375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

名曲夜話(24) ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲

2007年04月15日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編

ハチャトゥリアン チェロ協奏曲+ヴァイオリン協奏曲
チェロ協奏曲ホ短調
1.Allegro moderato  2.Andante sostenuto  3.Allegro a battuta
ヴァイオリン協奏曲ニ長調
1.Allegro con fermezza 2.Andante sostenuto  3.Allegro vivace
ダニエル・ミューラー=ショット(チェロ)
アラベラ・シュタインバッハー(ヴァイオリン)
サカリ・オラモ指揮 バーミンガム市交響楽団
録音: 2003年 (ORFEO C623 041A)
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クラシック音楽を聴いていく道しるべの一つとして、「好きな演奏家を追いかける」という方法がある。特に、協奏曲というジャンルは、ソロの名技が最大の聴きどころなので、当然、ソリスト中心にCDを選ぶことになるし、指揮者に関しては、ちゃんとサポートしてさえくれれば、特に誰であってもかまわないということになってくる。

自分の場合、最初に好きになったヴァイオリニストは、チョン・キョンファだった。特に、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。これはもう、衝撃的と言ってもいいほどである。それ以外にも、チャイコフスキー、メンデルスゾーン、ベートーヴェン、プロコフィエフ(1番、2番)、…と、代表的なヴァイオリン協奏曲は、ほとんど彼女の演奏がファーストチョイスになっている。

そのチョン・キョンファも、最近は、すっかり新譜から遠ざかってしまった。考えてみれば、1948年生まれなので、今年59歳。CD業界としても、若年購買層にアピールするために、若い演奏家を発掘しなければならないので、録音に関しては一段落というところだろうか。こちらとしても、そろそろ「新しいアイドル(?)」を探さなければならないかな、…と思っている矢先に登場したのが、2004年、ドイツのオルフェオ・レーベルから、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲でCDデビューした、アラベラ・シュタインバッハーだった。

彼女との出会いのきっかけは、チャーミングな横顔のジャケットだった。いわゆる「ジャケ買い」である。しかし、聴いてみると、艶のある音色が美しく、さわやかな味わいに惹かれた。そして、あとから知ったのだが、彼女はドイツ人の父と日本人の母の間に生まれ、「美歩」という日本名も持つ、期待の若手ヴァイオリニストだったのだ。

ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲は、20世紀の同じ分野における作品としては、シベリウス、プロコフィエフと肩を並べる傑作であり、初演者のオイストラフに始まって、多くの名ヴァイオリニストが録音を残している。

第1楽章の、民族舞曲のリズムにのって進行する第1主題。抒情的な、しみじみと心に訴えかける第2主題。どちらも名旋律と呼ぶにふさわしい。第2楽章は、独奏ヴァイオリンによる、中央アジア風のワルツの主題が魅力。第3楽章は、活気あふれる、祝祭的なロンドとなる。

この協奏曲は、チョン・キョンファの録音がないので、ちょうど、この「美歩さん」のCDが空白を埋める形で、愛聴盤になっている。彼女のハチャトゥリアン以後のリリースを見ると、2005年にミヨーのヴァイオリン協奏曲(1番,2番)、2006年にショスタコーヴィッチのヴァイオリン協奏曲(1番、2番)、と渋いところで勝負しているのも個性的で、今後の録音がますます期待されるのである。

また、日本公演のほうも、2006年に続き、2007年10月で決定しているようだ。当分、NYCには来る予定がないので、日本に住んでいる人たちがうらやましい気がするが、いつの日か、実演を観にいきたいアーティストの1人である。

尚、このCDの前半には、彼女と同じくミュンヘン出身の若手チェリスト、ダニエル・ミューラー=ショット独奏によるチェロ協奏曲も収録されている。こちらも、聴けば聴くほど渋味にあふれ、チェロ特有の「モノローグの美学」を堪能できる傑作である。

参考サイト

アラベラ・シュタインバッハーの公式ホームページ(ドイツ語・英語)