なんと、日本の観光イメージ「フジヤマ、サクラ、ゲイシャガール」をたった一枚のポスターで創り出した作品の肉筆画がヤフオク出品されてます！
以下、ヤフオク当該ページのキャプチャー画像＆リンク（出品終了後はリンク切れになる可能性大です）。
〜【幻】の一品 Beautiful Japan（美の国日本）吉田初三郎・絹本肉筆画 保証品
1930（昭和5）年、日本が初めて海外へ「観光日本」をPRするために鉄道省国際観光局が吉田初三郎に依頼して製作された海外向けポスター「Beautiful Japan（美の国日本）」の絹本肉筆画。計１万枚（欧州8千枚、米国2千枚）が配布され、国内では未配布のために確認されている現存ポスターも2点ほど。その肉筆画となれば相応の価値はありそうですが、まさかの７百万円というインパクトある出品価格にビックリです。
絹本のサイズはほぼポスターの原寸。国際観光局のPR大作戦の第一弾アーティストが吉田初三郎、1921（大正10）年の「鉄道50年」に際して刊行された鉄道省監修「鉄道旅行案内」装丁デザインや挿絵、沿線鳥瞰図などを手がけたことを含めて、1927（昭和2）年の「新日本八景」などで鉄道省嘱託画家として知名度を上げた初三郎の起用は自然な流れ。
当時の初三郎は昭和天皇の皇太子時代の「欧州外遊」記録をまとめた「皇太子御外遊記」の表紙装丁も担当しています。第２弾が浮世絵師、版画家の川瀬巴水の作品。第３弾が横山大観を起用し、計３部作で観光日本のPRに成功して1940（昭和15）年に開催予定だった万国博覧会＆東京五輪の招致（双方とも日中戦争勃発等に伴い開催返上）に成功しています。
初三郎といえば鳥瞰図、それ以外の肉筆画にどの程度の価値があるのか、正直いって未知数です。初三郎は美術画壇での評価を無視して弟子との共同作業による作品製作工程や「しがない職業画家」としての作品への取り組みを自ら多く語っていたこともあり、美術画壇からは距離を置かれていました。これには博物的な価値は含まれず、そのために初三郎の肉筆画は「なんでも鑑定団」に登場しても、過去は高値になっていません。
ただ、戦前の画商による価値基準「現代画家細見番付（昭和18年版）」によれば、初三郎は「別格風景横綱」と別枠で最高評価とされており、この点が通常の「なんでも鑑定団」的美術評価だけで測られるものではない部分。以前、神奈川県が所蔵する「神奈川県鳥瞰図」絹本肉筆画は専門鑑定で5〜600万円という評価が付き（当時の新聞記事やNHKニュースで取り上げ）、それが初三郎鳥瞰図作品の肉筆画の標準的サイズであることから、博物的評価の一定の目安となっています。
研究者としては、この肉筆画がどこへ行くのかという一点が気がかりです。実をいうと出品前に所有者の方から直接お電話をいただき、画像を送付してもらって真筆であることを確認したのは私です。昨秋、日田市豆田町で自主開催した初三郎展を大分合同新聞さんが記事紹介してくれ、肉筆画等を探している旨も記事となっており、その記事を読んだ所有者から連絡をいただいた次第です。
入手経緯もある程度伺いましたが、作品の希少性や意義を考えるまでもなく、できれば購入先が国内の公的機関であればいいなと思っています。個人が購入されるのであれば、当然ながら公開いただける善意ある方のもとに収まってほしいと願います。
初三郎ご遺族や先輩研究者とも情報共有しつつ、いずれにしても成り行きは可能な範囲で見守るつもりです。
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