2012年10月18日。
2012年の社会では様々な情報の入手が可能だ。
2012年10月16日に沖縄県で起きたアメリカ兵による女性強姦事件。
この問題を強姦(ごうかん)に目を向け日常的な出来事と感じている人たちがいる。
しかし“この問題”の本当の論点は人権と差別にあることに気付く人は少ない。
2012年の社会では日本全国の地方の主張を読むことができる。
全国紙が大きく扱わない問題も地域の報道を読めば論点が見えてくる。
特に社説とは新聞社の顔であり各社の主張が強く打ち出されている。
そこで自分の記憶に残すため沖縄県の2つの新聞社の社説を転載する。
同時に、
10月18日の朝刊で示された朝日、中日(東京)、中国新聞の社説も転載。
10月19日には日本経済新聞、読売新聞の社説を転載した。
mimi-fuku読者には是非お読みいただきたい。
【補足:私の立場・考え】
私は日米同盟の継続は不可欠と考える一人の庶民である。
また今回の女性暴行事件に憤りを覚える者であると同時に、
東日本大震災の米軍:トモダチ作戦に深く感謝する者である。
*今後の日米軍事協力の維持と本土の負担分配。
沖縄県民が抱く不満や鬱積の軽減と地域負担の受け入れ。
福島県の災害廃棄物の受け入れ以上に困難な地域の負担。
そのため(米軍受入)に不可欠な地位協定(治外法権)の見直し。
日米が真のトモダチであれば解決できるはずだ。
沖縄県民の怒りが爆発する前に。
政府は本腰を入れて米国に友情の確認をすべきだ。
真のトモダチであれば沖縄県民の意に沿う回答。
怒りが行動に転嫁してからでは遅すぎる。
その事態を念頭に置きながら、
米国の変化にも希望を持ちたい。
*****
【琉球新報】
*米兵集団女性暴行/卑劣極まりない蛮行/安保を根本から見直せ。
<2012年10月18日:朝刊社説>
被害者女性の尊厳を踏みにじった米兵の野蛮な行為に強い憤りを覚える。
凶悪犯罪の再発を防げなかった日米両政府の無策と責任も県民とともに厳しく糾弾したい。
県警は16日、県内の20代女性への集団女性暴行致傷容疑で、
米海軍上等水兵(23)と同三等兵曹(23)を逮捕した。
容疑が固まれば速やかに起訴し日本の裁判で厳正に裁くべきだ。
米軍は事件のたびに綱紀粛正や兵員教育による再発防止を約束するが何が変わったというのか。
現状は基地閉鎖なくして米兵犯罪の根絶は不可能だと米軍自らが自白しているようなものだ。
女性は安心して道を歩けない。
米兵は沖縄を無法地帯と考えているのか。
県婦人連合会の平良菊会長はこんな疑問を抱きつつ、
「危険なオスプレイが縦横無尽に飛んで、
危険な米兵が地上にうようよしているのが今の沖縄か。
人権蹂躙も甚だしい」
と述べた。
同感だ。
ことし8月にも那覇市で女性への強制わいせつ致傷容疑で米海兵隊員が逮捕された。
復帰後の米軍関係の刑法犯は5747件(2011年12月末現在)に上る。
米国はこうした現状を恥じるべきだ。
在日米軍には日米安保条約に基づき「日本防衛」の役割がある。
しかし県民には苦痛をもたらす暴力組織としての存在感が大きい。
日米安保体制を容認する保守系首長も、
垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを強行配備した日米両政府に抗議し、
万が一墜落事故が起きた場合には「全基地閉鎖」要求が強まると警告する。
両政府は在沖基地が人権を脅かし地域振興を阻害している現実も直視して、
普天間飛行場閉鎖と在沖海兵隊撤退を含め米軍駐留の根本的見直しを進めるべきだ。
2004年10月21日付紙面で私達は「沖縄を取引材料にするな」との社説を掲げた。
大野功統防衛庁長官(当時)が米軍の東アジア10万人体制を見直すため、
1996年の橋本龍太郎―クリントン両首脳による日米安保共同宣言の見直しを提起し、
在日米軍再編協議を本格化させた頃だ。
社説はこう説く。
「1972年の本土復帰に際して、当時のニクソン米大統領は佐藤栄作首相が求める『核抜き本土並み返還』を受け入れる代わりに、自らの公約である日本の繊維業者の輸出削減問題で首相に譲歩を求め成功した。いわゆる『縄と糸』の取引だ。96年の日米安保共同宣言の際には、橋本首相が普天間飛行場返還合意と引き換えに、極東有事に米軍の後方支援を積極的に行えるよう『日米防衛協力のための指針(ガイドライン)』の見直しを受け入れた」
