メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

レンジャー…車検。

2016-06-02 23:19:39 | 日野
今日は天気も良く平和な1日でした…

何事も無く、朝から1日かけてレンジャーの車検。

たまにはこうやって時間に追われずにゆっくり作業する事も必要です…


車両をリフトアップしてハブをバラして下廻りを点検していると…

センタードラムが…


サイドブレーキを引きずったまま走行したんでしょう。
熱がかかり過ぎた部分が酸化してます…

どんな使い方をされたのか車が教えてくれます。
車は正直ですからね…


ただ、恥ずかしい話ですが…
この状態を見ても、どんな状況か分かっていないメカニックが当工場には数人います…


そしてもっと恥ずかしいのが…
この状況を理解していながら放置する奴もいる…という事。
ブレーキという重要な部分であるにもかかわらず…


どんなに偉そうな事を言ったり、俺はこんな仕事をしてきた…とか、ウンチクを語られても…

このブレーキの状況を見ても尚、放置するような
人間は、整備士とは呼べません。

点検するのが面倒くさいんでしょうか…
そういう性格なのか…
何なんでしょうね…

つまる所、どんな仕事もやはり『人』だなぁ…とつくづく思います。

まあ愚痴はこのあたりにしておいて…笑


センタードラムも、当然ブレーキなので効かなかったら大惨事になりかねないし…
ここまで熱が入っているとシューやドラムの状態も確認しないと安心出来ないので点検します…

調整用ホールのメクラゴムも溶けかけてます…


プロペラシャフト外して…


ドラムを取り外してシューの残量や状態などを点検。





洗浄とグリスアップ、メクラゴムのみ交換で問題無さそうですね…


他にもドラックリンクとタイロッドエンドのブーツが破れており交換…







ドラックリンクは通常のボールジョイントリムーバーが使用出来ますが、タイロッドエンドは使えない事が多いですよね…


ハスコーからSSTが出てますが高額なので…
以前、自作しました…
簡単に作れます…


ナットを外してタイロッドエンドにセット。




後はハンマーで叩くだけ…



タイロッドだけじゃ無く4軸車や前2軸のリレーロッドなどのボールジョイントの取り外しにも重宝しますよ…
各サイズを製作してあります…



後は燃料フィルターの交換やらその他色々…





写真はありませんが、なんだかんだで完成です…


で、久々に定時に終了。

で、帰る途中にふと気付き急いで停車…
走行距離が…



もう少し早く気付いてれば全部7だったのに…


でも明日宝くじ買おう。










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トレーラー…パーキングブレーキ解放しない。

2016-06-01 02:53:01 | トレーラー
トレーラーによくある故障で、パーキングブレーキが解放しないという症状…

近くのお客様から、トレーラーを連結して発進しようとしてもブレーキが引きずって走れない!と
電話があり現地へ出張。

現車を確認すると3軸中、後2軸がロックしたままです…

最近のトレーラーのパーキングブレーキは法規制の関係でスプリングが内蔵されたマキシ式チャンバーを使用しています。
通常のサービスチャンバーにピギーバックと呼ばれる部分が合体した物で…このピギーバックの中にはとても強力なスプリングが内蔵されてます。

このマキシ式も大型トラックなどではフットブレーキはエアーで作動して、パーキングブレーキはスプリングで作動する…といった感じ。

トレーラーも基本的には同じなんですが、トレーラー側には通称キャブコン…と呼ばれるトレーラー単体時に使用するパーキングブレーキバルブが付いており…
メーカーによって異なりますが、多くが車体の左側面に取り付けられています…
こんなバルブ…


このバルブを押し込むとピギーバック内のエアー圧が抜けてスプリングの力でパーキングブレーキが作動します…
逆にバルブを引くとピギーバック内にエアーが供給され、その力でスプリングが戻されてパーキングブレーキは解放されます。

今回の症状はバルブを解放側にしてもパーキングブレーキが解放されず、ブレーキがロックしたまま…
当然、走行は出来ません。

この症状…よくあるんですが…
原因はプレッシャーコントロールバルブの不良。


で、この車両は3週間前に別の整備会社で車検を受けたばかりだそうで…
記録簿を見ると指定工場での継続車検なんですが…
本来ならこの症状は検査時に分かるはずなんですよね…
ちゃんと検査してれば…の話ですけど。

