★本田美奈子.クラシカル・ベスト ~天に響く歌~ (2007年4月20日発売)
COZQ255~6
収録曲 01.私のお父さん~オペラ「ジャンニ・スキッキ」より 02.アヴェ・マリア
03.タイム・トゥー・セイ・グッバイ 04.ニュー・シネマ・パラダイス 愛のテーマ 05.アメイジング・グレイス 06.タイスの瞑想曲 07.ジュピター~組曲「惑星」より 08.新世界~「交響曲第9番『新世界より』第2楽章」より 09.白鳥 10.誰も寝てはならぬ~「トゥーランドット」より 11.ゴッドファーザー愛のテーマ 12.この素晴らしき世界 13.時-forever for ever- 14.ララバイ~ミュージカル「十二夜」より
特典映像 01.AVE MARIA(プロモーション・ビデオ) 02.新世界 03.つばさ
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現在、自分の家には、およそ数百枚のCDがあると思う。その中で最高の一枚は、と訊かれたら、今までならば、『AVE MARIA』か、『時』か、『アメイジング・グレイス』かで迷ったことだろう。最高の録音がこの3枚に分散しているので、甲乙をつけるのが難しかったのである。
だが、これからは迷う必要がない。『本田美奈子.クラシカル・ベスト~天に響く歌~』。
いつかこの世に別れを告げる日が来たら、人生最後の一枚として、このアルバムを聴いて眠りにつきたいものだ。
もちろん、ここに収録されなかった曲にも、思い入れはある。「ベラ・ノッテ」と「天国への階段」が入っていればさらに完璧なのだが、個人的な好みを言い出せばきりがない。本田美奈子.のクラシック期の代表曲として、一般的にお勧めできるベスト盤としては、まずは妥当な選曲だろう。
収録された14曲のうち、7曲がアルバム『AVE MARIA』からの選曲。2002年12月に最初に録音された「私のお父さん」から、2004年5月リリースのシングル「新世界」の時に歌を取り直した「ジュピター」までが、前半のプログラムである。
後半は、その「新世界」に始まる、アルバム『時』からの6曲。この中では「ゴッドファーザー愛のテーマ」のみ、アルバム盤とは違い、今回初めて許可が下りた本田美奈子.の歌詞付きヴァージョンが収録されている。そしてラストを飾るのが、2005年12月27日、生前最後の録音となった「ララバイ~ミュージカル『十二夜』より」。これは、ミニアルバム『アメイジング・グレイス』に収録されていたものだが、まさに彼岸の世界を思わせる絶美の歌声で、結果的に、この世に残した白鳥の歌となってしまった。
担当プロデューサー・岡野博行さんのライナーノーツに記された、それぞれの楽曲にまつわるレコーディングのエピソード。改めて、それを読みながら聴いていくと、美奈子さんがひとつひとつの曲を、愛情を込めて仕上げていった様子が、手に取るようにわかる。何度も何度も、納得のいくまでテイクを重ねていく姿が、生き生きと思い浮んでくるのだ。
ただ、やはり聴いていくうちに、激しく胸を揺すぶられるような感情に襲われる瞬間がある。特に、「アヴェ・マリア」や、「ニュー・シネマ・パラダイス 愛のテーマ」は涙なしには聴けない。「アメイジング・グレイス」もそうだ。どうしても入院後のことを思い出してしまう。音楽そのものに集中したいのに、なかなかそれができない。本当の意味で、失ったものの悲しみから抜け出すには、まだ時間がかかるかもしれない。
付録のDVDには、「アヴェ・マリア」のプロモーション映像のほか、「新世界」と「つばさ」のライヴ映像が収録されている。
この「新世界」は2004年8月にN響と共演した時のものだが、これは、ほんとうに見とれてしまう。発売されているライヴ映像としては「アメイジング・グレイス」と並ぶものだ。やはり、この時期の本田美奈子.は違う。デビュー20周年を目前にして、往年の美空ひばりにも匹敵するような、大歌手のオーラをかもし出すようになったのである。このまま成長していけば、あと2~3年後には、どれほどの黄金時代を迎えていたか…。それを思うと、また辛い気持ちになってきてしまう。
もう一曲、「つばさ」のライヴ映像は、1996年7月28日、阿蘇のファームランドでの野外ライヴ(共演は服部克久指揮する音楽畑オーケストラ)を収録したもので、昨年のフィルム・コンサートでも紹介された映像である。このフィルム・コンサートの記事で、「本田美奈子.の実力を世に知らしめる為にも、ぜひともDVD化してほしい」と書いたが、その希望がかなえられることになった。当時まだ29歳。後年の凄みにまでは達していないものの、美しいファルセットを駆使し、すでにクラシックと呼んでもいいような格調の高い名演を成し遂げている。
ここでは、技術的なことに触れる必要はないだろう。ひたすらに純粋無垢で、一途な歌声に浸っているだけで、十分幸せなのだ。
文字通り、至福に満ちた天に響く歌が、ここにある。
存在を知る人が少ないせいか、コメントする人も少ないようですが、更新を楽しみにしているものもいることをお知らせしたくてお邪魔しました。
今後も期待しています。
以前いしがきさんのホームページに寄稿された記事を興味深く読ませて頂きました。WORDS OF MINAKO HONDA の「Part2」もひそかに楽しみにしております。
今後とも、よろしくお願いします。