と。
それは政府が「沖縄の負担軽減」を大義名分に米軍に譲歩する状況が、
復帰時や安保共同宣言当時の日米交渉の構図と酷似していることを指摘したものだ。
米国は実を取ったが沖縄住民は「核抜き本土並み返還」も「普天間飛行場返還」も手に入れていない。
今また米国は、
“招かざるオスプレイ”を県民に押しつけながら、
植民地政策と見まがう基地の強化、固定化を推し進めている。
沖縄国際大の佐藤学教授は今回の女性暴行事件について。
「沖縄が自由に使える土地という認識が復帰から40年たっても変わっていない。
その認識の延長線上にこういう犯罪がある」
と指摘し、
仲井真知事に対し訪米要請で、
「沖縄の人権が国民としての権利がどれほど踏みにじられているのかを直接伝えるべきだ」
と注文している。
米国は沖縄の施政権こそ日本に返還したが、
復帰後も日米地位協定に基づき、
「基地の自由使用」の権利や米軍の特権的地位を温存した。
こうした対米追従の不平等協定は改めるべきだ。
さもなくば県民の人権を踏みにじる日米両政府の「構造的差別」も続くだろう。
沖縄を踏み台とする日米の理不尽な政策について、
県民を挙げて国際社会へ告発する必要がある。
*****
【沖縄タイムス】
*2米兵暴行事件/我慢の限界を超えた。
<2012年10月18日:朝刊社説>
沖縄本島中部で帰宅途中の女性が、
米海軍所属の上等水兵(23)と3等兵曹(23)から性的暴行を受け、
沖縄署と県警捜査1課が2米兵を集団強姦致傷の疑いで逮捕した。
女性に落ち度は全くない。
女性の人権を踏みにじる悪質極まりない事件である。
調べでは2米兵は女性に片言の日本語で声を掛けた。
女性が取り合わずに歩いていると後ろから近づき首を羽交い締めにし、
人けのない場所に引きずり込んで犯行に及んだという。
2米兵は米テキサス州にある海軍航空基地に所属し、
厚木基地(神奈川県)から14日に沖縄に入った。
任務を終え、
犯行当日の16日にグアムに出発することになっていた。
2米兵は民間ホテルに滞在し同日午前にチェックアウトする予定で、
沖縄を離れる日を選んで犯行に及んだのではないかとの疑念が消えない。
県警には捜査を徹底して明らかにしてもらいたい。
今年8月には本島南部の路上で米海兵隊による強制わいせつ致傷事件が起きたばかりである。
森本敏防衛相は日米合同委員会を開く意向を示している。
だが沖縄からは、
事件のたびに日米両政府が口にする「再発防止」「綱紀粛正」という言葉は、
沖縄の怒りを収めるための政治的パフォーマンスにしかみえない。
なぜ再発防止や綱紀粛正が実行されず事件が繰り返されるのか。
合同委ではそれこそを問うべきである。
戦後67年がたったが、
これほど長期間にわたって女性の人権が脅かされている地域が一体どこにあるだろうか。
県警が県議会軍特委で明らかにしたところでは、
復帰後だけに限っても米兵による強姦事件は未遂を含め昨年末までに127件に上る。
あくまで統計上の数字である。
1995年には米海兵隊ら3人による暴行事件が起き県民総決起大会が開かれた。
その後も女性を被害者とするおぞましい事件が後を絶たない。
復帰前には、
「空にB52、海に原潜、陸に毒ガス。天が下に隠れ家もなし」
と言われたが基地の過重負担は基本的に変わっていない。
「空にオスプレイ、陸に米兵犯罪」
それが復帰40年の現状だ。
相変わらず軍事が優先され、
住民の安全・安心がないがしろにされているのである。
沖縄に米軍の専用施設の74%を押し込める矛盾が噴き出しているのだ。
その場しのぎでは“もう立ちゆかない”のは目に見えているのに、
日米両政府とも負担軽減を求める沖縄の声を無視し続けている。
2000年の沖縄サミットでクリントン米大統領は、
「米軍のフットプリント(足跡)を減らしていく」
と演説した。
負担や影響の軽減である。
キャンベル国務次官補も同年、
「一つのかごにあまりに多くの卵を入れすぎた」
と沖縄の過重負担を指摘する論文を発表している。
