夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『最初で最後のキス』

2018年08月19日 | 映画(さ行)
『最初で最後のキス』(原題:Un Bacio)
監督:イヴァン・コトロネーオ
出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー,ヴァレンティーナ・ロマーニ,レオナルド・パッツァーリ,
   トマス・トラバッキ,デニス・ファゾーロ,アレッサンドロ・スペルドゥーティ他

前述のバンクシーと後述の山の映画が目的だったので、
本作を観たのは、2本の間を埋めるのにちょうど時間がよかったからにほかなりません。
しかし終わってみればノーマークだった本作がいちばんよかった。

イヴァン・コトロネーオ監督はそもそもは脚本家。
『あしたのパスタはアルデンテ』(2010)や『はじまりは5つ星ホテルから』(2013)を書いた人。
監督としてはこれが3作目だそうですが、日本で公開されるのは初めて。
甘い青春ものを想像していたら、その思いを打ち砕かれました。

イタリア北部、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州にある町ウーディネ。
トリノの施設から里親に引き取られることになったロレンツォは、
16歳でゲイレディー・ガガに憧れ、スターを夢見る高校生。
しかし初日からオカマっぽい服装だとからかわれ、早くもいじめの対象に。

そんな彼に唯一声をかけたのは同級生の女子ブルー。
彼女は、人気者の先輩を彼氏に持つせいでほかの女子たちから妬まれ、
学校の壁の下品な落書きに名前を挙げられている。
「本物のゲイなの? ふりだけ?」と率直に尋ねるブルー。
ふたりはすぐに親しくなり、一緒に過ごすように。

ロレンツォが一目惚れしたのは、やはり同級生でバスケ部員のアントニオ。
優秀だった兄と比較され、馬鹿呼ばわりされているが、
無口なアントニオは言い返さないどころかほとんど口をきかない。
そのせいで知的障害があるとまで噂されている。

クラスの目立つグループの誕生会に招待されなかったロレンツォとブルー。
ふたりはアントニオも当然招待されていないはずだと考え、彼を呼び出す。
誘いの言葉に半信半疑で出かけたアントニオは、
いじめなどに屈せず好きなように振る舞うふたりと意気投合。
以来、3人は友情を育むのだが……。

16歳のブルーが40歳になったときの自分に宛てて書いた手紙の形で。

思春期の子どもたちにもいろいろな悩みがありますが、
本作で描かれるのは子どもたちのそれだけじゃない。
3人の親にもそれぞれ事情や迷いがあって、それが丁寧に描かれています。

いろいろあったけど楽しかったあの頃。
そういういい話で終わることを想定していたら、まさかの。

あのとき、ほかの言葉を選べなかったか。ほかの態度を取れなかったか。

レディー・ガガをはじめ、音楽もとてもよかった。
『50年後のボクたちは』(2016)と並んで、耳にも心にも残る1本でした。
タイトルの意味がわかるとき、とても切ない。

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