375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

名曲夜話(7) バラキレフ 交響曲第1番、第2番

2007年01月27日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編


バラキレフ 交響曲(第1番、第2番)・管弦楽曲集
CD1
1. 交響曲第1番 ハ長調
2. 3つのロシアの主題による序曲
3. 交響詩「古代ロシア(ルーシ)」
4. スペインの行進曲の主題による序曲
CD2
1. 交響曲第2番 ニ短調
2. 交響詩「タマーラ」
3. 交響詩「ボヘミアにて」
4. 管弦楽的幻想曲「イスラメイ」
エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮 ソヴィエト国立交響楽団
録音:1974年[第1番]、1977年[第2番] (Melodiya-BMG Classics 74321 49608 2)
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バラキレフ 交響曲(第1番、第2番)・管弦楽曲集
CD1
1. 交響曲第1番 ハ長調
2. 交響詩「古代ロシア(ルーシ)」
CD2
1. 3つのロシアの主題による序曲
2. 交響詩「タマーラ」
3. 交響曲第2番 ニ短調
エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮 フィルハーモニア・オーケストラ
録音:1991年 (Hyperion CDD22030)
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今回は、ロシア国民学派の中心グループ「力強い仲間(いわゆるロシア5人組)」のリーダー、バラキレフの登場である。

ミリイ・アレクセイエヴィッチ・バラキレフ(1837.1.2-1910.5.29)。同じ「5人組」のリムスキー=コルサコフの項でも紹介したように、バラキレフは、才能を認めた教え子に、まず何よりも交響曲の作曲を勧めるという、破天荒な教授法で知られていた。

ところが…

バラキレフは、他人にはそのように勧めながら、彼自身は、第1交響曲の執筆を始めてから完成するまでに、なんと33年の歳月(1864-1897)を要しているのである! 

第1交響曲の完成に時間がかかった、という点では、かのブラームスが有名だ。ブラームスにとって、交響曲とは、ベートーヴェンに追いつき、追い越すものでなければならず、それゆえに多大な推敲の時間を費やしたのであるが、それとて、21年である。バラキレフの33年という年月は、第1交響曲の完成に要した最長記録として、ギネスブックに載せる価値があろう。

交響曲第1番は、さすがに、熟成に時間をかけただけあって、中身の濃い一品だ。

“雪の白樺並木”を思い起こさせるような雰囲気の中、トロイカを駆り出すように始まる第1楽章の幕明けから、濃厚なロシア情緒が立ち込める。凍てつく大地を乱舞するコサックの踊りのような、第2楽章のスケルツォを経て、第3楽章のアダージョでは、遥かなロマンにあふれた名旋律を心ゆくまで歌う。そして、熱い民族の血潮が爆発する第4楽章のフィナーレは、これぞ、ロシア国民学派の最高傑作!と言いたくなるほどの盛り上がりだ。

バラキレフは、交響曲第1番を完成した3年後、第2番に着手した。重厚な第1番に比べると、ダンサブルで流麗な旋律が際立つ。特に、第1楽章の冒頭から疾走する民族舞踊のテーマと、第2楽章でのコサック風スケルツォは、全曲中の白眉と言えよう。この第2番も、完成までに8年(1900-1908)かかっている。

2曲の交響曲で、合計41年! 
これだけ手塩にかけていけば、傑作ができないはずはない。

CDは、新旧2種類のスヴェトラーノフ盤を愛聴している。1970年代に録音されたソヴィエト国立交響楽団による演奏と、1991年録音のフィルハーモニア・オーケストラによる演奏。どちらも名演で、個人的には、甲乙つけがたい。

前者は、壮年期の演奏だけに、鋼のような金管の威力と、毅然とした力強さに特徴がある。いかにも、旧ソ連スタイルという感じだ。後者はソ連崩壊後の自由化された演奏で、晩年の円熟した味わいが光る。テンポは遅めだが、ロマンティックな情感の豊かさでは、こちらのほうが上回るのではないだろうか。

しかも、決しておとなしい演奏ではなく、第1番フィナーレ終結部での、めくるめくようなティンパニの乱打などは、さすがスヴェトラ!と喝采したくなる迫力だ。

バラキレフの知名度は、現在では、同じ5人組仲間のボロディン、リムスキー=コルサコフ、ムソルグスキーに及ばないかもしれない。しかし、この2つの交響曲を聴くと、彼は立派にリーダーにふさわしい仕事を残した、と思えてくる。3年後(2010年)に、没後100周年を迎えるが、ぜひとも真のロシア国民学派の立役者として、大いに注目されることを願ってやまないものである。



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2 コメント

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五人組のリーダー (sergei)
2007-01-27 23:50:54
私はフィルハーモニアと共演した方を持っています。
バラキレフというと"五人組"のリーダー格として名前はよく知られていますが作品はあまり馴染みがないですよね。聴いてみると描写力豊かで、さすがに歴史にその名をとどめるだけのことはあるな、と感じさせられます。
「シェエラザード」とか「展覧会の絵」みたいな通俗名曲が一つでもあればこの作曲家の認知度も違っていただろうに、という気がします。
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今後の期待は…? (ミナコヴィッチ)
2007-01-28 04:13:52
交響曲第1番は、若い頃にカラヤンが録音したこともあったようですが、それ以後はスヴェトラーノフを例外として、大物指揮者からは見放されていますね。
やはり、有名な指揮者とオーケストラが演奏してくれないと、なかなか一般的に知られる機会がないようです。
そろそろ、ゲルギエフあたりに新録音を期待したいところですが…。
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