だが負担軽減策は実行されていない。
日本政府が海兵隊の沖縄駐留を求め続けているからだ。
もはや我慢の限界を超えた。
日米両政府が目に見える負担軽減策を実行しない限り、
マグマが噴き出すのは間違いない。
*****
【中国タイムス】
*沖縄・米兵事件/綱紀粛正では済まない。
<2012年10月18日:朝刊社説>
人間の尊厳を踏みにじる卑劣な行為である。
米本国の海軍に所属する2兵士が集団強姦致傷の疑いで逮捕、送検された。
沖縄県で20代女性の首を絞め乱暴したという。
数日前から任務で訪れ離日する直前の犯行だったらしい。
女性は2人と面識はなく歩いて自宅に帰るところを路上で襲われたというのだ。
知人の力を借りて女性は被害を届けた。
勇気を振り絞ったのだろう。
沖縄県警も直ちにそれに応えた。
そのまま出国していたら追跡は困難になったかもしれない。
事件を受け政府はルース駐日大使に米軍の綱紀粛正と再発防止の徹底を求めた。
だが、
そんな型通りの抗議で済まされるはずがない。
折しも沖縄では日米両政府への強い不信感が渦巻く。
米軍普天間飛行場(宜野湾市)へ垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備を強行した問題だ。
どんなに県民が「ノー」と言っても米側は一歩も引かず日本政府は言いなりだった。
しかも配備後は日米で取り決めた安全策が守られていない。
「米軍の施設および区域内に限る」などとしたヘリモード飛行が、
配備から2週間で既に常態化しているという。
そこへ今回の事件である。
米軍のモラルの低さ教育や統制の乏しさが露呈した。
米本国の兵士がほんの数日の滞在でこのような事件を起こすこと自体が米側の差別意識を物語ってはいないだろうか。
それは日本政府も同じなのかもしれない。
米軍基地が存在する理由は、
「日本の防衛やアジア太平洋地域の平和と安全に寄与する抑止力」
というが、
一方で沖縄に基地を集中させ負担を押しつけてきた。
軍用機が日々住宅地の上空を飛び交う危険性。
それに加え米兵による犯罪が県民を脅かす。
本土復帰後の米軍関係の犯罪検挙数は5700件余りにも上るという。
沖縄の人々は地道な闘いを続けてきた。
1995年の3米兵による少女暴行事件で県民が立ち上がる。
日米地位協定でかなわなかった起訴前の身柄引き渡しを可能にした。
反基地運動のうねりはさらに高まり日米両政府を負担軽減のための話し合いの席に着かせる。
そうして普天間返還で合意した経緯がある。
米兵による犯罪への心配は岩国など米軍基地を抱える地域に共通する。
対等な関係を築くためにも政府は米国に具体的な申し入れをすべきではないか。
まずは米兵の夜間外出制限など規律強化を求めたい。
そして成果が確認できるまではオスプレイの訓練自粛を約束させるべきだ。
米軍への不信が募る一方では前に進めてはならないだろう。
また起訴前の身柄引き渡しについては地位協定の抜本的見直しが欠かせない。
現状は殺人や強姦など凶悪な犯罪が基本であくまでも米側の「好意的考慮」に基づく。
理不尽で不平等な規定は米兵の犯罪を助長させるだけではないか。
「重く受け止めている」と口では言い結局は軽くあしらう。
政府のそんな対応はもう許されない。
沖縄の痛みを日本の問題として捉え米側に毅然と主張する姿勢が求められる。
*****
【中日新聞】
*米兵女性暴行/沖縄に基地がある限り。
<2012年10月18日:朝刊社説>
あってはならない事件がまた起きた。
米海軍兵二人が二十代の女性に対する集団強姦致傷容疑で沖縄県警に逮捕、送検された。
沖縄に重い米軍基地負担を強いる限り県民の痛みはなくならない。
米兵による事件・事故の後、繰り返される「綱紀粛正」の言葉がむなしく響く。
事件の報告を受けて東京滞在を延ばした仲井真弘多沖縄県知事は斎藤勁官房副長官を首相官邸に訪ね、
「(在沖縄米軍基地は)安全保障上必要だから理解してくれと言われてこういう事件が起きると無理な話だ」
と強く抗議した。
知事に代表される県民の怒りは当然だ。
日米両政府に加え日本国民全体が重く受け止め自分の痛みとして感じる必要がある。
