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アロマな日々

一条の光に誘われて歩くうちに、この世とあの世を繋ぐ魔法の世界に紛れ込んでいました。夢のワンダーランド体験を綴ります。

祇園囃子

2005年10月01日 | my favorite・・・
静かな衝撃が今も心を揺さぶっています。倉本聰ドラマスペシャル「祇園囃子」は独特の不思議な切なさに胸が締め付けられるようでもあり、じみじみとした何かが心に深く沁みいるようでもある、そんなドラマでした。喩えてみれば、値段をつけることが不可能な骨董品に出会ったような感じ…とでも表現できるかもしれません。渡哲也・舘ひろし・十朱幸代・神田正輝といった俳優陣の円熟した余裕に満ちた演技が観る者の鑑賞に十二分に耐え得るものであったことは言うまでもありませんが、私の心に強烈な印象を残したのは、藤原紀香・徳重聡・仲村トオルの3人の存在感とそれぞれの個性に応じた演技でした。仲村トオルはバーテンダーとして、ほとんど台詞もなしにそこに居るだけの役柄でしたが、(だからこそ却って、静かな主張を表現するための演技にかなりの難しさが要求されたことと思います。)こんなチョイ役にさえ、主役をはれる役者さんを配しているのですから、いかに贅沢なドラマかが分かっていただけると思います。徳重聡は石原軍団に大事に育てられているだけあって、視線をずらす時の目の動かし方一つで、複雑な心理描写を物語る造形力を身につけていました。役者も言葉では多くを語りませんし、物語自体にもナレーションがつけられているわけでもないのですが、これは確信的な演出だと思いました。このように、余分な説明は排されていますから、語られない余白や説明の省かれている部分は観ている側が想像力を膨らませて、自分で物語を滑らかにつないでいかなければなりません。渋さが目立つドラマ全体の雰囲気の中で、落ち着いた華やかさと共に、節度のきいた清潔感のある若々しさを醸し出すことに成功した点では藤原紀香が出色でした。彼女の京都弁は爽やかな色気を含んでいながらも、さっぱりと凛々しく、京女の立ち姿(立ち居振る舞い)を見事に表現してくれていました。自分の父親が誰かということすらも知らされていない境遇を生きていながらも、真っ直ぐに伸びきった竹のようなすがすがしさをたおやかに美しく演じきってくれていました。このドラマを見逃された方は、せめて、番組のホームページでその雰囲気を味わってみてください。近い将来、必ず再放送があるはずです。祇園囃子