375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

本田美奈子BOX(DISC 4) 「孤独なハリケーン」他

2006年12月14日 | 本田美奈子


本田美奈子BOX - disc4

収録曲 1.GOLDEN DAYS<UK盤> 2.CRAZY NIGHTS<UK盤> 3.HEART
BREAK(日本語) 4.SNEAK AWAY 5.LET'S START AGAIN 6.THAT'S THE WAY I WANT IT 7.TAKE IT OR LEAVE IT 8.PLAYBOY 9.HEART BREAK(英語) 10.PLAYTHING 11.GIRL TALK 12.YOU CAN DO IT 13.孤独なハリケーン 14.今夜はビートにのれない 15.悲しみSWING 16.今夜はビートにのれない<LAリミックスヴァージョン> 17.PASSENGER 
(18~19.「孤独なハリケーン」「悲しみSWING」オリジナル・カラオケ)
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本田美奈子BOXシリーズも、今回で4枚目のdisc紹介となる。自分は、このシリーズを連載するにあたって、自分なりに「美奈子史」を振り返ってみたいという思いがあった。単なる音楽解説ではなく、自分がどのように感じたか、という主観的な印象に重きを置いているので、どちらかといえば、徒然草的な文学に近いかもしれない。

実際のところ、専門的な音楽教育を受けてきているわけではないので、ともすれば、「感性だけが頼り」になっているような箇所もあるだろう。が、それも一つのスタイルということで、気軽に読み流して頂けたらと思う。

1987年。デビュー3年目を迎えた本田美奈子は、快調にヒットを飛ばし続けた。この年発表した5枚のシングルは、すべてオリコン・ベスト10入りを果たし、1985年9月発売の4thシングル「Temptation(誘惑)」から数えると、10曲連続ベスト10位以内を達成した。

オリジナル・アルバムに至っては、1stアルバム「M'シンドローム」が2位、2ndアルバム
LIPS」が3位、3rdアルバム「キャンセル」が2位、と続いていた。そして、1987年6月、いよいよ収録曲全曲が英語の歌詞という意欲作、4thアルバム「OVERSEA」をリリースするのである。

100曲以上の候補曲から絞り込んだといわれるだけに、このアルバムも完成度が高い。特徴としては、重厚なブリティッシュ・ロックとも呼べる前作「キャンセル」に対し、LAレコーディングということもあって、アメリカ西海岸のライトな雰囲気が際立っているという点であろう。全体的に激しい感情表現は抑えているように聴こえるので、第一印象での衝撃はやや欠けるものの、繰り返し聴いているうちに、深い味わいに魅了される。いわば、「美奈子流AOR」とでも呼びたいような、極上の一品だ。

夏の昼下り、ロッキング・チェアに揺られながら聴くには、最高だと思う。

本田美奈子BOXのdisc4には、この「OVERSEA」全曲(収録曲の4~12)と、英国のみで発売されたシングル「GOLDEN DAYS / CRAZY NIGHTS」のUK盤、「HEART BREAK」「孤独なハリケーン」「悲しみSWING」の3つのシングルAB面全曲、主演映画のテーマ曲「PASSENGER」が含まれている。

例によって、disc4マイ・ベスト5を選んでみよう。アルバム「OVERSEA」は、個別の曲よりも、トータル的雰囲気を楽しみたいと思うが、あえて1曲選ぶとすれば、今なら⑤「LET'S START AGAIN」だろうか。実にさわやかな作品で、朝の目覚めの一曲には最適だ。「失敗しても、それはなかったことにして、もう一度やりなおしましょ」という、気楽さも、いろいろと厳しいことの多い現実の中で、救われる気分になる。

①「GOLDEN DAYS」<UK盤>は、作曲者ブライアン・メイによる最新リミックスが遺作アルバム「心を込めて」に収録され、あらためて、この曲の魅力に目を開かされた。どこか、東洋的無常観を醸し出すメロディと、諦観に満ちた歌詞。ロックというよりは、むしろネオ・クラシックと呼ぶのが適切な、格調の高い名曲だ。

⑬「孤独なハリケーン」は、わが美奈子史において、絶対に欠かすことのできない、人生の応援歌。人は皆、転びながらも地平に駆けてゆく戦士である。今日まで生きてきて、人生は闘いの連続であると、つくづく思う。そんな時は、静かな気持ちでもいいから、闘志を忘れてはいけない。まさしく、「いつも心にハリケーン」なのだ。その闘いは、きっと、天に召されるまで(やがて空に吸い込まれて 眠る時まで)、続くのであろう。

⑭「今夜はビートにのれない」も、スピード感のある、迫力に満ちた傑作。タイトルとは裏腹に、最高に「ビートにのれる」名曲だと思う。「孤独なハリケーン」とのAB面の組み合わせは、美奈子史上でも最強コンビのひとつかもしれない。

そして、1987年最後のシングル、⑮「悲しみSWING」。別れた恋人への断ちがたい想いを胸に、たった一人で踊る舞踏会。20歳になった本田美奈子の大人の魅力が、シンプルなジャケット写真からも伝わってくる。今後、もしかしたら、ますます成熟した大人の歌を聴かせてくれるのだろうか・・・と思ったら、さにあらず。

翌1988年夏、彼女は想像を絶する姿で、私たちの前に戻って来るのである。