米軍基地は周辺地域の住民にさまざまな負担を強いる。
平穏な生活を脅かす日々の騒音や事故の危険性、米国の戦争に加担する心理的圧迫、
それに加えて今回のような米兵の事件・事故などだ。
日米安全保障条約で日本の安全と極東の平和と安全を維持するために日本に駐留する米軍が、
日本国民の生命を脅かす存在にもなり得ることは否定しがたい。
在日米軍基地の約74%は沖縄県に集中する。
米軍の世界戦略に加え本土では基地縮小を求める一方、
沖縄での過重な基地負担を放置することで平和を享受してきた我々本土側の責任でもある。
沖縄では今、
米海兵隊普天間飛行場への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備に反対する動きが強まっている。
安全性が確認されたとは言い難い軍用機を人口密集地が迫り危険な飛行場に配備することへの反発はもちろん、
日米安保体制に伴う負担を沖縄県民がより多く負う差別的政策への怒りでもある。
普天間飛行場の名護市辺野古への「県内移設」では沖縄県民の負担軽減にはならない。
日米両政府は普天間飛行場の国外・県外移設の検討を手始めに、
在沖縄米軍基地の抜本的な縮小に着手すべきだ。
普天間でのオスプレイ運用も直ちに中止すべきである。
今回は沖縄県警が米兵を基地外で逮捕したが、
日米地位協定では米側が先に身柄を拘束した場合、
起訴まで米側が拘束できる。
日本側は殺人、強姦など凶悪犯罪では身柄引き渡しを要求できるが米側は拒否できる。
治外法権的な協定は沖縄県民が不平等感を抱く一因にもなっている。
運用見直しではなく抜本的改定に踏み出さねばならない。
*****
【朝日新聞】
*米兵の犯罪/沖縄の怒りに向きあう。
<2012年10月18日:朝刊社説>
沖縄で米海軍兵2人が女性への集団強姦致傷の疑いで逮捕された。
「正気の沙汰ではない」と仲井真弘多知事が述べたのは当然だ。
容疑者2人は米国本土から出張で来ていた。
事件がおきたのは未明。
その日の午前中に沖縄を出てグアムへ行く予定だったという。
「沖縄を出てしまえばわかるまい」とでも考えたのだろうか。
沖縄では1995年に米海兵隊員3人による少女暴行事件がおき県民の怒りが燃え上がった。
基地の再編や事件をおこした米兵の扱いをめぐって日米間の交渉が行われた。
だがその後も米兵による犯罪はなくならない。
性犯罪に限っても、
この10年余りで中学生への強姦。強制猥褻、強姦致傷。
今年8月にも強制猥褻致傷の事件がおきた。
被害者が泣き寝入りし表に出ない事件もあるとみられている。
沖縄では米軍によって女性や子どもの身の安全を脅かされていると受けとめる人がふえている。
仲井真知事は「日米地位協定を改定しない限り問題は出てくる」と述べた。
今回の事件は容疑者を基地外で見つけて警察が逮捕したが、
“もし基地内に入っていれば”
米兵や軍属を手厚く守る協定によって引き渡しに時間がかかっただろう。
ほかの事件では。
地位協定があることで米兵や軍属が「軍の公務中だった」といった言い分で、
日本側が捜査できなかったことがある。
重大な事件がおきるたびに少しずつ運用で見直されているとはいえ、
沖縄をはじめ米軍基地を抱える自治体は協定そのものを変えなければ犯罪は減らないという強い思いがある。
そして沖縄には安全への心配がぬぐえぬ新型輸送機オスプレイが配備されたばかりだ。
不信が募っているときの“この卑劣な事件”である。
日本と米国の協調は大切だ。
そのことを多くの人が感じている。
だが、
今回の事件が火種となって再び沖縄で反基地の思いが爆発することは十分に考えられる。
日米両政府は真剣に対策を講じる必要がある。
沖縄で米兵による事件が多いのは国土の面積の0.6%にすぎないこの島に、
在日米軍基地の面積の約74%が集中している現実が根底にある。
沖縄の負担をどう分かつか。
沖縄の外に住む一人ひとりが考えなくてはならない。
*****
【日本経済新聞】
米兵事件を繰り返さぬ対策を
<2012年10月19日:朝刊社説>
沖縄県で米兵による性的暴行事件がまた起きた。
県民は「正気の沙汰ではない」(仲井真弘多知事)と憤っており、
