『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』2017年 定価 2200円 をよんだ。
人手不足であること、賃金が上昇していないこと、この二つの事実を確認したうえで、なぜこういう現象が起きているのかという問いを17人の経済学者に投げかけ、それらをまとめた本である。
一般的な答えとしては
① 非正規が増えたから
② 労働分配率が下がったから
③ 労働生産性が低下したから
という答えが予想される。
そのほかにも
④「名目賃金の上方硬直性の存在」
⑤「企業が欲しいと思っている人材と、働きたいと思っている人材が異なること」
⑥「高齢者の退職」
⑦「貿易財では国際競争にさらされていること」
などさまざまな観点からの分析が行われている。
④については、過去には賃金の下方硬直性が言われたから、一度ベースアップをしてしまうとなかなか下げられない。だから企業は賃上げに消極的になるという理屈である。
⑥もよくわかる。年収800万円の人が退職し、代わりに年収300万円の人が雇われれば、見かけ上の平均賃金は下がる。
結論として言えるのは、複数の要因が絡んでいるということかもしれない。中には、賃金が上がらないのはそもそも人手不足ではないからだという意見もあるらしい。群盲象を撫でるという言葉があるが、このテーマかなり難問のようだ。単純に労働組合の交渉力の低下では片づけられない問題が横たわっている。