見出し画像

南英世の 「くろねこ日記」

国旗・国歌法から20年

1999年、小渕恵三政権のときに国旗・国歌法が成立した。この年、小渕首相と政治評論家がゴルフをしていた時の話を思い出す。首相がボールを打った瞬間、叫んだ。
「あ、いかん。右のほうに飛んでいった」
評論家が茶化した。
「あなたと一緒だね」(笑)。

当時、官房長官は野中広務氏だった。かれは良心的な政治家だった。国旗・国歌法は君が代・日の丸を定義しただけであり、強制することはないと言っていた。「歌いたくない人の口をこじ開けて歌わせるものではない」とも説明していた。「君が代は 千代に八千代にさざれ石の 巌となりて苔のむすまで」。意味を考えれば歌いたくない人がいても不思議ではない。

しかし、法律は一度できてしまうと、作った人の意思とは無関係に運用される。2003年、東京都教育委員会は入学式や卒業式には国旗を掲揚し国歌を斉唱すべきであるという通達を各公立学校に出した。その後大阪では、卒業式で国歌を斉唱する際、教職員が口を開けているかどうかを教頭がチェックするということも行われた。

また、民間企業のノウハウを学校現場に採り入れ新風を吹き込むという名目で、「民間人校長」を登用する制度も導入された。しかし、いまから思えばこの制度も、会社に絶対忠誠を誓ってきた人なら教育委員会にも絶対忠誠を誓うはずだということで、教育の右傾化を促進するために行われたと考えるほうが当たっている。

国旗・国歌法が成立してから7年後の2006年、今度は第一次安倍内閣の下で、教育基本法が改正された。元来、教育には「人格の完成」と「社会に有意な人材を育てること」の二つの目的があるが、新しい教育基本法では後者に力点が置かれ、愛国心が強調された。

「だるまさんが転んだ」という遊びがある。これと同じように政治の世界でも少しずつ少しずつ世の中を変えていけば、その変化に誰も気が付かない。

教育基本法が変われば、それに合わせて学習指導要領も変わる。学習指導要領が変われば教科書が変わる。学習指導要領が改定されるのは10年に1回だから、教育基本法が具体的に教育現場に降りてくるのは高校では2022年度からである。今、そのための新しい教科書作りが行なわれている。これから先日本はどこに向かうのであろうか。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日常の風景」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事