Ken Funahashi Blog

NEXT DREAM 記憶と記録

手間ひま、かけて=愛着感と安全確認

2009-01-23 16:00:51 | Weblog
80年代の前半期の今では懐かしい『未開拓地・詣でラッシュのアイス・クライミング』セキネルからシュィナ-ド、そしてロ-・システムにカジタのセミチュ-ブ・ピックと、年々と用具の進歩に後押しされて、遊べる環境やレベルが押し上げられていた時代には、不足・不備な用具をクライマ-側の工夫や、一種の手間が要求されて、それは改造や製作と言う一部の、使える環境を持たない層のクライマ-にも、ある種の楽しさを与えてくれていた。

今では、市販品に手を加えるのはアックス類のピックに、鑢を押し当てる程度しか残っていないらしい。俗に「ギンギンに研ぐ」と称される、先端部を、より有効確実に氷に刺す為の作業は、この遊びに傾倒するクライマ-には儀式にも似て、ある種の希望の達成や憧れへの道程、アプロ-チ的な行為として楽しめる。

アイゼン(クランポウ)は、センタ-ジョィントや調節システムが格段に進歩して、以前の様な面倒な作業や手間は全く必要なくなった。半面、同時進行系で改良・発展して来た専用ブ-ツのソ-ル形状への、適合や相性が、やや複雑化して全ての条件をカバ-したり、兼用的に使える製品よりも、特化して専門的に分化した用具へと進歩は進んでいて、工業製品の常として、ある種の問題が生じ出している。売れる製品しか、製造・販売しないので、ある意味で使用者側の賢さや、工夫が要求されて、意外と豊富で便利な用具に取り囲まれながら、以前と同様に自分で手を加える作業が必要になっている。これが、少数ながら楽しいと感じたり、自信で用具に、触れる時間や作業の手間に伴なう、愛着感や用具の安全基準を再考させる機会ともなる。

前爪の出具合を自分で、簡単に調節できると言う理由で針金などを巻き付けて、簡易的な調節を行うのを、いかにも我が工夫と自慢している人達には、過去の先輩達が調節機能を持たなかった、単純な形状の鋳造アイゼンにビニ-ル・テ-プ等を、巻いて先輩から、後輩へと『夢』への継承を用具を通した記憶を、知る術は無いようだ。恵まれた消費社会の中で、登山用具は特に恵まれている、機能の不足を個人が改造したり、何かを付け足して補完するには、経験が不足している人が多い。

アイゼンぐらいは、自分の使うブ-ツに確実に適合する物を購入・使用すべきだろう。数年前から、冬の風物詩・評判で混雑し出している、裏六甲・範囲の多発している事故例の多くは、そういった基礎的な用具の不備や、低山だという勝手な楽観的な思い込みや、雪山を甘く見ての他者への宣伝、勧誘から引き起こされた事例が、あまりに多い。

新聞・連載で私が紹介記事を掲載したり、各新聞での魅惑的な凍る滝・取材を数多く引き受けて来た経緯や、個人的に多くのハイカ-の安全に寄与するだろうと、設置した危険箇所でのフイックスや支点整備にも、意図とは違う問題が発生し出したようで、今期も事故が起きないように願っています。

リコ-ル交換品『ペッツル・シャルレ/サルケン』のジョィント・バ-の調整作業、切断には金属用の鋸が必要不可欠。今回は、カ-ボン硬でも使用可能な250m替刃を使用した。本来は、固定用バイス等で作業した方が、効率的で安全なのだが、ベランダで長年・愛用の彫金叩き台・丸太の上で意外と、簡単に切断できた。