というのも…このプレッシャーコントロールバルブ不良による引きずりは、突然発生する故障では無いんです…
詳しい説明は後にするとして…


ちゃんと整備してちゃんと検査してれば嫌でも分かる事なんですよ…

整備で見落とす事はあっても検査時にはパーキングブレーキの制動力の測定があるから…
分かるはず…

これ以上は言うのもアホらしいですね。笑



とりあえずプレッシャーコントロールバルブを取り外して工場が近くなので持ち帰り組み替え。

外したプレッシャーコントロールバルブ。


で、原因はこのプレッシャーコントロールバルブの中に…


このようなピストンが入ってるんですが…




このピストンに取り付けられたゴムのスリーブ…


これがカチカチに硬化する事で今回のような症状がおきます。

どういう事かというと…
このピストンのスリーブの裏にはこの様な穴が開いており…


トレーラーのパーキングブレーキ作動時にはピギーバック内のエアー(青の矢印)が外部(赤の矢印)に排出されます。


逆に解放時は矢印の方向からタンクのエアー圧がかかり


先ほどの穴からエアーがスリーブを押し広げながらピギーバック内にエアーを供給する事でスプリングを解放します…

ところがそのゴムのスリーブが経年劣化でカチカチに硬化するとエアー圧がかかっても押し広げる事が出来ず、パーキングブレーキが解放されないか、もしくは解放までに時間がかかったりします。

この車両はスリーブが硬化してまるでプラスチックかと思うほど硬くなっておりました。
この硬さから言って3週間前まで問題無かったという事はありえません…
徐々に劣化してくるので。
また、車検の完成検査時にパーキングブレーキの制動力を測定しなければならないので通常通り検査してればパーキングブレーキが引きずる事はブレーキテスターの数字を見ても分かるものなんです…
先程、キチンと検査してれば分かるはず…と言ったのもそういう理由です。


正常な状態であればバルブを引くと1~3秒位で解放されます…
解放に5秒以上かかるようなら交換した方がいいですね…
今回の車両は待てど暮らせど解放されず…笑


よくある故障の為、在庫を持ってるので新品を組み付けて完成。


現場で応急的に修理する時は硬くなったスリーブを取り外して元のスリーブと同径の柔らかいゴムホースで代用する事で走行可能にもなります。
急いでいる時やプレッシャーコントロールバルブが外しにくい時はその方法で一時的に凌げます…


今回は空荷だった事もあり運転手さんが気付いてくれましたが、何十トンも荷を積んでいると、ブレーキが引きずってる事に気付かず走行して結果…車両火災っていう事があるんです…

トレーラーはエアーがある一定以下の圧力になると自動でパーキングブレーキが作動する様になってるんですが…
気をつけなきゃいけないのは今回のタイプのキャブコンはエアー圧が下がりパーキングブレーキが作動するとその後、エアーが供給されても手動で操作してやらない限り解放されないんです…

その事を知らない運転手さんが多く、そのまま走行して車両火災…という事が全国で何件かあってから各メーカーはこぞってリコールやサービスキャンペーンで対応してます。

これが手動での解放が必要なタイプ。


こちらがリコールなどの対策品でエアー圧が規定以上になると自動で解放するタイプです。



個人的に思ったのが、この手動で解放するタイプも機械的に何か不具合がある訳では無いんです…
手動式…という事を知らない運転手さんが多いだけなんですよね…
昔からのトレーラー乗りの運転手さんに言わせると、そんなもん知ってるのが当たり前だろ…って話なんです。

思うに…最近はプロ意識の高いドライバーさんが減ってきてる様に感じます。
自分の乗ってる車の事すら興味無いみたいな…

最近の自動車はハイテクになり過ぎてドライバーが育たないんじゃないでしょうか…

車だけじゃなく何でも自動にすればいいって訳でも無いと思います。

それでは人の技術や感覚が育ちませんから…














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