南英世の 「くろねこ日記」

日本の食料政策

この本を読んで、頭をガツンとやられた気がした。

今の日本は、カネさえ出せば買えることを大前提とした食料政策をとっている。リカードの比較生産費説を根拠に、自由貿易こそ人類の進むべき方向だと授業でも教えている。

しかし、そうした政策が正しいのか。本書を読んで今まで教えてきたことに疑問を感じるようになった。日本の食料自給率は40%である。野菜の自給率は80%といわれるが、実は野菜の種の9割は輸入に依存している。たとえ種取りしても同じ形質の種は得られない。だから毎年外国から購入する必要があるのだ。

条件の悪い耕地しかない日本では、大規模農業は土台無理である。コスト面で欧米にかなわないとしたら、自由貿易を進める限り日本の自給率は向上しない。 しかし、ウクライナ戦争をきっかけに、カネさえ出せばいくらでも輸入できるという大前提が怪しくなってきた。

日本は「食料安全保障」をもっと真剣に考える必要があるのではないか。しかし、日本の食料自給率を上げることは、アメリカからの輸入を減らすことを意味する。もし日本の政治家がそれをやれば政治生命を失う。

これまで日本はアメリカの食料戦略に従順に従い、農協弱体化、TPP推進、農薬の基準緩和、遺伝子組み換え食品の輸入などを推進してきた。日本の農業が衰退してきたのは「人災」ともいえる。そもそも日本の農業が過保護というのは真っ赤な嘘で、アメリカやEUこそが過保護なのであるとこの著者は主張している。

私が生まれた石川県でいま農業を行っているのは70代の人たちである。これでいいのだろうか?

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