『インスペクション ここで生きる』(原題:The Inspection)
監督:エレガンス・ブラットン
出演:ジェレミー・ポープ,ガブリエル・ユニオン,ラウル・カスティーヨ,
マコール・ロンバルディ,アーロン・ドミンゲス,ボキーム・ウッドバイン他
前述の『セフレの品格 決意』を観てから大阪ステーションシティシネマへ移動。
エレガンス・ブラットン監督自身の実体験を基にした自伝ドラマ。
本作がブラットン監督の長編デビュー作だそうですが、ものすごく見応えがあります。
25歳のフレンチは、ゲイであるがゆえに母親から見捨てられ、
ある日、海兵隊に入ろうと決意し、友人たちに別れを告げる。
入隊志願者の訓練所(いわゆるブートキャンプ)に入所したフレンチは、
鬼教官ロウズの虐めともいえるような厳しすぎる指導に耐えなければならないばかりか、
ゲイだということがバレてほかの志願者たちからも差別を受けて涙する。
それでも、フレンチをこっそり心配してくれる教官ロサレスや、
ロウズの指導に声を上げて反論する志願者などもいて、
なんとか約3ヶ月間の訓練を終えるまで辞めないと心に誓い……。
なんでこんな酷い虐めを我慢してまで海兵隊に入ろうとするのか不思議でした。
とっとと辞めりゃええやん。人格が破綻するよと。
ロウズに殺されかけて辞めようとしたフレンチにロサレスが問いかけたときに、
私の「なんで?」に対する答えがうっすら見えたように思いました。
なぜここに居るのか考えろ。
泣きながら考えるフレンチは、訥々と言葉を紡ぐ。
黒人のホームレスのオカマでも、海兵隊に入れば英雄になれる。
彼に限らず、自分の居場所を求めて志願する人が多いのですね。
これまで観てきたゲイの息子を持つ親が出てくる作品といえば、
父親はたいてい受け入れられない。でも母親は、息子がどうであれ愛す。
それが普通だと思っていました。
だけどフレンチの母親は、絶対に受け入れようとしない。
息子が母親との関係をあきらめないでいるのに、無理だと断じます。
修了式の日に参列はしたものの、海兵隊に入ればストレートになると信じて疑わない母親。
それは違うと息子から言われて、教官たちの前で「この子はゲイだ」と自らの息子を罵倒する。
そのとき、あんなに恐ろしかったロウズが「私は尋ねないし、彼も言う必要はない」と言う。
一緒に訓練を終えた者たちも、フレンチを仲間だと言ってかばいます。
派手すぎる感動シーンにしなかったおかげで、より感動的になりました。グッと来る。
こんなにも母親に拒絶された息子が海兵隊にカメラマンとして配属され、
今こうして映画監督になった。母親は今、何を想う。