375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

【新春特集】「本田美奈子.フィルムコンサート」をふりかえる。

2007年01月02日 | 本田美奈子


本田美奈子フィルムコンサート“舞輝(BUKI)” TOUR 2006-2007

曲目 1.
誰も寝てはならぬ 2. アメイジング・グレイス 3. Oneway Generation 4. 孤独なハリケーン 5. CRAZY NIGHTS  6. 勝手にさせて 7. 愛が聞こえる 8. あなたと、熱帯  9. 命をあげよう(「ミス・サイゴン」より) 10. オン・マイ・オウン(「レ・ミゼラブル」より) 11. ララバイ(「十二夜」より) 12. FRIENDS(「クラウディア」より)  13.
AVE MARIA 14. ニューシネマ・パラダイス 15. Time To Say Goodbye  16. つばさ 17. ジュピター 18. 1986年のマリリン  19. 新世界(End Credit)
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2006年度に観た最高のコンサート。それは、8月12日~13日に、ラ・フォーレ原宿で行なわれた「本田美奈子.フィルムコンサート“舞輝(BUKI)” TOUR 2006-2007」であった。これを観たいがために、急遽太平洋を越えて帰国した旅は、まだ昨日のことのように憶えているし、おそらく今後も、一生忘れることがないであろう。

コンサートを見終わったその日、自分は記憶が鮮明なうちに、渋谷のネットカフェに飛び込んで、当時から運営していたもう一つのブログに、感想を書き込んだ。その時の、かなり興奮した文章は、今でも、そのブログで読みかえすことができる。

さすがに、今では冷静になっているが、やはり、あのような素晴らしいコンサートは、一生のうちに何度も体験できるものではない。そこで、2007年度の出発に当たって、当時の原稿に手を加えながら、今一度、あの感動をふりかえってみたいと思う。

自分が観たのは、8月12日の第1回目、午後1時開演の上映だった。どれだけの混み具合になるか見当がつかなかったので、とりあえず、1時間半前の午前11時30分頃、会場に到着した。すると、すでに20人以上の列ができている。全館300席ということなので、これは余裕だ・・・と思いきや、後から来た人たちが、次々と、自分の前方に並んでゆくではないか。どうやら「ぴあ」で前売り券を購入した人たちが、優先的に入場できるという仕組みだったようだ。

それでも、12時15分の開場時には、無事に中ほどの良い席を確保することができた。周囲を見渡すと、さまざまな年齢層の人たちの姿が見える。普段はあまり音楽を聴きそうもない年配の方々から、子供連れの夫婦、若いカップルまで、実にバラエティに富んでいる。自分のような美奈子ファンもいれば、通りすがりに興味を持って立ち寄ってみた人たちも、少なくないようだ。

午後1時になり、上映が始まる。まずは、本田美奈子出演のテレビCMの特集。カルビー・ポテトチップスの3種類のCM、佐藤製薬のストナエース、東芝扇風機「風のイマージュ」、ろうきんのCMが2種類、シャワランのシャンプー&リンスに、同社の牛乳粉石けん・・・と続く。こういうテレビ時代があったんだなと、今さらながら懐かしい思いがすると同時に、これを初めて見た若い人たちの目には、どのように映っているだろうか、という興味がわいてくる。

続いて、いよいよ本編。まずは2004年のクラシック・ライブから2曲、①「誰も寝てはならぬ」と②「アメイジング・グレイス」。②「アメイジング・グレイス」のほうは、すでにDVDで出ている六本木スイートベイジルのライブ映像。①「誰も寝てはならぬ」のほうは、まだリリースされていないが、同じ衣装であるところを見ると、同日のライブ映像のようだ。このコンサートは、2004年10月14日に行なわれているので、アルバム「アヴェ・マリア」の収録から1年半以上経っている。その間、歌唱力はさらに飛躍し、この時期には、もはやオペラ歌手と呼んでもいいほどの声量と迫力を持つようになった。この「誰も寝てはならぬ」は、今振り返っても、文句なしに、すごい。まるで、時速100マイルの剛速球でいきなりストライクを取られたかのように、呆然としたものである。

この2曲が終わると、画面はアイドル時代にタイムスリップ。1987年の3つのヒット曲③「
Oneway Generation」、④「孤独なハリケーン」、⑤「CRAZY NIGHTS」 のメドレー。TV番組「ミュージック・ステーション」等での映像と思われ、いずれも、リズムの切れがよく、溌剌とした若き日のパフォーマンスを堪能できる。

続いて、灼熱のロックバンド、MINAKO with WILD CATS時代の貴重な映像。⑥「勝手にさせて」、⑦「愛が聞こえる」、⑧「あなたと、熱帯」。

この3曲の映像は、当時、15分ビデオという形で発売されたことがあった。セールス的には壁に当たった時期でもあるので、素通りされることも多いのだが、個人的には、この時期にしかできないような、破天荒な熱唱が期待できるので、とても興味がある。もしも、運よく映像が残っているならば、1989年夏に行なわれた「豹的 TAEGET TOUR 1989」を、ぜひ観てみたいと思う。

