記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

博多・旧冷泉小学校区(祇園・冷泉・店屋・上川端・中洲)の戦後史

2007年01月08日 00時07分36秒 | 博多部
正月もほぼ休みナシでひとつの仕事をしている。博多のまん中、
旧冷泉小学校区の戦後史である。冷泉地区自治連合会の40周年
に合わせて1年前から進めているもので、この1月中には記念
誌として完成させねばならず、編纂の真っ最中なのだ。

この仕事の前に同じく冷泉公民館の50周年記念誌の編纂も担当
させてもらった。新築された公民館の落成と50周年の記念を合
わせたものだったが、その際に博多の先人達の苦労と、中世か
ら脈々と継続されてきた「自治都市・博多」の博多たる所以、
一端を垣間見ることができた。

即ち役所や人に頼って町内運営を行うのではなく、地域住民が
一体となって町の将来を考え、町の抱える様々な問題について
議論・討論・活動・支援をしてきた記録であった。その一端が
公民館の運営にも現れていたのだ。

今はもう廃墟同然で閉鎖された旧公民館は、博多区でも最も古
くなった木造建築で、その建設の際には地域住民の熱意や思い
が込められていた。しかし時代が変わり小学校は博多部4校区
の統合で誕生した博多小学校となり消滅。地域住民の多くも、
バブル期の土地放出で転居し町内活動そのもののあり方も変化
しているのは他の都市や町にも同じであろう。

冷泉地区というのは、博多総鎮守・櫛田神社の周辺、旧博多駅
のあった祇園町、職人や社家が住んだ冷泉町、戦後繊維問屋街
としても栄えた店屋町、明治以来博多随一の繁華街として発展
した川端商店街を有する上川端町、そして西日本一の歓楽街に
して城下町福岡と商都博多の接点にある中洲の5ヶ町である。

また、以前は福岡玉屋、渕上百貨店(のちのユニード)、博多
大丸があった地であり、旧博多駅が昭和38年末に現在地へ移転、
西鉄市内電車が地区の周囲を廻っていて九州一の繁華街であっ
た。中洲を中心に最盛期の昭和30年代前半には30以上の映画館
があったことも特筆すべき点。全国に店舗や事業を拡大するロ
イヤルの1号店をはじめ、福岡発の全国企業の多くがこの地か
ら飛躍。西日本新聞の前身をはじめ、多くのマスコミや銀行も
この地に本店や支店を構えていた。

発電所や電話局、測候所などが明治期に立ち並んだ中洲をはじ
め、福博の産業・近代化は皆、この地から始まっていることも
特長である。

昭和41年に全国にならい町界町名改正が行われるまでは、この
地区には公称で31、通称も含めると40もの町があった。全国
に名を知られる博多祇園山笠は、この以前からの旧町名単位で
流(ながれ)と呼ばれる太閤町割以来の縦筋・横筋ごとの大き
な単位ごとに奉納行事が行われる。

町界町名改正までは背割方式(通りのお向かいさんが同じ町で
背中合わせが町境)だったものが、道路割(道路で町を区切る)
に変化したもの。つまり昨日まで親しかったお向かいさんが別
の町になり、反対側に軒のあるあまり親しくない家が明日から
同じ町です、と言われた訳で、その際の博多の町の混乱ぶりは
今でも容易に想像できる。

山笠そのものの存続も危ぶまれ、町界町名改正の実施前後に消
滅した流も多い。現在も続く土居流や西流も、町そのものの名
が消滅してしまい、存続の危機に見舞われた。参加町の再編成
を行い、不条理を住民の民力でなんとか補い、現在まで活動を
続けているのである。

今、私がまとめている自治連合会40年の活動を納める記念誌は
この町界町名改正前後を挟み、戦災で戦前の町並みが消滅して
復興が始まった昭和20年以降を扱っている。公民館や地域の家
に断片的な資料が残っており、のべ50日を超える聞き取り調査
を経て、自治都市博多の戦後史としてまとめるもので、今回は
昨年12月までに判明した分を中心にまとめ、10年後の50周年
の際までにさらに調査を進めて完全なものにするという、壮大
な編纂計画となった。

自治連合会長をはじめ、町内会長や年輩者、地域を代表する多
くの企業・商店(明太子のふくや、博多通りもんの明月堂、に
わか煎餅の高木東雲堂、櫛田神社、鶏卵素麺の松屋、カフェの
名店・ブラジレイロ、山本旅館、大正建築が登録文化財となる
鹿島本館、駅弁の寿軒、かろのうろん屋など)の協力もあって、
逸話や写真が大量に集まってきた。中でも古い写真は3千点を
超え、当初は予定になかったが記念写真集にまとめることにな
った。

いずれも自治連合会に関係する方、協力者のみに配布される本
なので、まずもって貴重な記録本になりそうだ。

まだまだ編纂や校正の真っ最中である。

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