375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

●歌姫たちの名盤(13) 八代亜紀 『八代亜紀と素敵な紳士の音楽会 LIVE IN QUEST』

2013年04月08日 | 歌姫① JAZZ・AOR・各種コラボ系


八代亜紀 『八代亜紀と素敵な紳士の音楽会 LIVE IN QUEST
(2013年3月20日発売) COCP-37919 *オリジナル盤発売日:1998年1月21日

収録曲 01.オープニング(Instrumental) 02.雨の慕情 03.SING SING SING(Instrumental) 04.WHAT A LITTLE MOONLIGHT CAN DO(月光のいたずら) 05.EAST OF THE SUN(太陽の東の島で) 06.YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO 07.CRY ME A RIVER 08.なみだ恋 09.Mr. SOMETHING BLUE 10.荒城の月 11.舟唄 12.BEI MIR BIST DU SCHON(素敵なあなた) 13.愛の終着駅 14.花水仙 15.ほんね


3月27日に行なわれたニューヨーク・ジャズ・ライヴ以来、ちょっとした八代ブームが起きているようで、前回のライヴ体験記事は予想を上回るアクセス数を集めた。以前から不思議に思っていたのは、なぜ八代亜紀ほどの大歌手が10年以上も紅白歌合戦から遠ざかっているのか・・・ということなのだが(ヒット曲を出していないわけではない)、ここまで話題になれば、さすがに復帰させないわけにはいかなくなってくるのではなかろうか。

さて、先日のライヴはおもに『夜のアルバム』 からの選曲で、それに加えて現地在住の日本人のために「雨の慕情」と「舟唄」のジャズ・ヴァージョンも歌ってくれたのだが、実をいえば十分予想されたことだった。というのも、この2曲のジャズ・ヴァージョンは『夜のアルバム』に先立つ15年も前に、すでに別のアルバムで採り上げられていたからである。

それは日本コロムビアから発売された『八代亜紀と素敵な紳士の音楽会 LIVE IN QUEST』というアルバムで、1997年9月26日に原宿のクエストホールで行なわれた一夜限りのライブを収録したものである。当時はまだまだ八代亜紀=演歌というイメージが根強かったこともあり、珍しさはあってもロングセールスを記録するほどではなく、注文ベースで生産するオン・ディマンド盤という形でかろうじてカタログに残るという状態だった。

ところが『夜のアルバム』 のヒットによる八代人気再燃によって(こちらは日本コロムビアの了承を得てユニヴァーサルから発売されたアルバムなのだが)、本来の所属レコード会社である日本コロムビアもあわてて(なのかどうか)、「これこそが八代亜紀の原点となった正真正銘のジャズアルバムである!」という触れ込みで2013年3月になって正式に復刻再発売が実現するという運びとなった。結果的に、ファンにとっては喜ばしい成り行きだったといえるだろう。

このアルバムはMC付きの実況ライヴということもあって、実に楽しい。『夜のアルバム』もジャジーな雰囲気はなかなかいいのだが、ジャズ本来の即興性を期待するならば、むしろこちらのほうに軍配を上げたい気がする。参加メンバーも北村英治 (Clarinet) 、世良譲(Piano) 、ジョージ川口(Drums) 、水橋孝(Bass) という当代一流のジャズメンがそろっているのは強みだ。

オープニングは世良譲のピアノ・ソロでゆっくりと始まる。彼方から聴こえてくる旋律はショパンの「雨だれ」 。雨のしずくは次第に形が大きくなり、やがて八代亜紀のヴォーカルによる「雨の慕情」となる。待ってましたとばかりに場内の拍手。この導入部分からしてライヴならではの魅力満点である。

続いて八代亜紀によるMC、そして4人のジャズメンの紹介がある。ドラムス、ベース、ピアノ、クラリネットと指名されるごとにそれぞれのパートが「SING SING SING」の演奏を始め、アンサンブルが最高潮に達したタイミングで八代亜紀のヴォーカルによる「WHAT A LITTLE MOONLIGHT CAN DO(月光のいたずら)」につながっていく。いかにもタイトル通りの小粋でファンタスティックな名曲で、間奏部分で展開されるジャズメンの名技も聴きものだ。

ロマンティックなバラード「EAST OF THE SUN(太陽の東の島で)」のあとは、ニューヨーク・ライヴでヘレン・メリルとのデュエットが実現した不朽の名曲「YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO」。この曲が、ヘレン・メリルを意識しているはずの『夜のアルバム』に収録されていないのは不思議なのだが、それだけになおさら、こちらのアルバムの価値を引き上げることになる。この曲を歌い終わったあとの八代亜紀の興奮ぶりもすごい。

「ニューヨークのため息」の次は「東京のため息」ということで、お得意の「CRY ME A RIVER」。こちらの曲は『夜のアルバム』にも違うアレンジのスタジオ録音ヴァージョンが収録されているので、両者を聴き比べてみるのも一興であろう。

続いて八代亜紀のキャリア最初のヒット曲となった「なみだ恋」のジャズピアノによる伴奏付きヴァージョン。典型的な演歌の名曲が、ここでは3拍子の優雅なワルツに姿を変える。同じ曲でもこれだけ雰囲気が違うのだから、やはり編曲の役割りは大きい。ベースの伴奏のみで歌われる「Mr. SOMETHING BLUE」も実に小粋な味がある。

そして「荒城の月」。日本語のワン・コーラスが終わると、突然テンポを速め英語のフレーズに移行する。『夜のアルバム』に収録された「五木の子守唄~いそしぎ」に共通する和洋合一の世界だ。ここで「舟唄」のワン・コーラスをはさみ、プログラムの最後となる「BEI MIR BIST DU SCHON(素敵なあなた)」となる。八代亜紀とともに貴重な一夜を過ごしたすべての男性ファンに捧げるラヴ・ソングで、文字通り「素敵な紳士の音楽会」は幕を閉じるのである(その後、3曲ものアンコールがオマケについているが)。

これこそは八代亜紀+ジャズメンたちの絶妙の名技で、夜通しスウィングを楽しむことができる名盤といえるだろう。 

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