夜な夜なシネマ

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『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』

2008年03月21日 | 映画(あ行)
『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』(原題:Waitress)
監督:エイドリアン・シェリー
出演:ケリー・ラッセル,ネイサン・フィリオン,ジェレミー・シスト,
   シェリル・ハインズ,エイドリアン・シェリー,アンディ・グリフィス他

アメリカ南部の田舎町。
パイがウリのダイナーに勤めるジェンナは、
誰もが認めるパイ作りの名人。
毎日次々と新しいレシピを生み出し、
とびっきり美味しいパイを提供している。

ジェンナの願いは、幼稚でDVな夫アールのもとを離れること。
そのためには、隣町でもうすぐ開催される全米パイ・コンテストに出場して、
賞金25,000ドルを獲得するしかない。
そんな彼女の企てを知らずとも、
嫉妬深いアールがパイ・コンテストへの出場を許すわけもなく、
出場料と家出資金をこつこつとヘソくるジェンナ。

ところが、ある日、妊娠が発覚。
アールに無理やりお酒を飲まされた日に妊娠したに違いない。
夫の子どもなんて生みたくない。
だけど子どもの命は絶てない。
絶望的な気持ちで産婦人科を訪れたジェンナの前に現れたのは、
古くから町にいるベテラン女医ではなく、
新任のポマター先生だった。

ジェンナに好意を抱いたポマター先生は、
診察を理由に彼女を呼び出そうとする。
変わり者ではあるが、優しく誠実に見える彼に
いつしかジェンナも惹かれ、ダブル不倫に。

自らの妊娠中に脚本を書き始めたという監督。
徹底的に女性の視点で描かれていて、
男性の気持ちを考える隙はありません。そこが痛快。
おそらく、男性が観ても、
中途半端に「男の気持ち」を綴られるよりいいのでは。

ジェンナの同僚ベッキーとドーン(監督が演じる)も
人間として非常に面白く、魅力的。
男性陣ではアールとポマター先生が本当にヘタレですが、
店のマスターで、口うるさいカルや、
オーナーとおぼしき、文句言いの客であるジョーと
ジェンナとのやりとりは愛すべき台詞の応酬。

妙ちくりんな名前を付けられるパイも
合わされるフルーツやクリームを見ているだけで幸せ。
「不倫でアールに殺されるパイ」と
「不倫は悪いしアールに殺されたくないパイ」は特に。
バナナを抜いてしまうところもご愛嬌。
しかし、ほとんどのパイの色づかいはいかにもアメリカ的。
そんな原色ド派手なパイを並べられても。

残念ながら、監督は本作完成後、40歳にして他界。
ご近所さんとのトラブルによるものだったそうです。
こんなにも女性を勇気づける映画なのに、この後日談はアンマリ。

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