375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

本田美奈子BOX(DISC 2) 「1986年のマリリン」他

2006年12月07日 | 本田美奈子


本田美奈子BOX - disc2

収録曲 1.1986年のマリリン 2.マリオネットの憂鬱<Single Version> 3.
Sosotte 4.ハーフムーンはあわてないで 5.Sold out 6.リボンがほどけない 7.1986年のマリリン<New Version> 8.スケジュール 9.JOE 10.バスルームエンジェル 11.ドラマティックエスケープ 12.マリオネットの憂鬱<Album
Version> 13.YOKOSUKAルール 14.愛の過ぎゆくままに 15.HELP 16.
TOKYO GIRL
 
(17~20.「青い週末」「1986年のマリリン」「Sosotte」「HELP」 オリジナル・カラオケ)
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本田美奈子デビュー2年目の1986年。それは、天文ファンであれば、何年も前から待ち焦がれていた、ハレー彗星接近の年であった。

ご存知の人も多いと思うが、ハレー彗星は76年ごとに回帰する。前回の1910年には、地球の軌道とすれすれのところで交差し、一時は激突するのではないかと大騒ぎになった。「ドラえもん」にも、当時の騒ぎを題材にした話があるが、この時のハレー彗星は、尾の長さが、全天の3分の2にも達したという。

当然、1986年の接近時にも、さぞかし見事な天体ショーを見せてくれるだろうと期待されたのだが、あいにく、軌道上の位置関係が良くなかったこともあって、今ひとつ見栄えがしなかった。泰山鳴動して、ねずみ一匹というところだろうか。あとは、とにかく長生きして、次回の2062年を待つしかないだろう。

不発に終わったハレー彗星に代わって、歌謡曲の世界では、前代未聞の大爆発が巻き起こった。本田美奈子の衝撃的ブレイクである。

今では、ごくふつうの女性ファッションになっている、ヘソ出しルック。これを彼女は、1986年の時点で披露したのである。もちろん、世評は真っ二つに分かれた。「和製マドンナ」という呼び名で、もてはやす一方では、某国営放送のように、放送コードに触れるとして、紅白歌合戦に出場させない、という仕打ちをする勢力もあった。

しかし、大人たちがどう言おうとも、同世代での人気の高さは、疑いようもなかった。ブロマイド売り上げ、年間第1位。名実ともに、トップアイドルに駆け上ったのである。

本田美奈子BOXのdisc2に含まれるのは、その1986年の前半に発表し、いずれもベストテン上位の大ヒットを記録した、3枚のシングルAB面全曲(収録曲の1~4と15~16)と、2ndアルバム「LIPS」全曲(収録曲の5~14)。前年にもまして意欲的な楽曲が並び、まさに上り坂の勢いを感じさせる。

ここで、前回と同じく、disc2でのマイ・ベスト5を選んでみよう。まずは、大ブレイクの火付け役となった①「1986年のマリリン」。伝説のシネマスター、マリリン・モンローを、1980年代の夜の都会によみがえらせた傑作。一般的に最も知られた代表作ではあるが、これを素人が歌いこなすのは、むずかしい(と、実際にカラオケで歌ってみて思う)。並みのアイドルが歌っても、まずサマにならない。本家マリリンに負けないほどの輝きを持つ本田美奈子だからこそ、成功したのである。

「マリリン」には、「♪もっと自由に 恋がしたいの」というフレーズがあるが、この時期のキーワードは、「もっと自由に」だったのかもしれない。「マリリン」に続いて発売されたシングル③
Sosotte」では、陽気なラテンのリズムに乗って、カルメンのように、情熱的で自由奔放な恋を歌いまくる。「♪許されない関係もいいわ」と言うのだから、強烈だ。これでは、PTAからクレームが出るのも当然だろう。

「Sosotte」のB面、④「ハーフムーンはあわてないで」は、スケールの大きい、幻想味あふれる名曲。妖しい半月の夜、恋の魔術師・美奈子のマジックが冴える。

シングル以外の曲では、まず⑥「リボンがほどけない」。誕生日のお祝いの曲かと思いきや、実は恋人とのお別れの曲。夢幻空間を漂うようなメロディが絶妙で、現在でも、テレビドラマの挿入歌に使えそうな雰囲気がある。

ベスト5、最後の1曲は、⑪「ドラマティックエスケープ」。やがて来るロック時代を予見するような、スピード感にあふれた快作。「ガラス張りのエレベーター」で昇って行く、52階の高層ホテル。NYCで言えば、マリオット・マーキースか。ここでも舞台は夜で、さらなる自由奔放なロマンスを求め、星空の海へ旅立っていく。

既成概念からの「ドラマティックエスケープ」。それこそが、この時期の本田美奈子が模索していたものかもしれない。