけない人を信じてしまう。
「信じてくれてありがとう」。
坂本龍一の音楽も絶妙のタイミングで涙の後押し。
あ、思い出してもまた泣きそう。
監督:李相日
出演:渡辺謙,森山未來,松山ケンイチ,綾野剛,広瀬すず,佐久本宝,ピエール瀧,
三浦貴大,高畑充希,原日出子,池脇千鶴,宮崎あおい,妻夫木聡他
秋分の日。前日はタイ人夫妻と天満橋で晩ごはん。
この日はおそらくダンナだけがご夫妻のお相手をすることになるだろうと、
私はかねてから映画ハシゴ4本の計画を立てていました。
ところが話の流れで私もおつきあいすることに。
秋分の日の深夜便で帰国予定のご夫妻は、ラーメンを食べてみたいとおっしゃる。
ラーメン、どこが美味しいか私ら知らんねんなぁ。
天満橋のシェフに尋ねたら、何軒か教えてくださいました。
そのうちの1軒、外国人ウケもよさそうな“一蘭”に決定。
で、4本ハシゴの夢は破れたけれど、せめて1本は観たいやん。
というわけで、谷町四丁目のホテルロビーで待ち合わせ前に、
TOHOシネマズ梅田にて、何が何でも観たかった本作を鑑賞。
吉田修一、かなり好きです。
ヘヴィーだけれど、やるせなさと共に一筋の光も感じる。そんな小説が多いから。
原作読了後に“ブクログ”にUPしたレビューはこちら。
監督は同じく吉田修一原作の『悪人』(2010)の李相日。
世間の評判はもっぱら妻夫木聡と綾野剛の絡みのシーンだそうですが、
それも込みで(笑)、私はこの映画がめちゃめちゃ好きです。
八王子で起きた夫婦惨殺事件。風呂場には被害者の血による「怒」という文字。
直後に犯人は山神一也という男であることが判明するが、まんまと逃げられてしまう。
行方は杳として知れず、整形して逃亡生活を送っていると思われる。
捜査班の刑事・南條邦久(ピエール瀧)と北見壮介(三浦貴大)もやきもき。
1年後、千葉、東京、沖縄に素性の知れない3人の男が現れる。
いずれも身元不詳で山神と同年代、頬にほくろがあり、左利き。
千葉の港町に現れたのは田代哲也(松山ケンイチ)。
漁師の槇洋平(渡辺謙)は、家出して歌舞伎町にいた娘の愛子(宮崎あおい)を連れ戻す。
愛子が不在の間に町に住み着いたのが田代だった。
陰のある田代に愛子がしきりとかまう形で親しくなり、同棲したいと言い出す。
東京に現れたのは大西直人(綾野剛)。
ゲイの藤田優馬(妻夫木聡)はハッテン場となっているサウナで直人に出会う。
目的はただ一つのはずの場所に来ておいてシラケている直人を優馬は押し倒す。
激しく抵抗する直人だったが、事が終わると優馬についてくる。
沖縄の離島に現れたのは田中信吾(森山未來)。
ここへ引っ越してきたばかりの小宮山泉(広瀬すず)は、
同級生の知念辰哉(佐久本宝)に頼んで離れ小島へ舟を出してもらう。
ひとりで小島をうろついていると、廃墟の中から出てきたのが田中。
上下巻のボリュームの原作をどのように2時間余りにまとめたのかと思ったら、
李監督、巧い、あっぱれです。
原作で不要だったとは言えないけれど、たとえば優馬の兄夫婦とか、
男にだらしないせいでひとつ所に居られない泉の母親のことだとか、
映画化に際して無くても話を進められる人物や件(くだり)はバッサリあるいは簡単に。
配役を知ったときにビジュアルがちがいすぎると感じた愛子役の宮崎あおい。
原作では白痴美ではなくて白痴に思われた、ぽっちゃりを超えてデブの愛子。
それがなぜに宮﨑あおいかとビジュアル重視の映画に苦笑いしていましたが、
久々にステレオタイプでない彼女を見た気がします。絶妙。
そして冒頭でも書いたように、心が打ち震えたのは妻夫木聡。
この人の涙をこらえる姿、たまらん。
本作のためにしばらく一緒に暮らしてみたという妻夫木くんと綾野剛。
ほんまにカップルに見えます。
ほかのキャストもみんな上手い。それぞれビタッとハマっていました。
優馬の病床の母親役に原日出子、面倒見のいい愛子の従妹に池脇千鶴、
優馬にあらぬ疑いを抱かせるきっかけとなる直人の密会相手役・高畑充希も、
出番は少ないながらも凜とした印象を残します。
いったい誰が山神なのか。犯人当てのミステリーを求める人にはおそらく物足りない。
だっていちばん怪しく見える人が犯人だし、
犯人がわかったところで動機は釈然とせず、ただのサイコパスと言ってもいい。
それよりも、彼ら3人と共に過ごす人々の心の動きを感じたい。
信じるべき人を信じられず、信じてはいけない人を信じてしまう。
「信じてくれてありがとう」。
坂本龍一の音楽も絶妙のタイミングで涙の後押し。
あ、思い出してもまた泣きそう。