375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

●歌姫たちの名盤(20) 青江三奈 『THE SHADOW OF LOVE ~気がつけば別れ~』

2013年08月11日 | 歌姫① JAZZ・AOR・各種コラボ系


青江三奈 『THE SHADOW OF LOVE ~気がつけば別れ~
(2007年8月24日発売) THCD-054 *オリジナル盤発売日:1993年10月21日

収録曲 01.CRY ME A RIVER 02.IT'S ONLY A PAPER MOON 03.THE MAN I LOVE 04.LOVE LETTERS 05.LOVER, COME BACK TO ME 06.BOURBON STREET BLUES~伊勢佐木町ブルース  07.HARBOUR LIGHTS 08.WHE N THE BAND BEGIN TO PLAY 09.WHAT A DEFFERENCE A DAY MADE 10.GREEN EYES 11.GRAY SHADE OF LOVE 12.SENTIMENTAL JOURNEY 13.HONMOKU BLUES~本牧ブルース


昭和歌謡界を牽引したブルースの女王・青江三奈が世を去ってから今年(2013年)で13年になるが、まだまだ根強い人気は衰えていないようだ。今はネット上で手軽に動画を見ることのできる時代になったこともあり、リアルタイムで聴いてきた中高年のファンのみならず、若い世代の人たちの中にも「こんな凄い歌手がいたのか」と驚く人も増えている。それがここ数年来の「再評価」につながっているというわけである。事実、彼女の歌声はまさに昭和ならではのネオン街の色気があり・・・時代背景の違いもあるので、こういう「盛り場の匂いがする歌手」はもう出てこないだろう。それだけに、残された録音の数々は貴重な財産となってくる。

青江三奈といえば、一般的に知られている代表曲は100万枚以上を売り上げた「伊勢佐木町ブルース」、「長崎ブルース」、「池袋の夜」など60年代後半に集中しているように見えるものの、実際は80年代前半まで紅白歌合戦の常連だった。それだけ唯一無二の個性が際立っていたということでもあり、そもそも「ブルースの女王」と呼ばれるような人をはずすわけにはいかなかったのである。80年代中盤になると従来の歌謡界の枠組みが崩れてきたこともあり、絶対的な存在というわけにはいかなくなったが、それでも90年代にちゃんと巻き返すところはさすが女王の底力というしかない。

まず1990年に、歌手生活25周年を記念して発売されたアルバム『レディ・ブルース ~女・無言歌~』が日本レコード大賞で優秀アルバム賞を受賞し、7年ぶりに紅白歌合戦に復帰。そして1993年にはなんとニューヨークに渡り、一流のジャズメンたちの協力を得て初の全曲英語のジャズ・アルバムを録音することになった。それがここに紹介する『THE SHADOW OF LOVE ~気がつけば別れ~』である。

青江三奈とジャズ。その組み合わせは「伊勢佐木町ブルース」を歌う彼女のイメージしかない人には意外なもののように思えるかもしれないが、彼女は他の多くの歌謡曲歌手がそうであったように、デビュー前は銀座の高級クラブなどで歌うジャズ・シンガーであり、ジャズのアルバムを出すというのは彼女にとって夢だった・・・ということを、ごく最近になって認識することになった。これと、1995年にリリースした2枚目のニューヨーク録音アルバム『PASSION MINA IN N.Y.』は、発売時はたいして話題にならず、ほどなく廃盤になっていたのが2007年になって復活。高まる再評価の波に乗って、ようやくジャズ・シンガーとしての青江三奈の本領を広く知らしめることのできる時代になったのである。

まず冒頭を飾るのが「CRY ME A RIVER」。最近リリースされた八代亜紀のアルバムにも入っているが、青江三奈の歌いっぷりはさらに濃厚かつ退廃的な味付けがあり、うらぶれた場末の雰囲気が漂ってくる。続く「IT'S ONLY A PAPER MOON」はこの曲を歌ったナット・キング・コールの弟、フレディ・コールとのデュエット。ジャズならではのゴキゲンなスウィング感を満喫できる名曲。個人的にはライアン&テータム・オニール親子が共演した映画『ペーパームーン』の一場面を思い起こさせる。

味の濃いハスキー・ヴォイスにどっぷり浸れるガーシュインの名曲「THE MAN I LOVE」、フレディとのしっとりとした掛け合いを味わえるムード満点な「LOVE LETTERS」、青江三奈独特の渋いスウィング感とエディ・ヘンダーソンのトランペット・ソロが楽しめる「LOVER, COME BACK TO ME」を経て、いよいよこのディスク最大の目玉でもある「BOURBON STREET BLUES」の登場となる。

原曲はあの大ヒット曲「伊勢佐木町ブルース」 。舞台はなんとニューオリンズのバーボン通りに移り、そこでもあのハスキーなため息を連発。この街には何度か訪れたことがあるが、いわゆる「歩き飲み」が許されており、昼間から酔っ払いが徘徊している。そのうらぶれた街の雰囲気に不思議にマッチするアレンジだ。

それに続くフレディとのデュエット「HARBOUR LIGHTS」も、異国の港町を思い起こさせる名演。続いてスリル満点なサウンドを楽しめる「WHEN THE BAND TO PLAY」、新しい恋人との出会いの喜びが伝わってくる「WHAT A DIFFERENCE A DAY MADE」、スペイン語と英語で歌うフレディとのデュエット4曲目「GREEN EYES」、いかにもアメリカ南部のディープな夜を思わせる「GRAY SHADE OF LOVE」、誰でも一度は耳にしたことがあるスタンダード曲「SENTIMENTAL JOURNEY」・・・と、バラエティに富んだ曲目が次々に登場する。

そしてアルバムのトリを飾るのは英訳版の「HONMOKU BLUES(本牧ブルース)」 。もともとはザ・ゴールデン・カップスが1969年に出したヒット曲をマル・ウォルドンのアレンジでジャズに仕上げた逸品・・・とライナー・ノーツには書いてあるのだが、原曲を聴いてみると違う曲のようで、どうやら作詞者のなかにし礼が青江三奈のために新しく書き下ろした新曲がオリジナルになっているようだ(アルバム『レディ・ブルース ~女・無言歌~』に収録)。やはり彼女は生まれながらにジャズ向きの声を持った歌手であり、その特質に和風の節回しを加えたものが、いわゆる「青江ブルースの世界」ということになるかもしれない。

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