この後、ふたたびCM映像の特集となり、グリコ・ポッキー、AUREXのCDコンボ、「つばさ」を歌ったオッペン化粧品、が登場する。1990年代になると、ほとんど日本のTVは観ていないので、この日、初めて目にするようなCMも多い。

ここからは1992年以降のミュージカル時代となる。この時期の出世作となった⑨「命をあげよう」(「ミス・サイゴン」より)を皮切りに、⑩「オン・マイ・オウン」(「レ・ミゼラブル」より)、⑪「ララバイ」(「十二夜」より)、⑫「FRIENDS」(「クラウディア」より)が歌われていく。

この中で、圧巻だったのは⑩「オン・マイ・オウン」だ。コンサート等では何度も歌っていながら、なぜかCD録音が出ていなかった、ミュージカル時代の代表作。ようやく、遺作アルバム「心を込めて…」に、デモテープからのテイクが収録され、それはそれで素晴らしいのだが、今回、劇中で歌われる同曲は、完全にエボニーヌの役柄になりきっているためか、まさに鬼気迫るものがある。これぞ、完成版の「オン・マイ・オウン」といえよう。ミュージカルの場合は、ドラマ全体をDVD化するのは権利上の面で難しいかもしれないが、せめて彼女が歌う、この曲の部分だけ、なんとかリリースできるようにはならないだろうか、と願わずにはいられない。

この後は、再び、クラシック時代のナンバーとなる。⑬「AVE MARIA」、⑭「ニューシネマ・パラダイス」、⑮「Time To Say Goodbye」。いずれも、2004年頃のコンサートの映像だろうか。どの曲も、情感たっぷりに歌われ、至福の世界へ誘われる。そして、「ありがとう」の詩の朗読をはさんで、いよいよ本日のクライマックス、⑯「つばさ」、⑰「ジュピター」、⑱「1986年のマリリン」のライブ映像となる。

ここで歌われる⑯「つばさ」は、1996年7月28日、阿蘇ファームランドで行なわれた野外ライブとのことである。バックで演奏するのは、服部克久と音楽畑オーケストラ。これは、素晴らしい演奏だ。ゆっくり目のテンポが雄大なスケールを生み、文字通り、大空へ飛翔していくような感動に包まれる。やはり、圧倒的な名曲。この曲は1994年にCD録音されているが、2年後のこの時点では、細部のニュアンスに至るまで、完全に本田美奈子の音楽として完成されている。この映像は、何度でも繰り返し観たい。歌手・本田美奈子の実力を世に知らしめる為にも、ぜひともDVD化してほしいと思う。

⑰「ジュピター」、⑱「1986年のマリリン」の2曲は、2004年12月1日に日本武道館で行なわれたイヴェント「Act Against AIDS」(通称AAA)での映像。すでに体調の悪化が懸念されていたと思われる時期であるが、このパフォーマンスは神がかり的にすごい。クラシック音楽の名曲「ジュピター」の荘厳なドラマを歌いながら、手拍子とともに踊る。次の瞬間、金色の衣装のままで、いっさいの流れを断ち切ることなく、「マリリン」の華麗なダンスが始まるのだ! 

まさしく、魔法のような離れ業だ。これこそ歌の女神ディーバ)と呼ぶにふさわしい。ふだんテレビで見かけるような歌手とは、格段にレベルの違う存在。2004年後半から、翌年1月の入院時に至るまでの、ほんの短期間だったとはいえ、彼女は歌手として、間違いなく日本最高、いや、世界最高レベルに達していたのではないだろうか

本物の芸術とは、こういうものだと思う。「うまい」とか「美しい」とかいう次元ではなく、「圧倒的に、ものすごいもの」。芸術とは、まさに爆発であり、落雷のような衝撃の伴うものなのだ。2006年8月12日、自分は、かけがえのない奇蹟を体験したと言ってもいい。自分が、歌の力だけで泣いたのは、40年以上の人生の中で、この時だけである。

その日、午後1時開演の上映のあと、少し時間を置いて、第4回目の5時30分開演の上映を、もう一度観た。今後再び、フィルム・コンサートが開かれるとしても、タイミングよく帰国できる可能性は少ないだろう。この千歳一遇の機会に、この感動を永遠に忘れることがないように、胸に刻み付けておきたかったのだ。

2007年度は、歌姫・本田美奈子の生誕40周年にあたる。いろいろとイヴェントが計画されていると思うが、個人的な希望としては、やはり、この日観たような、圧倒的なライブ映像がほしい。そして、1人でも多くの人たちと、彼女の貴重な芸術的遺産を分かち合える日が来ることを、心から願うものである。



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