375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

本田美奈子.POPS期の名曲集(3) 『優しい世界』

2006年12月31日 | 本田美奈子


本田美奈子.『優しい世界』 (2006年12月6日発売) CRCP40164/40165

収録曲 1. 優しい世界 2. Sweet Dreams 3. FLOWER 4. 満月の夜に迎えに来て 5. shining eyes <jazzy funk mix>  6. Sweet Dreams <sk55 re-mix>

初回生産限定版(CRCP40164)のみ、秘蔵映像を収録したDVD付き。
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早いもので、歌姫・本田美奈子が旅立ってから、1年2ヶ月になろうとしている。今では、さすがに立ち直ってきたものの、昨年の今頃は、それまでに経験しなかったような、深い喪失感から、まだ抜け出せない状態だった。

アイドル時代から、たえず気になる存在だった。同年代の歌手の中で、誰よりも好きだったことは間違いない。けれども、一方では、どこか軽く見ているところもあった。年齢も10歳ほどの開きがあったので、夢中で追いかけるには、こちらは歳を取りすぎていたかもしれない。彼女のほんとうの素晴らしさに気がついたのは、かなり後になってからのことだった

1990年以降、個人的な事情で、長らく日本を離れた時期があった。その間は、本田美奈子どころか、日本の芸能界の様子が皆目わからなくなってしまった。気がついてみると、とっくに歌謡曲の時代が終わり、「J-POP」と呼ばれる、新しい若者向けの音楽の時代に移行していたのである。

しかし、歌手・本田美奈子が最も目覚しい飛躍を遂げたのは、まさにこの時期だった。2003年5月、クラシック歌手としてのデビュー・アルバム「アヴェ・マリア」のリリースを知った時、最初、この人は別人か・・・と疑った。自分の知っている本田美奈子と比べると、まるで女神のように見えたのだ。

そういうわけで、自分にとっては、空白の1990年代を埋めてくれるようなDISCがリリースされると、とても大きな収穫になる。「本田美奈子交響曲」の失われた第2楽章を復元する試み。それは、すでに紹介した「LIFE~プレミアムベスト」(2005年)と「I LOVE YOU」(2006年)のリリースによって、ようやく始まったばかりなのである。

そして今、この時期における、さらなる幻の音源が発掘された。2006年12月6日に発売されたばかりの最新アルバム、「優しい世界」。ここに初めて収録された4つの曲は、当初1996年頃に発売が予定されていたそうだが、様々な事情でお蔵入りになっていたものだ。(ただし、「満月の夜に迎えに来て」は、MDへのダウンロードという形で配信された時期もあったらしい。また、最近ではMUSEというアイドル・グループが同曲をカバーし、CDも出ている)。

それは、今になって思うと、彼女が永遠の天使になってからも、時々会えるように残しておいてくれた、「歌の置き土産」のようにも思える。もちろん本人が意識してそうするはずはないのだが、結果的には、われわれファンの今後の楽しみが枯渇することのないように、配慮されていたのである。これ以外にも、未発表の作品が多く埋もれているのではないだろうか。

ここで、アルバム初収録の4曲について、思うところを気ままに綴ってみよう。

①「優しい世界」。歌詞通りに聴けば、今は遠く離れてしまった、恋人への想いを歌った曲。しかし今になって聴くと、どうしても、本来の意味を離れた解釈が入り込んでくる。「いつかまた会えると期待しては打ち消して・・・」。まさに、そんな気持ちで日々を過ごす自分がいる。将来、彼女と天国で会えるかどうかは、しょせん保証のない夢なのだろうけれど・・・。そんな思いの中、いつも優しく心を癒してくれる、彼女の歌声。生きてこの歌声を聴ける限りは、2人だけの「優しい世界」の住人であり続けることができるのよ、と教えてくれるかのように。

②「Sweet Dreams」。この曲も、遠く離れた恋人を想う歌、という本来の意味を超えたニュアンスを持つ。「どうかそばで輝いていて」と願う相手は、すでに、この世にある人とは思えない。「悲しみに心が迷う夜は・・・」「悲しみに心が揺れる夜は・・・」そんな夜は、やはりあなたの歌が、そばにあってほしいと思う。

③「FLOWER」。遠く去った「あなた」との、過去の日々は戻らない。ここでは、たった一人で、強く生き抜いていこうとする主人公の、熱く、健気な思いがあふれている。芸能界の荒波にもまれながら、必死に戦い抜いたアイドル時代。新たなチャンスを掴み、本格的な歌手として大きく成長したミュージカル時代。いつの時代も、彼女は熱い夢を持ち続けた「Endless Flower」だったのだ。

この曲は、サビの部分で思いきり盛り上がる絶唱が素晴らしい。将来、「本田美奈子.物語」という映画でも作られたなら、主題歌に採用したいほど、彼女の生き様にぴったり合った名曲だと思う。

④「満月の夜に迎えに来て」。本田美奈子自身の作詞・作曲。マジカルな月夜の雰囲気で思い出すのが、初期の「ハーフムーンはあわてないで」。才能の開花度で言えば、当時はまだ半月だったが、1996年の時点では、すっかり満月に成長したようだ。

ところで、満月の夜に迎えに来るのは、誰なのだろうか? 恋人? それとも月からの使者? けっこう、意味有り気なタイトルではある。もしこれが、無意識のうちに、「現代のかぐや姫物語」をイメージしたものであったとすれば、賑やかなはずの「恋人たちのカーニバル」が、どこか物悲しいものに思えてくる。夢から覚めた時、あなたは、もうここにはいないのではないかと・・・。

せめて、この夢が永遠に終わらないことを願おう。永遠の歌姫・本田美奈子とは、会おうと思えば、いつでも会えるのだ。私たちが、彼女のことを忘れない限りは。



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