記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

名古屋市博物館「NIPPONパノラマ大紀行~吉田初三郎の描いた大正・昭和」展開幕!

2014年07月27日 08時28分21秒 | 福博まちの記憶

ご招待いただき、名古屋市博物館「NIPPONパノラマ大紀行~吉田初三郎の描いた大正・昭和」展の開会式&内覧会(7月25日午後)に、吉田初三郎の甥にあたる一番弟子・前田虹映の長男・稀さん、孫にあたる吉田朝太郎(二代目初三郎、養子)の長男・忠明さん、扶桑文庫の井上さん、先輩研究者の石黒三郎さんとともに出席しました。

さすがの小川文太郎コレクション、初見のレア作品も多く研究者も満足の内容。特に希少なポスター類の充実は過去最高です!九州の作品では、別府のポスター5枚がすべて完璧な保存状態で展示されているのに感動。戦前からの初三郎研究第一人者の貴重コレクション、必見の展覧会です。

図録は展示作品すべて掲載の充実ぶり、CD-R(PDF)版も会場で販売されています。

ブログに書くのはどうかと躊躇いますが、初三郎ご遺族の落胆ぶりを目の当たりにし、過去の初三郎展では無かった残念な事なので書きます。

残念だったのは、初三郎展でありながら、ご遺族が来られる事を担当学芸員さんが知っていながら、開会式で紹介すら行なわなかった主催者(名古屋市博物館、日本経済新聞社、テレビ愛知)の感覚です。偉そうに開会挨拶をした方々はご遺族に挨拶すらしませんでした(たぶん知らなかったのだと思いますが)。

担当学芸員に聞くと他のご遺族には展示会の案内も一切していないそうで、私の方から他のご遺族へ資料と図録(自腹購入したもの)と招待券の残りを送ることにしました。式の2日前に他のご遺族へ案内が行っていない事を知り、電話連絡すると出席したかったと残念がる方ばかり。

今回の対応は、担当学芸員さんも可哀想そうな気がしました。全体を見渡して配慮や指示をする総合プロデューサーの不在が問題、館の役割分担に問題あるんだと思います。展示の担当学芸員は展示構成だけでチカラを使い果たし(今回は当初予定がなかった本格的な図録も急遽編纂となり、余力が無かったのは確かです)、研究者のアドバイスを得たりご遺族関係者に配慮する余力は無かったことは、開会式当日の本人たちを観れば一目瞭然。

地元出身で半生を初三郎の片腕として画業を支えた吉田朝太郎のご長男、犬山・蘇江画室で生まれ幼少期を過ごした生き証人が来られているのに、主催者側から挨拶すら無いのは理解できない感覚です。私が担当した企画展、とくに「いのちのたび博物館」では開会式に出席いただくご遺族には交通費も主催者側で用意し、京都・千葉・熊本のお3方に参加いただきました。私が自分で主催する展覧会であれば、ご遺族に敬意を表して自腹で旅費を用意して招待するべきものです。

展覧会の広報を考えても、ご遺族公認である事、開会式へ駆けつけた事などはマスコミの格好のPR材料となるのは、過去の展覧会では当たり前。初三郎が永く本拠地とした地域で最大の展覧会なのです。私のような遠方から駆けつけた研究者も、使いようで格好のPR材料になります。実際、東北歴史博など過去の多くの企画展で取材コメントを求められましたが、今回は研究者たちも全く蚊帳の外(笑)。

「館収蔵のコレクションで開催する展覧会だから、ご遺族は今回関係ない」という主催者側の感覚が判らないでもないですが(小川文太郎さんのご遺族、肉筆画を貸し出したお寺の住職がテープカットに参加し紹介)、代表作の殆どが生まれた地域での本格的な展覧会に水を差したのは間違いないと思います。過去の展覧会ではあり得ない展開でした。

また、展示内容はもちろん素晴らしいのですが、堺市博物館や東北歴史博物館をはじめ、研究者やご遺族が展示構成に関わった過去の展覧会と比較すると「宝の持ち腐れ」感が気になりました。展示品が多すぎる事もあって、メイン展示とその他の展示の強弱が少なく、観覧者が「本当に貴重な資料をスルー」する光景が目立ちました。過去の展覧会でメインだった初三郎の功績の主要展示品は軒並み目立たずスルー(笑)。犬山・蘇江画室の紹介も図録でチカラを入れている割に、展示ではスルーしたくなる勿体なさ。

また、一所懸命に工夫されたのでしょうが、展示最終コーナーのムダな拡大複製展示は驚きを通り越して「予算のムダ使い」にしか見えませんでした。現物を展示しているのに、地面に張り込んだ中途半端な拡大鳥瞰図に目をやる方は少ない。実際、私が観察している間に見ている方は誰も居ませんでした。ここの数十万の予算で、十分にご遺族への案内や招待が可能だったはずです。

まぁ、それを差引いても展示物は初公開の貴重品が多く充実しているので、純粋に展覧会を楽しむのは良いと思います。願わくば今回だけの展覧会で終わらずに、小規模展示で良いので継続して小川文太郎コレクションの展示機会を設けてもらいたいものです。

公式サイト NIPPONパノラマ大紀行~吉田初三郎の描いた大正・昭和



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