日米同盟の基盤となる信頼関係が損なわれかねない。
二度と事件を起こさないためにはどうすればよいのか。
両国政府に実効ある対策を求めたい。
在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄では、
米軍人・軍属による事件・事故が後を絶たない。
海兵隊員3人が女子小学生を暴行し、
県を挙げての抗議運動に発展した1995年の事件以降、
米軍は綱紀粛正を何度も約束してきた。
しかし、
今年も8月に海兵隊員が強制わいせつ致傷容疑で逮捕された。
それに続く事件だ。
日米両政府は近く再発防止策を打ち出す方向だ。
だが研修を増やすなどの通り一遍の対策では、
県民はかけ声だけに終わるのではないかとの懸念を拭えまい。
事件を起こすのは比較的軍歴が浅い米兵が多い。
今回も米本土から出張で来た何れも23歳の水兵2人の犯行だった。
酒に酔い仕事帰りの女性を襲った。
教育のまだ行き届いていない米兵は沖縄に派遣しないように、
米軍に配慮させるだけでも事件はかなり減るはずだ。
在日米軍の存在は日本の安全保障に欠かせない。
領土を巡る周辺国との摩擦でこうした思いを深めた日本人は多いに違いない。
にもかかわらず肝心の沖縄では、
米軍普天間基地の移設を巡る民主党政権の迷走などで、
米軍への県民感情はかつてなく悪くなっている。
ルース駐日大使が事件後に、
「米政府は極めて強い懸念を持っている」
と述べたのは、
こうした状況を理解しているからだろう。
沖縄が安保の最前線に位置すること。
その守りには日米同盟という盾が必要なこと。
県民の信頼を回復するにはこうした原点に立ち返り、
日本政府が真摯に説明する以外に手はない。
同時にこうした沖縄の状況をすべての日本人が認識することも大事だ。
米軍訓練の一部を本土も引き受けるなどの対応が望まれる。
*****
【読売新聞】
沖縄米兵事件/再発防止へ実効性ある対策を
<2012年10月19日:朝刊社説>
卑劣で悪質な犯罪で日米同盟にも悪影響を及ぼしている。
米軍は実効性ある再発防止策を早急に講じるべきだ。
沖縄県中部で未明に帰宅中の成人女性が米海軍兵2人に暴行された。
沖縄県警は2人を集団強姦致傷容疑で逮捕した。
厳正な捜査を求めたい。
2人は米テキサス州の基地所属で今月上旬に来日し、
犯行当日中に離日する予定だった。
8月には那覇市で在沖縄米兵による強制猥褻事件が発生したばかりだ。
こうした不祥事が繰り返されるようでは、
日本の安全保障に欠かせない米軍の沖縄駐留が不安定になろう。
沖縄県の仲井真弘多知事が「正気の沙汰ではない」と憤るのも無理はない。
米軍による具体的な犯罪抑止策の徹底が急務である。
現在も在沖縄米兵には米軍基地外での飲酒制限や、
沖縄の文化・歴史に関する講習などが義務づけられているが、
今回のような短期滞在者は対象外だ。
森本防衛相らは日米合同委員会で米側に綱紀粛正の徹底を強く求める考えを示している。
若い米兵を対象にした中長期的な教育の拡充、外出制限など、
より包括的で効果的な対策をまとめることが重要だ。
今回の事件は、米軍の新型輸送機MV22オスプレイが沖縄に配備された直後だったため、
県民の反発が一段と高まっている。
ただ、
暴行事件への対応とオスプレイの安全確保は基本的に別問題であり、
それぞれ解決策を追求するのが筋だろう。
同時に米軍による事故の防止や騒音の軽減など、
周辺住民の負担全体を軽減する努力を日米双方が不断に続ける必要がある。
政府内には1995年の女児暴行事件時のように、
沖縄の反米軍世論が沸騰する事態になることを懸念する向きもある。
しかし当時は県警が逮捕状を取った米兵の身柄引き渡しを米側が一時拒否したのに対し、
今回は県警が容疑者の身柄を確保している点が大きく異なる。
容疑者2人は日本の司法手続きに基づき処罰される見通しだ。
仲井真知事は日米地位協定の改定を改めて主張している。
だが今回の事件捜査では起訴前の米兵引き渡しなどを制限する、
地位協定が障害とはなっていない。
日米両政府は従来、地位協定の運用の改善を重ね具体的問題を解決してきた。
それが最も現実的な選択であり同盟関係をより強靱にすることにもつながろう。