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南英世の 「くろねこ日記」

アメリカのユダヤ人

全世界のユダヤ人人口は約1460万人で、そのうちアメリカに住むユダヤ人人は約600万人といわれている。アメリカ人全体のわずか2.5%を占めるに過ぎない。しかし、アメリカ社会では大きな力を持っているとされる。

誰もが知るユダヤ人(系)を挙げるなら、マルクス、フロイト、アインシュタイン、スティーブン・スピルバーグ、マクドナルド創業者のレイ・クロック、Google創業者のラリー・ペイジ、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ、ヘッジファンドで名をはせたジョージ・ソロス、金融情報サービスを提供するマイケル・ルームバーグ、さらにスターバックス、リーバイスの創業者もユダヤ系である。

また、企業でいえば、ロスチャイルドを始め、ゴールドマン・サックス、ソロモンブラザーズ、ベアスターンズ、リーマンブラザーズ(2008年倒産)、ニューヨークタイムズ、CBS、ABCなどもユダヤ系である。

こうしたことから、巷間、「ユダヤ資本がアメリカ経済を支配している」とか、「ユダヤは世界征服を狙っている」といった反ユダヤ本(Hate Book)も数多く出回っている。元ウクライナ大使の馬淵睦夫氏などは、ウォール街のユダヤ系資本は、アメリカの大統領選を左右するキングメーカーであるばかりではなく、メディア、CIA、FBI、FRB、最高裁判事などにも人材を送り込み、実質的な「ディープ・ステート」(闇の政府)として機能していると書いている。(『日本人が知らない世界の黒幕』SB新書)。

ユダヤ系資本は本当にdeep stateなのか。気になって何冊かの本を読んでみた。確かにフォーブスの長者番付上位400人のうち、約4分の1はユダヤ系であり、ウォール街をリードしているのもユダヤ人であることは間違いない。しかし、だからといって彼らが deep state であるとまでは言えないのではないか。確信はないがそんな気がする。

では、なぜユダヤ人がアメリカ社会でそこまでの成功を収めることができたのか。次のような理由が挙げられる。

① 教育を重視した。ユダヤ人はユダヤ人のための学校でユダヤ教をはじめとする教育を受けるが、高校生にもなると授業は夜7時、8時まで行われるという。たとえ迫害に会っても、脳みその中までは奪うことができない。だから彼らは伝統的に教育に力を入れる。当然のことながら、大学進学率も非常に高い。

② ユダヤ人は迫害を受ける中で、倹約を身につけた。

③ ユダヤ人は迫害を受ける中で、相互に助け合うシステムを構築してきた。特に、国際的な同族ネットワークの力が大きい。

④ ユダヤ人は、中世以来都市に暮らし、金融業をはじめとする商工業の技術を蓄積していた。一方、19世紀にアメリカに移住してきた人の多くは農村出身で、そうしたノウハウを持ち合わせていなかった。

また、大統領選挙で大きな力を発揮する理由は次のように説明される。

① 多数の選挙人を持つ州(例えば、カリフォルニア、ニューヨーク、イリノイ、フロリダ、ペンシルベニア)にユダヤ人が集中しており、接戦となった場合はこれらの州の結果が勝敗を決する。

②莫大な選挙資金を献金している。アメリカは広い。全土を飛行機で回り、テレビを使った宣伝も必要である。だから選挙資金が半端ない。その資金を多く賄っているのがユダヤ資本である。ただし、彼らは基本的には民主党を支持するが、どっちが勝ってもいいように共和党にも政治献金をしている。

③ユダヤ人は中東問題など政治意識が高く、投票率も極端に高い。また、政治活動のノウハウに長けている。

だから、ユダヤ人を敵に回す発言をすると大統領になれない、といわれるわけだ。ただし、アメリカのイスラエルロビーも最近は一枚岩ではないらしい。この20年間、イスラエルでは右傾化が進んでいるが、これに対して批判的な動きがアメリカのユダヤ人社会で起きているという。2008年には左派を中心とする新たなイスラエルロビー「Jストリート」が誕生した。また、サンダースはユダヤ系だが、イスラエルの入植政策を厳しく批判している。

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