mimi-fuku通信

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山下文男著『津波てんでんこ』:津波の速度と恐怖を知る。

2008-07-02 22:26:00 | 地震・津波・震災

 
 津波の速度は、
 公式 :Ⅴ=√g・h
 
で表されます。

 V=津波の速度。
 g=重力の加速度。
 h=発生位置の深さ(水深)

 しかし、
 数式は素人には理解しにくいですし、
 実際の地震速度を知るうえで必要な、
 水深を把握することは困難だと感じます。

 私が津波の速度を知りたいと思ったのは、
 ブログ内記事、
 *緊急地震速報と携帯電話(危機管理に於ける未来への期待)
 を検証をするための現実的な数字が欲しかったためです。
 本文http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/d/20080616 

 下記に紹介する、
 山下文男著:『津波てんでんこ(近代日本の津波史』
 
は津波の到達速度について非常に明快な文書で分かりやすく説明されており、
 興味のある方や現実に海岸沿いにお住まいの方には推薦できる内容となっています。

 例を揚げれば、
 *第4章:1944年の東南海地震の際の津波到達時間(p117)
 の表は想定される日本の南海上における大規模海洋地震において、
 津波の到達時間のひとつの目安が記されており、
 緊急地震速報と携帯電話の連携が上手く行けば、
 多くの方々の命を救うことができると感じます。

 津波は地震波とは違い想定される速度は、
 *深さ5000メートルで発生した場合の時速は約800km。
 *深さ1000メートルの地点の場合は255kmとの記載があります。
 ~ただし日本列島の太平洋沖の場合は列島から50~100キロも沿岸に出ると、
 4000メートルの深さに達っする地点がほとんどなので油断はできませんし、
 震源の断層の位置によっては海洋地震発生後、
 3分以内に陸上に津波が到達する可能性もあります。
 しかし3分で到達するような津波の場合は震源地が非常に近辺のため、
 揺れの大きさで尋常な事態でないことも直感的に知ることができそうです。
 逆に震度5位の揺れの地域で20~30分後に到達する津波の場合の方が、
 突然の津波の襲来にに対処が遅れる可能性が高いようです。

 津波は沿岸に近づくにつれ速度は落ちるますがその分高さを増し、
 一気に地上に押し寄せてくる特徴を持っているので、
 今後充実してくるだろう、
 
「緊急地震速報」の発令と同時に陸地に向かい一目散に逃げる必要
 
があります。
 ~この場合の「緊急地震速報」は将来的にはエリア速報が望ましく、
 緊急音声案内で内陸地震なのか海底地震なのかの違いを知らせる必要があります。
 さらにエリア内の津波到達時刻を各々に情報伝達することも、
 現代の通信技術なら可能な範囲としてエントリーする必要性を感じます。

 この著作の中でも、
 *第7章:日本海中部地震津波の項での体験者の意見
 は貴重なもので、
 釣り人の地震の揺れの印象と津波との関連は想像もつかない出来事だったようですし、
 “50㎝の高さの津波でも巻き込まれたら人間の力ではどうしようもない事実”
 も語られています。

 また、
 著名な海中写真家の
中村征夫さんが、
 *第8章:北海道南西沖地震津波
 で経験した九死に一生の瞬間は、

 「何時、避難するのか?」
 「直に、避難するのか?」
 「着替えて避難するのか?」
 「貴重品を持って避難するのか?」

 “一瞬の躊躇が命取り”
 になった事実を裏付けています。
 

 『津波てんでんこ』は、
 明快で簡易な文書のため流し読みをすると2時間足らずの著作ですが、
 多くの資料も併設されており、
 命を守る基礎知識
 
に筆者の経験と強い伝達意志を感じられる内容になっています。

 ちなみに、
 「てんでんこ」とは“てんでんバラバラに”の意味で、
 文中、
 「てんでんばらばらに、分、秒を争うように素早く、しかも急いで早く逃げなさい。
 これが、一人でも多くの人が津波から身を守り犠牲者を少なくする方法です。
 の言葉の意味が、筆者の願いであることは明らかです。
 と同時に、
 「1分1秒を争うように素早く情報を発信して、
 1人でも多くの方々に正確で俊敏な動作を促す緊急地震速報の整備事業を、
 官民が一体となって推進する体制づくりが急務だし、
 今の情報化能力をもってすればそう遠い未来の話ではない。」
 と感じます。

 機会があれば是非読んでみてください。
 特に、
 過去に大地震で津波災害に遭われた地域の方々には、
 ぜひお読みいただきたい著作です。
 下記に細かい情報も記載してありますので、
 図書館等でお探しいただくのも一案かと思います。

津波てんでんこ~近代日本の津波史
山下文男著
新日本出版社

このアイテムの詳細を見る

 
 発行 :2008年1月25日初版。
 ISBN : 978-4-406-05114-9
 定価 (本体 1,600円+税))

 
< プロフィール>

 山下文男(やましたふみお)
 1924年、岩手県三陸海岸生まれ。
 明治の三陸津波で一族9人が溺死。
 自らも少年時代に津波や東北大凶作を体験。
 津波防災思想の普及に努める。

  <目次>

 プロローグ  キラー・ウェーブ

 第1章  節句の賑わいを直撃した狂瀾怒濤
 ~明治三陸大津波(1896年6月15日)
 
 第2章  海と山からの津波攻めの相模湾岸
 ~関東大地震津波(1923年9月1日)

 第3章  被災地の息子たちは中国の最前線に
 ~昭和三陸津波(1933年3月3日)

 第4章  大戦末期、厳秘にされた被害情況
 ~東南海地震津波(1944年12月7日)
 
 第5章  敗戦後の混乱と激動の最中に
 ~南海地震津波(1946年12月21日)
 
 第6章  地球の裏側から遙々と
 ~昭和のチリ津波(1960年5月23日~24日)
 
 第7章  激浪のなかに消えた学童たち
 ~日本海中部地震津波(1983年5月26日)
 
 第8章  際立った「災害弱者」の犠牲
 ~北海道南西沖地震津波(1993年7月12日)
 
 エピローグ  自分の命は自分で守る 

 <関連記事>
 *山下文男著:『津波の恐怖』を読み“東日本大震災復興計画”を考える。
  http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/d/20110407

 


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