フリちゃんの、どアップも可愛い:)
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前編
私の前では普段から堂々としていて、強気で言いたい放題なデミ嬢が硬い表情で、
「I'm freaking out.(私マジでビビってんだよね。)」って言ったので、話の内容が明るくないことを察した。
まず、ダニーが異動になったことは、私とデミ嬢にとっては全く驚くようなことではなかった。
その理由に、ダニーがブラッドを物凄く嫌っているという事実がある。
このブログで私は、何度もブラッドに腹を立てて、結構割と彼に対して悪態をついてきたが、ダニーのそれは私の比ではないぐらい。
皆さんの記憶にもまだ新しいこの記事では
すっごく腹が立っていて、ブラッドに対する理不尽な怒りをどこにぶつけていいのか分からなくて、
思わず、もし会社のフロアで襲撃が始まって襲撃犯が私とブラッドがいるオフィスに突撃してきたら
私は迷わずブラッドを指さし彼をどうぞと言ってやろうとか、そういう暗い情熱を燃やした。
と述べたが、それがもしダニーが私の立場なら、その襲撃犯の銃を奪い、『俺がこいつを殺る』と言って、
ブラッドに銃を向けて迷わず発砲するに違いない。
どうしてそこまでブラッドを嫌っているかという理由はややこしくなるのでざっくりと簡単に説明するとこうだ。
もうずっと前からダニーはブラッドから下される評価(成績)に不満だった。
↓
人事課にブラッドが不公平であり、自分の評価を見直すべきだと訴える。
↓
人事課がすぐに、ダニー、ブラッドそしてフロアの総責任者ジョン(まだジョンは現役だったころ)との話し合いを設ける。
(ジョンが巻き込まれたこの時点ですでに事態は悪化傾向)
↓
話し合いの結果、ブラッドが「僕の決定に不備は全くない」と言い張り、彼の意見が尊重され、ダニーに対する評価は変えられなかった。
上司を人事課に訴える行為は、下手すると自分にも不利になることがあるということをダニーは知るべきだったが、
この時点でダニーは、全てブラッドの考え方に問題があると思っていたのだった。だから強気だったんだと思う。
非常に運が悪かったのは、結局ブラッドには不手際はなく、ダニー一人がいちゃもんを付けたという事実だけを残したということ。
この一連の出来事は全て『個人ファイル』に記載されてしまったのだった。
そのことを私とデミ嬢に愚痴っていたぐらいなので、ダニーが他の部署のアナリストに応募するのも不思議ではなかった。
だからあの朝のミーディングでダニーの異動が伝えられても、『ああ。やっとその時が来たんだ』としか思えなかったのだった。
ここまでが私とデミ嬢がすでに知っていたこと。
そのミーティングが終わってしばらくしてから、ダニーがひそひそ声で隣のデミ嬢に、
「びっくりしたかも知れないけど、もっとびっくりしたのは俺の方。だって、追い出されるんだから。」
と、ダニーの異動の裏で、本当は何があったのかを話し始めた。
あの人事部を踏まえたミーティングから数カ月たったある日、ブラッドに会社をクビになるか他の部署に移るかのどっちかを選択するよう言われた。
ダニーはちょっと前に高級車を購入したばかりで、解雇されると非常に困るので、もちろん他の部署の仕事を探す。
ブラッドが「これどう?」と見つけてくるのは社内の肉体労働の職種ばかりだった(ダニーの職種はずっとアナリストなのに)。
やっと採用してもらえた職場の職種はアナリストだったが、ペイグレードが今より低く、ペイカットになる。
そのことをブラッドに告げると、一週間で職場を出て行って欲しいと言われる。
その話を聞きながら、心臓がバクバクして気持ち悪くなって吐くかと思ったとデミ嬢は言う。
ダニーといえば、私らがこの職場に入ってきたときからもうシニアアナリストで、とにかく頭が良く、
要領が良くて、とくに彼の作成するグラフが私は大好きで、彼のやっていたレポートを引き継ぐことが多かった私は
スタティスティックス(統計)という仕事をたくさん教えてもらった。
物静かで、態度が良くていつもプロフェッショナルだったので、ブラッドとああいうエピソードがあったことを聞いて驚きはしたけど、
自分が信じる物に対してはその信念を貫くみたいなところがあったので、多少のぶつかり合いはあってもおかしくはなかった。
それにしても、ブラッド。
やけに陰湿すぎないか。
一週間で出て行って欲しいって、普通なら仕事の引継ぎで最低でも2週間、
ダニークラスの仕事なら一カ月は今の職場に留めてておくのが普通だ。
今までの数々のHuddleでも、何事もなかったように笑顔でダニーに冗談を言い、友達みたいにダニーに接していたのに。
その笑顔の裏で、ダニーを追い出す計画を練っていた?
そうデミ嬢と話していると、デミ嬢が、「うちらもこれからは気を付けないとヤバいことになるかも。」と言う。
「私も思い切り不平不服言う時あるけどさ、特にあんたは...」
思い当たる節があって、今度は私が気持ち悪くなって吐きそうだった。
『薄い氷の上を歩いてる状態かもよ。』
想像できる様に、薄い氷の上を歩くことはかなり危険で、一瞬の歩き方のミスで氷が割れて、冷たい水の中へ落ちていく。
思えば、今まで私がブラッドに放っていたきつい言葉や悪い態度の数々は、薄い氷の上を歩くというよりも
薄い氷の上で踊りまくる行為だったかも知れない。
あの甘いマスクのせいで、ブラッドを甘く見すぎたようだった。
デミ嬢に「特にあんた」と言われて思い当たる節、というのは
まさにその朝のミーティングの数時間後にあった、ブラッドとの会議。
私は暗くなりながら、その会議での会話を思い出していた。
<つづく>