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南英世の 「くろねこ日記」

ベーシックインカム


最近、ベーシックインカムが話題になり大学入試でも出るようになった。そもそもベーシックインカムとは何ぞや。その導入の是非も含め考えてみたい。

ベーシックインカムとはすべての国民に所得制限をつけずに定期的に一定のお金を支給する政策のことである。その代わり生活保護や年金を廃止される。この制度は現在の生活保護は使い勝手が悪いということから、もともとは左派の主張から登場した。しかし、現在では竹中平蔵氏のような「小さな政府」を主張する保守派・新自由主義の立場からも主張されるようになっている。



ベーシックインカムを導入すると次のようなメリットがあるとされる。
① 制度が単純でわかりやすく、行政コストを削減できる
 すべての人に(例えば7万円という)一律の金額を支給する制度は、厳格な審査を必要とする生活保護などと違ってわかりやすく、手続きが簡単である。もし一人につき7万円支給されれば、子ども二人の母子家庭で月額21万円が支給されることになる。

② 生活困窮者も受け取りやすくなる
 現在、生活保護を受給できるはずの世帯のうち、実際に受給している世帯の割合(捕捉率)は約20%と言われている。その原因は、財政難、国家の世話にはなりたくないというプライド、受給者が味わう差別・屈辱感などが指摘されている。もし、ベーシックインカムが導入されれば、金持ちも生活困窮者も一律に受け取ることになるから、生活困窮者にも確実に保護の手が差し伸べられることになり、捕捉率も改善される。

③ 働いても減額されない
 現在の生活保護制度では、生活保護を受けている人が働いて収入を得ると、その分だけ支給額が減額される。しかし、ベーシックインカムを導入すると、働いても減額されることはない。したがって、勤労意欲を高める効果が期待される。


一方、ベーシックインカムの導入には次のようなデメリットも指摘されている。
① 自己責任を重視しすぎる
 「7万円で満足できなければ、あとは自分で稼いでください」というのがベーシックインカムの基本スタンスである。しかし、人生はスタート時点ですでに不公平であり、その後の収入をすべて自己責任で片づけるのはかなり乱暴な議論といえる。

たとえば、子ども二人の母子家庭では21万円が支給されるが、独居老人の場合だと7万円だけになる。これは現在の生活保護費の平均金額14万円の半分である。はたしてこれを自己責任として片づけてよいのだろうか。若いころから計画的に貯蓄をすればよいともいえるが、計画的にお金を残せない人のほうがむしろ普通である。

② 富裕層にも支給される
 生活に困っていない富裕層にも支給する必要があるのか。

③ 働かなくてももらえるということは倫理的・道徳的に問題

④ 財源をどうするか
 ちなみに、全国民に一人7万円支給するとなれば、7万円×1億2700万人で、年間107兆円が必要になる。これは現在の一般会計予算103兆円を超える。もし本気で財源を調達しようとすれば、現在の社会保障給付費(年金、医療、その他)120兆円に手を付けるしかない。


左派の人たちがベーシックインカムを導入したい理由はよくわかる。生活困窮者の救済である。一方、右派の人たちのベーシックインカム導入の狙いもよくわかる。社会保障制度を破壊して究極の自己責任の社会を構築することであろう。もしそうならば、時代は21世紀から一気に18世紀に逆戻りすることになる。いまのところ、すべての国民に給付されるベーシックインカムを導入した国は存在しない。ベーシックインカムは夢物語というべきか。






 

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