夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

エスプレッソコーヒーにバルサミコ酢。

2008年12月23日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
また話が横道にそれますけれど。

前述の『モンテーニュ通りのカフェ』は、
ちょっとした会話にくすぐられる作品でした。

“カフェ・ド・テアトル”を訪れるのは、
3日後に近くでおこなわれる演奏会、芝居、オークションの関係者です。

演奏会から本当は逃げ出したいと思っている男性ピアニストは、
クラシック音楽はまったくわからないというジェシカに、
『きらきら星変奏曲』の出だしを弾いて聴かせます。
「それなら知ってる!」とにっこり微笑むジェシカ。
「これはモーツァルトの曲だよ」とピアニスト。
ジェシカは申し訳なさそうに「無知でごめんなさい」。
すると、ピアニストは、「悪いのは僕たち演奏家のほうだ。
クラシックのコンサートは堅苦しいものだと、
君に思わせてしまっている」と逆に謝ります。
こんな会話があって、ラストに聴く彼の演奏は胸を打つものでした。

昼メロのヒロインのイメージから
一刻も早く抜け出したいと思っている女優。
カフェでゆっくりお茶しようにも、
次から次へと現れる彼女のファンに、サインや握手をねだられてゲンナリ。
近くのホテルに有名な映画監督が滞在中であることを聞きつけ、
なんとしてでも自分の舞台を見に来てもらえるよう、策を練ります。
そんな彼女の毎度決まったオーダーが、
「エスプレッソ。バルサミコを入れてね」。

さらに話がそれますけれど、先日おじゃましたお店で、
「それは美味しそうには思えない」と話していたら、
話をお聞きになっていたシェフが、「やってみます?」と、
食後のエスプレッソにバルサミコを入れて出してくださいました。
絶対美味しくないと思っていたのに、NGでもなかったのが驚き。
分量にもよるんでしょうが、美味しいわけじゃないんです。
でも、なんとなく、私にとっては癖になりそうな味でした。

オークション出品者の老人とジェシカの会話も素敵です。
出品予定のブランクーシの彫刻「接吻」を見て、
芸術に無縁のところにいるというジェシカが、
「恋したくなるわね」と評したときの表情が
とってもキラキラしていました。

ジェシカの名言をもうひとつ。
「人には2種類あるの。
携帯電話がかかってきたときに、『くそっ、誰だよ』と思う人と、
『あら、誰からかしら』とときめく人。私のように」。

なんだか、バルサミコ入りのエスプレッソのように、
オシャレなような、オシャレでないような、
でもピピッと隠し味の効いた、素敵な映画なのでした。

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今年観た映画50音順〈ま行〉

2008年12月23日 | 映画(ま行)
《ま》
『迷子の警察音楽隊』(英題:The Band's Visit)
ちょっぴり珍しいイスラエルの作品。
エジプトの警察音楽隊が、イスラエルの文化センターに招かれる。
お揃いのユニフォームでビシッとキメてイスラエル入りした一団は、
手厚いもてなしを受ける……はずだった。
しかし、何の手違いか、空港には出迎えなし。
役所への電話も取り次いでもらえず、自力で目的地に向かう。
ところが、たどり着いた先は、目的地とは似た名前の全然別の場所。
ホテルなんて存在しない辺鄙な町で、次のバスは明日。
バス停前の食堂の女主人の計らいで、
一団は3組に分かれて、付近の家の世話になることに。
それぞれが過ごす一夜が描かれた、愛すべき作品。
隊員の間には上下関係も年齢差もあり、考え方で衝突も。
異文化に触れ、くすりと笑えて、小さな幸せ。佳作です。

《み》
『ミス・ポター』(原題:Miss Potter)
ピーターラビットの作者、ビアトリクス・ポターの伝記ドラマ。
上流階級の女性が仕事を持つことなど考えられなかった、
20世紀初めのロンドン。
彼女は絵本画家になる夢をあきらめず、出版社に絵を持ち込む。
同族経営のその出版社は、まだ新米の末弟ノーマンにこの仕事をさせれば、
失敗しても彼のせいにできるからという腹で、
ビアトリクスとノーマンを引き合わせる。やがて恋に落ちるふたり。
本作を観れば、ピーターラビットにちがう思い入れが生まれます。

《む》
ありませ~ん。

《め》
『めがね』
およそ観光地とは言いがたい、海以外には何もない町に、
ふらりとやってきたタエコ。
放っておいてほしいのに、宿の主人は何かと声をかけてくる。
常連客らしき女性は、タエコを不審な目で見るし、
海辺にひとりでいれば、かき氷をしきりと勧められ、
どこへ行っても落ち着けない。
鬱陶しく思っていたはずが、次第に周囲のペースにハマる。
『かもめ食堂』(2005)同様、心地よくユルユルと時間が流れるけれど、
こっちのほうが微妙にシマリに欠けます。

《も》
『モンテーニュ通りのカフェ』(原題:Fauteuils d'Orchestre)
パリに実在するカフェを舞台に繰り広げられる群像劇。
“カフェ・ド・テアトル”は、普段は男性しか雇わない。
しかし、隣近所で3日後に3つの催し物があり、大忙しが予想されるため、
給仕の職を求めてやってきたジェシカは、ラッキーなことに採用となる。
カフェを訪れる3つの催し物の関係者たち。
会話が楽しく、とっても洒落た作品。
ほんとにパリのカフェにいる気分に。たぶん。

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